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制服を見つめ直す/モデルチェンジは201校/大阪が東京上回る

2016年05月30日(月曜日) 午後12時25分

 日本で学生服の生産が始まり、もうすぐ100年がたとうとしている。根付いてきた制服文化に、少子化による市場縮小や、求められるニーズの変化によって、これまでとは違う風が吹きつつある。これからの制服文化はどうなっていくのだろうか。制服の意義が改めて問われる時代に入ってきた。

 ニッケの調査によると、今入学商戦での学生服モデルチェンジ(MC)校数は、前年より34校増え、201校で3年ぶりに増加した。MC校の内訳を見ると、高校が国公立72校、私立51校の計123校、中学が国公立59校、私立19校の計78校だった。

 都道府県別で見ると、東京がここ数年中高合わせたMC校の一番多い状況にあったが、2012年以来久しぶりに大阪が東京を上回った。とくに中学校でのMC校数が21校に上り、高校の9校と合わせて30校(前年25校)に上った。次に東京が多く、中学校16校、高校12校の計28校(同28校)、京都が中学校4校、高校8校の計12校(同8校)と続いた。

 地域別では首都圏が中高合わせて60校(同56校)、近畿が55校(同40校)、東北が17校(同14校)、東海が14校(同14校)、九州が13校(同19校)、信越・山梨が12校(同8校)、中国が11校(同7校)、四国が10校(同3校)、北海道が9校(同6校)と、東海、九州以外の地域は増えた。

 今回、MC校が増加した背景には、高校は学校の再編や共学化、中高一貫化、中学校も統廃合や小中一貫化などが挙げられる。また、制服の値上げが進んだことで、これを機会に制服を見直す学校が増えたものと見られる。ただ、来年以降も生徒数、学校数とも減る傾向にあり、MC校の推移そのものも減少に転じる可能性がある。

〈これまでに無い取り組みで/新たな市場、掘り起こす〉

 学生服アパレルの昨年の入学商戦は、14年の消費増税による駆け込み需要で、昨年大きく反動が出たことや、MC校も少なかったことで全体的に苦戦したが、今入学商戦は全体的にMC校が増えたことで、増収基調にある企業が多い。ただ、市場そのものは決して良いというわけではなく、学校数や生徒数が年々減っていくなか、とくに大手アパレルではこれまでとは違った戦略を打ち出し、新たな市場を掘り起こそうとする動きが目立ってきた。

 その一つがユーザーである生徒に対し、もっと直接的に訴えていこうという動きだ。昨年6月から製販分離の新体制となり、販売を担う明石スクールユニフォームカンパニー(明石SUC、岡山県倉敷市)は、若手社員を中心に、新たな商品企画を強化。その一環として、AKB48グループの衣装制作など手掛けるオサレカンパニー(東京都千代田区)と共同企画の制服「O.C.S.D.(オサレカンパニー・スクール・デザイン)」を打ち出した。来入学商戦ですでに私学を中心に4校で採用が決まり好評だ。

 同社をPRする新たなキャラクターも設定(17面参照)。「若い世代や消費者へ制服がより身近な存在としてアピールを強める」(河合秀文社長)のが狙いで、“クールジャパン”として世界へも日本の制服文化の発信を検討する。

 菅公学生服(岡山市)は昨年、アイドルグループ「ももいろクローバーZ」「乃木坂46」の衣装デザイン・スタイリング担当の米村弘光氏との共同プロジェクト「世界にひとつのみんなの制服 スタイリング・バイ・ヨネムラヒロミツ」を発表した。米村氏は制服を衣装とした実績で知られ、「『ステージで輝くこと』を応援する」というコンセプトで両者の思いが一致。採用校も決まりつつあるという。

 今年4月には大手SPAのストライプインターナショナルとパートナーシップ契約を結び、女子学生服の学校別注として「カンコー アース ミュージック&エコロジー」の販売を本格化、3年間で15校の採用、2億円の売り上げを計画する。「今の時代の感性を持った学校制服を提案する」(尾﨑茂社長)と新たな試みで市場開拓を進める。

 新ブランドの投入で、市場深耕の動きも活発化する。瀧本(大阪府東大阪市)は英国のファッションブランド「カンゴール」と、大手スポーツブランド「ミズノ」の学生服の販売を本格化している。

 カンゴールは制服よりもかばんといった関連商品から採用を決定する動きがあり「採用に向けての提案を強める」(高橋周作社長)。ミズノは「スポーツが強い学校からの反応が多い」ことから、すでに学校別注として今入学商戦で数校に採用が決まった。来入学商戦に向けて積極的に学校へアプローチする。

 今年創業140周年を迎えたトンボ(岡山市)は、昨年から「トンボ140thアニバーサリーマーチャンダイジング」プロジェクトを開始し、英国ロキャロン社のタータンチェック企画「ロキャロン10」の発表を皮切りに、高校生向けの自由通学服ブランド「&be(アンビー)」、人気制服ブランド「イーストボーイ」と相次いで新ブランドの投入を発表した。

 米国東海岸発祥のトラッドファッションを基調にしたイーストボーイは、これまで一般の店頭市場でカジュアル制服をけん引してきたイメージを引き継ぎ、学校別注向けに男女の制服として展開。今年もプロジェクトを継続し、「集大成の年と位置付ける」(近藤知之社長)とともに、「まだ詳細を明かせないが、様々な取り組みを企画している」と、ブランディングを強める。

〈先見据えた設備投資続く/別注増加で対応力を強化〉

 生産面では学校別注対応や多品種小ロットの増加、入学式前に納入しなければいけない特殊な事情で、キャパシティー不足も表面化しつつあり、積極的な設備投資が続く。

 菅公学生服は約7億円を投資し、学生スラックスを生産する高城工場(宮崎県都城市)を近隣へ移転増設、新工場を設立する。今年4月に着工し、完成は11月を予定、12月に操業を始める。生産量はスラックスを中心に初年度年間12万8000点で、来年度以降は14万点に増やす予定。第二期計画として裁断センターの建設も今年8月以降計画する。

 高城工場は、都城工場を基幹工場とした4工場から成る「都城工場グループ」に属するが、計画が進めば新高城工場が都城工場に次ぐ工場として役割を担い、裁断については南九州全体の裁断業務を一手に担う計画を構想。「次なる10年、20年に向けた拠点」(尾﨑社長)として南九州にある工場のなかでも中心的な存在にしていく。

 明石SUCは、約6億円を投資し、詰襟服を中心に生産するアクシーズソーイング(沖縄県糸満市)を拡張して今年7月までに第2工場を建設する。沖縄の営業拠点も集約・併設し、自動裁断機(CAM)の導入も予定する。

 別注増加で多品種小ロット生産が増えるなか、ジャケットやスラックスなど「様々なアイテムを生産できる体制にする」(河合社長)のが狙い。生産量が拡大してくれば現在75人の従業員から増員も図る。

 学生服アパレルのOEMを手掛ける山下産業(岡山市)は、ベトナムのハノイ周辺で協力工場を確保し、スクール向けシャツ、ブラウスを増産する。6月から稼働し、年内には生産を軌道に乗せる。同工場では日本語教育も進め、「研修生として来日したときには即戦力として活躍できるようにしたい」(山下和也社長)と言う。国内工場も生産ラインを見直し、スクール用スカート生産の専門工場だったソーイング三日月(兵庫県佐用町)を、裁断とプリーツ加工専用の工場にするなど、各工場の生産効率化につなげる。

〈「制服が高い」という声/業界全体で向き合う〉

 テレビや一般紙の報道では最近、「制服が高い」という報道が目立ってきた。高いがゆえに、入学式に着ていくことができず、参加できないといったセンセーショナルな報道もあって、学生服業界への風当たりも強まっている。昨年から値上げを進めてきたこともあるが、制服が高いという声が改めて聞かれるなか、学生服製造大手のトップは、そういった報道をどう見ているか。

 菅公学生服の尾﨑社長は、「確かに制服そのものもが高いと言うのは事実で、我々は真摯(しんし)に受け止める必要がある」と話す。ただ、制服購入の際、カード決済ができないなど旧態以前の商慣習が根強く残っているところもあり、「制服全体のイメージを変えていくためにも、サービス面を含め、業界全体で向き合っていかなければいけない」と課題を指摘する。

 瀧本の高橋社長も「真摯に受け止め、我々としてどういったことができるのかしっかり考えていかなくてはいけない」と述べる。「衣料品はこれまで海外に生産が移転し、値段が下がり続けてきただけに、ほかに比べても値上げに対する抵抗感が大きいのかもしれない」と理由を探る。内需は好転しているわけでなく、いかに無駄を省くかが問われる時代にあって「価格に見合う価値のあるモノ作りを追求していくほかない」と強調する。

 トンボの近藤社長は、「日本の制服は3年間着用することを想定しているし、冠婚葬祭でも着用できる。また、生徒全員が同じ制服を着用することからいじめの防止にもつながる」といった制服文化の良さを説明。価格が高いという声を無視せず、「しっかり顧客の声を聞きながら、ニーズに沿った商品の開発、供給を進めていかなければいけない」と述べた。

 一連の報道について「感情的にならず、制服の長所と短所、世間の状況を列記してみることにしている」と話すのは明石SUCの河合社長。「以前は短所のみをあげつらうだけの批判的な報道もあったが、最近は長所も指摘する声を掲載している記事も見受けられる」と冷静に分析する。

 ただ、いつの時代も「制服の価格が高いと言う人は一定数いる」が、「我々はその価値に見合う制服を供給していると思っている」と話す。実際、販売店では上下3万円以上超える高額商品とそれ以下の低額商品では「8対2の割合で高額品の方が売れている」と言う。もちろん「高いと言う人の声を全く無視するわけではなく、様々な意見やニーズをくみ取りながら、価値のある商品を供給し続けたい」と強調する。

 業界自体の発信不足も否めない。一般の衣料品の輸入浸透率が約96%になっているなかで、制服は4月の入学式に必ず納入するという特殊事情から、8割以上が国内生産であることはあまり知られていない。最近では学校への別注対応の増加で多品種小ロット化するなか、当然生産コストも高くなる。これからはエンドユーザーに対し、制服文化の良さとともに、学生服業界が抱える実情についても、もっとアピールしていく必要がありそうだ。

〈欧州は制服がトレンド?〉

 学校制服ではないが、欧州では企業で制服が見直されつつあり、“コーポレートウエア”という新たなトレンドが生まれつつある。「学校の制服と同じで会社で制服を採用し、社員を差別化しないような動きもある」と述べるのは、ドイツの老舗モード服メーカー、グライフのユルゲン・イュツィルビャガー統括。銀行や自動車ディーラーなどの業種で、欧米では少なかった制服の着用が、最近は「顧客に良い印象や安心感を与える意味で増えてきた」と言う。今は日本よりもむしろ、海外の方が制服の良さに注目しつつあるようだ。