メーカー別 繊維ニュース

宇仁繊維の強みはメーカー機能にあり!!/17期連続増収を支える工場背景/「良いものを安く」が基本/社長 宇仁 龍一 氏

2016年06月02日(Thu曜日) 午前11時46分

 当社は販売機能を持ったメーカーとして、これまでも、これからも生きていきます。良いものを国内でコストを抑えて作るには、モノ作りの仕組みを熟知していないと無理です。それが、当社が設備投資に力を入れてきた最大の理由です。

 お客さまからの小口、短納期の要求に応えるためにもメーカー機能は必要です。単品量産体制で設備を効率よく動かし、それを備蓄し、即納する。あるいは、ベース生地に様々な後加工を施して表情を変えて出荷する。これが当社の強みであり、直接的に設備を保有するからこそ可能になる機能です。

 ただ、今後は良いものを安く作るだけでは生き残れないと思います。個性のある特殊なものをいかに開発し、提案できるか。例えばレースにプリントを加えたもの、ジャカードにプリントを加えたものなどです。後加工による表情変化がポイントになってくると思います。今はプリーツ加工にも興味があり、この部分でも工場との提携を検討しているところです。

 以前から当社が購入した織機を置く石川県羽咋市の織布工場、泰生に加えて昨年は、以前から資本関係のある石川県白山市の染工場、トーカイケミカル、同じ白山市の織布工場である西村織物、兵庫県西脇市の藤井福織布に、当社が購入した設備を敷設しました。今後もコストダウンを図りながら、各工場にもしっかり利益を出してもらえるよう関係を強化していきたいと考えています。

 メーカーとしての設備投資は一段落した格好です。今後は「いかに売っていくか」に再び力を入れていきます。輸出拡大はもちろん、国内向けでは大手アパレルやSPAとの直接取引を拡大していきます。バイヤーやデザイナーとは売り買いの関係だけでなく、工場に一緒に行って、互いにモノ作りのヒントを得るような取り組みも進めています。

 人間は服を着る生き物です。服を作るには生地がいる。当社はこの部分

にこれからも微力ながら貢献していきたい。国産に価値を見いだしてくれるアパレルやSPAと一緒になってモノ作りにまい進し、日本の繊維・ファッション業界を少しでも元気に出来るのなら、こんなにうれしいことはないですね。

〈丸増とシナジー発揮へ/常務 宇仁 麻美子 氏〉

 当社では、企画開発だけでなく、自分たちが着たいものを、工場と連携して自分たちで作るということを重視しています。それがメーカー機能を持つ意義だと思います。

 日本では今、モノが作りにくくなってきています。市場の“超二極化”もあって、安いものは海外でという流れが一段と強まるでしょう。高いものは国内で作るケースも多いですが、それは大きな数量ではありません。自分の国で自分たちの服(生地)を作るという機能は今後もゼロにはならないと思いますし、ゼロにしてはいけないと考えています。

 若い社員が多いのが当社の特徴です。「売り場と作り場の両方を知る」ことが大事だと思うのですが、この点でも工場機能を持つ意義は大きいですね。モノ作りの現場からそれぞれが何かを感じ取り、自分の仕事に生かしていく。機械や工程の詳細をすぐに理解するのは困難ですが、まずは産地や工場といった現場の空気感に触れることが大事です。百聞は一見にしかず。実際、担当する業務にもよるのですが、多くの社員が頻繁に産地に足を運んでいます。またその際は出来るだけお客さまと一緒に行くようにしています。工場で働く人たちの顔を知るだけでも、モノ作りの意識は変わるものです。

 わたしは2015年1月に完全子会社化した丸増(京都市)の社長を同年9月から務めています。宇仁繊維はどちらかと言えばこれまでは販売力のある会社。しかし丸増はこだわりのモノ作りが得意です。それは“京都筋”という服地の歴史のなかで育まれてきたもので、市場からもそのように認知されていると感じます。ただ一方で販売力に課題があると認識しています。

 宇仁繊維の長所である販売力と素材背景、丸増の長所であるこだわりのモノ作りの力や意匠力といった要素を融合できれば、面白いことになるのではないでしょうか。バイオーダーを得意としてきた会社ですので、顧客の懐に入ったモノ作りが出来ることも、丸増の強みの一つです。

 実質初年度となる今期(16年8月期)は黒字化を果たせそうです。来期はもっと飛躍しなくてはいけませんし、宇仁繊維、丸増の両社が相乗効果を発揮していけるようわたし自身ももっと努力していくつもりです。

〈宇仁繊維の成長を下支え/泰生〉

 宇仁繊維が「北陸工場」と位置づける石川県の合繊織布工場、泰生は3月24日、本社工場を中能登町から羽咋市に移転し、落成式を開いた。式典には約60人が参加、宇仁麻美子常務もあいさつし、「当社の成長を支えてくれたのは間違いなく泰生さん」と感謝の意を示すとともに、「今後も両社が連携して国産を守っていきたい」と抱負を述べた。

 移転先は旧能登織物の工場跡地。伊藤憲司社長は式典で、「バイパスのインターチェンジや特急の止まる鉄道の駅からも近い場所に移転できた」と喜びを述べるとともに、コスト競争力と技術力を兼ね備えた工場として「社員一丸となって発展していきたい」と決意を語った。

 旧本社工場で保有していたドビー搭載のウオータージェット織機55台はこの時点ですべて移設を完了。現在は新たに22台の織機を敷設中で、その後も計87台までの増設計画も持つ。同時に、これまでは外注だった撚糸機やドローイング機も新規導入した。

 現有織機77台のうち5台は宇仁繊維が購入し、泰生に敷設したもので、100%宇仁繊維向け。残る織機の大半でも宇仁繊維向けで、両社の連携の深さがうかがえる。メーカー機能を強める宇仁繊維が直接的に設備を購入して提携工場に敷設したのは泰生が初めてであり、ここでの成功がその後の宇仁繊維の設備投資意欲を高める契機になった。宇仁龍一社長は「今後も連携を強め、ともにメードイン・ジャパンの価値を発信していきたい」と話している。

〈連携強めメンズ拡大へ/藤井福織布〉

 宇仁繊維が「西脇工場」と位置づける藤井福織布(兵庫県西脇市)は創業70年を超える歴史ある綿織物工場。現有設備は津田駒工業製エアジェット織機4台と津田駒工業製レピア織機3台、イテマウィービング製レピア織機2台で、すべてストーブリ製のジャカードを搭載する。エアジェット織機4台のうち2台とイテマウィービング製レピア織機2台は昨年9月から稼働する新型織機で、その購入費用を宇仁繊維が受け持った。

 同社はピーク時には36台のシャトル織機と6台のレピア織機を保有していたが、生産の海外シフトが進み産元からの受注が減るに従い、設備を縮小してきた。現在も自販は無く、産元の賃織り形態だ。

 3代目を務める藤井琢也社長は宇仁繊維との連携について、「課題も多いがおおむね順調。先方の要望に出来るだけ耳を傾けながら織りのプロとしてこちらからも提案し、共に良いものを作っていきたい」と抱負を述べる。

 宇仁繊維では合繊織物が商品のほとんどを占める。綿先染め織物工場に設備を投資した背景には、メンズ向け拡大という大方針がある。昨年秋と今年春に宇仁繊維が開いた個展などで綿織物が目立つようになったのは、藤井福織布との連携があったためだ。現時点では綿織物の販売先はレディース向けが多いが、大方針であるメンズ向け拡大に向け、連携して企画開発を充実していく。また現在は後染めが中心だが、今後は産地の特色である先染め織物の開発にも注力していく。

〈複合素材への対応力強化/トーカイケミカル〉

 北陸産地のトーカイケミカル(石川県白山市)はプリント下地からの無地染めが90%を占める創業32期目の中堅染工場。染め生地の出荷数量の80%以上を宇仁繊維が占めており、保有株式の約20%も宇仁繊維という密接な関係がある。さらに昨年には染色機などの設備を宇仁繊維が購入し、同社への敷設を終えた。

 現在の設備は液流染色機10台、乾燥機1台、テンター1台、スカッチャー1台、開反機3台、検反機5台。このうち液流染色機2台と開反機1台は昨年秋に増設したもので、液流染色機のうち1台を宇仁繊維が購入した。同じタイミングで乾燥機1台とテンター1台を従来比約2倍の能力のものに入れ替えたが、この購入費用も宇仁繊維が負担した。

 赤澤三千夫社長によると、同社と宇仁繊維との取引は17年前に宇仁繊維が創業したときから始まった。赤澤社長が小松精練に勤めていたころに、当時桑村繊維に勤めていた宇仁龍一社長と親交があったことが取引につながったという。

 同社の強みは4メートルからの染めが可能という小ロット対応と短納期。これまではポリエステル100%が主体だったが、今後は宇仁繊維の品種拡大にも連動して、綿混やレーヨン混など複合素材の技術力、対応力を引き上げていく。また全体の加工能力も、現在の月産35万メートルから40万メートルに拡大させたいとの意向で、そのために「作業密度を上げて」効率化を図っていく。

〈薄地織物の開発を追求/西村織物〉

 西村織物(石川県白山市)の西村重信社長によると、同社は30年前に賃織りからの脱却を図り、自販事業にかじを切った。一時は賃織りがゼロになったこともあり、今でも事業の8~9割が自販という。

 自販事業を確立するには独自開発が不可欠の要素だが、同社は細番手糸使いを追求、20年前に開発した16・6デシテックスの先染めオーガンジーは当時世界一薄い織物で、かなりの数量を売ったという。その後は「緯スパン」をテーマに経糸にポリエステル長繊維を、緯糸に同短繊維や綿、麻などを配した織物を開発し、海外ブランドなどへの供給を続けてきた。この開発力に注目したのが宇仁繊維だ。

 10年ほど前から取引が始まり、今では5割強が宇仁繊維向け。保有設備は津田駒工業製と石川製作所製のレピア織機24台、豊田自動織機製のウオータージェット織機12台、津田駒工業製のエアジェット織機3台で、すべてがドビー搭載。石川製作所製のレピア織機4台は宇仁繊維が購入して昨年春に同社スペースに敷設したものだ。細番手使いを軸にこの4台を使い分けながら様々な規格の生地を織っており、宇仁繊維の差別化開発を下支えしている。

 西村社長によると宇仁繊維が入れた織機4台はフル稼働中。「宇仁繊維さんへの供給を続けながら、一方で独自開発の力を磨くことが両社の連携にも生きるはず」として、糸加工の研究など独自性を今後も追求していく。