秋利美記雄のインドシナ見聞録(2)

2014年05月19日(Mon曜日)

本格的な民間競争の時代に

 長らく言われてきたベトナム繊維公団(Vinatex)の株式公開だが、今年はいよいよ実現するのではないだろうか?

 2015年のTPPの発効に向け、繊維部門でも外国企業のベトナム投資が本格化してきている。ベトナム繊維業界もこの機をなんとしても生かしたいという気持ちには変わりない。

 そのためには、新たな投資が必要で、Vinatexとしては14~15年の原料関係の投資案件に10億㌦の資金が必要という。となると、Vinatexとしても、一刻も早く株式公開を実施し、市場からの資金調達を実現しなければならない。

 また、ベトナム政府は経済の減速傾向のなか、国営企業の改革にもかなり力を入れている。社会主義国であるベトナムでは、国営企業は赤字まみれの体質を抜け切れず、これを民営化することで解決しようというのが政府の描くシナリオである。株式化はこの民営化の入口と位置づけられている。

 今年は国営企業の株式化の大号令がかかっており、その先鋒としてベトナム航空とVinatexが名指しされている。次のベトナム共産党大会・人事が行われる15年末までには結果を出したいズン現首相としても、この2社の株式化は強力に進めるだろう。

 Vinatex自体は持株会社で、実際の生産活動をしているのは傘下の生産会社である。この傘下の会社は大方が株式化され、実質的な民営化も着々と進んでいる。

 Vinatexの直接の子会社というのは、少なくとも数千人規模か多いところだと数万人の従業員を抱える企業で、これらの企業は数百人から1000人あるいは2000人規模の工場単位をいくつか抱える格好をとっている。Vinatexはこれら子会社の筆頭株主だが、その持株比率は徐々に下がっており、ざっと見たところ傘下の有力企業でおおむね20~30%程度ではないだろうか。

 裏を返せば、70~80%はすでに民間資本が握っているということである。会社幹部個人が大株主となっているケースがほとんどで、個人筆頭株主が国(Vinatex)の代表権も持っているケースもあり、事実上、個人所有の企業になっている場合が大半である。大会社で、地方に分散して工場を持っている場合などは、会社の幹部らが各個人に分割して、独立した私企業として再編したケースもある。

 ベトナム繊維業界は実質的に民営化が進んでおり、それもあって、Vinatexは株式化されるだけでなく、国の所有率51%の維持についても、さしてこだわっていないらしい。ベトナム繊維業界はいよいよ、本格的に民間の競争の時代に入ると考えてよさそうである。

(毎月第3月曜日に掲載予定)