染駆者たちの挑戦「1」/朝倉染布

2015年03月23日(月曜日)

「ナッセンジャー」シリーズで市場を拓く

ナイロン染色に挑戦 多分野での可能性期待

 インクジェットテキスタイルプリンターを導入する産地企業が増えている。伝統に裏打ちされた産地の技術を核に、表現力に優れ多品種・小ロットに対応し、生産効率を高められるプリンターで自社製品の開発や市場開拓に挑戦する意欲的な経営者たちだ。コニカミノルタ(東京都千代田区)の「ナッセンジャー」シリーズを活用し新境地に臨む“染駆者”を紹介する。

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 1892年創業の、朝倉染布(群馬県桐生市)は、120年を超える長い歴史の中で一貫して染色加工技術に取り組んでいる。遊泳・競泳用水着やスポーツウエアなどを手掛けており、生機の精練加工から出荷作業まで一貫型のモノ作りを強みとする。各種加工技術も得意とし、吸水速乾や撥水をはじめ、盗撮防止の赤外線吸収、細菌の増殖を抑える制菌など様々な技術を駆使して付加価値提案を図っている。

 同社がコニカミノルタのインクジェットプリンターを導入したのは2000年。主軸事業の一つである遊泳用水着の分野で他社との差別化を狙い、初期型のインクジェットプリンターを導入した。その後もポリエステルの染色を目的に分散染料インクの「ナッセンジャーV」を5台採用し、強みの生地加工と多彩なプリント表現で水着シェアを広げていった。

 当時は生産量の3割以上を占めるほど遊泳用の水着は好調で、ピーク時で月産2万㍍ほど受注していたという。しかし、増加傾向にあった受注も10年以降は減少の一途をたどる。海外生産の廉価製品の台頭や美白、UVカットといった風潮が若者の海やプール離れを招き、消費量の鈍化につながったことが原因とされる。

 遊泳用水着の受注量はその後、半分にまで落ち込んでしまった。「このままでは、インクジェットを使ったビジネスは継続できない」(朝倉剛太郎社長)と感じ、別の可能性を探るため14年8月「ナッセンジャーPRO120」の導入を決めた。今回はナイロンの染色を目的として、酸性染料インクのプリンターを1台導入した。

 朝倉社長は「ナイロン素材は風合いや伸縮性に優れるだけでなく、公定水分率も合繊のなかで高く、優れた吸水速乾性でポリエステルに比べてにおいの発生を抑える特性も備える。今後量産化を考えてもポリエステルよりもナイロンの方が参入障壁は高く、潜在需要が期待できる」と語り、ナイロン素材を現状打破への糸口と位置づける。加えて、同年5月に中小企業庁による「ものづくり補助金」の対象事業に採択されたことも導入の一助となった。

 ナッセンジャーPRO120の実稼働は秋ごろからだったため、現在は主に試作品生産として使っている段階だ。とはいえ「3割ぐらい早くなった」とプリント速度の向上や「これまでより濃い色が出て、色域も広がった」と多彩な表現にも満足する。また、堅ろう度に関しても「無地染めと比べても遜色ない」と言う。7~8年前から注力するスポーツウエア分野のインナー商品の一部に同機を活用したところ、客先の反応も良く、前向きな商談が進むなど今後の活躍に期待が膨らむ。

 06年から自主販売する超撥水ふろしき「ながれ」にもインクジェットを使った商品が多く、現在ではインクジェットプリンター使用の4分1をふろしきなど自社企画の生地や製品が占める。強力な撥水機能により、バケツのように水を運ぶことができるふろしきをはじめ自社製品は好調で、とくにふろしきの売り上げは百貨店や通販などを中心に2けた%増で推移している。

 今後は遊泳・競泳用水着やインナーウエアの受注だけでなく、潜在顧客が期待できるスポーツインナーや婦人カジュアル分野を深耕していく。それに伴いナイロン需要の増加も期待され、ナッセンジャーPRO120の導入は今後の展開を考えても「可能性を広げる設備投資だった」(朝倉社長)と意欲を見せる。