メーカー別 繊維ニュース

商社のテキスタイル戦略

2016年07月28日(Thu曜日) 午後12時22分

〈差別化推進で反転へ/縫製品との連動もテーマ/旭化成アドバンス〉

 北陸産地との関係が深い旭化成アドバンスの羽田学取締役副社長執行役員繊維本部長は今後の産地との取り組みについて、①原料・原糸からの差別化②糸加工、織り・編み、後加工による差別化――を改めて強化する考えを示す。

 産地への発注量は今年に入ってから減っている。昨年まで伸ばしてきたアウターとスポーツの落ち込みが顕著で、この点は現在の産地景況とも連動する。

 アウターはキュプラ繊維「ベンベルグ」というオンリーワンの差別化商材が拡販のけん引役になっていたが、16秋冬店頭不況の影響は避け難かった。

 景況悪化を受けて今後は「シェアを上げていくしかない」と中長期で反転を期す構え。ベンベルグなどで複合化や差別化加工開発に力を注ぎ、難局を乗り切る。

 産地スペースはここに来て一部で空きも見られるようになってきたが、規模の縮小に歯止めはかかっていない。コンバーターとして「モノが作れなくなるという危機感はある」として、将来的には設備への直接投資もあり得るとする。

 また、旭陽産業(旭化成インターテキスタイルズ)と旭化成商事が統合したことで川下化も推進する。北陸産地を軸とした差別化テキスタイルを縫製品事業に連動させていくが、その際はまずスポーツ分野を優先して取り組む。

〈産地と連携し価値高める/“提案型OEM”強化/ヤギ〉

 ヤギは和歌山産地や愛知県尾州産地を中心に付加価値の高いニット素材を開発している。営業第三部門第二事業部の外薗勝事業部長は「和歌山の産地企業では30~40代の若い後継者が希少価値の高い機械を入れることで新たな付加価値を生み出している」と話す。

 同社は、こうした取り組みを後押ししつつ高度な技を生かした“提案型OEM”を強めている。これは単なる相手先ブランドによる生産請負ではなく取引先に同社が持つ多彩な差別化原料から作った糸やテキスタイルを紹介した上で、どれを採用するか交渉をしながら生産を受注する。

 同社の差別化原料にはペルー産高級綿やニュージーランドウール、独自の有機原綿「アシャオーガニック」、エジプト・ギザ産の超長綿などがある。そうした高付加価値な原料から差別化糸を紡績し、産地の高い技術力でテキスタイルにし、さらにテキスタイル段階で特殊な加工を施すなど差別化のバリエーションは幅広い。

 テキスタイル販売でも産地と連携した高付加価値化が進む。15年前に同社で始まった丸編み生地のカラーリスク販売「テキスタイル・プロジェクト」(通称テキプロ)は約500品番を常時そろえ、シーズンごとにテキスタイルの更新を続ける。生機は和歌山、尾州産地がメインで「98%が国内産」(外薗勝事業部長)で、1㍍からの注文に応える。

 今年4月に織物に強みを持つ繊維商社イチメンを子会社にした。今後はイチメンを通じ遠州産地、播州産地など織物産地との取り組みも始める。

〈北陸産地との連携強固に/海外で需要拡大見込み/蝶理〉

 蝶理は北陸テキスタイル産地との取り組みを強める。

 背景には海外での産地素材の需要拡大がある。吉田裕志執行役員繊維素材副本部長兼北陸支店長は「北陸ならではのテキスタイルの感性に欧米から高い評価を得ている」と話し、「将来的には欧米アパレルへのOEM(相手先ブランドによる生産)も視野に入れている」と計画を語る。

 現在の北陸産地取引額は今2017年3月期で前期比2%増の260億円を上回る見通し。内訳は合繊長繊維糸を中心とした産地への販売とテキスタイルの仕入れでほぼ半分ずつとなる。

 第1四半期(16年4~6月)の産地素材の商況を見ると薄地織物やスポーツ衣料向けなど一部で苦戦しているものの、カーシート向けなど資材分野を中心に堅調に推移する。

 今後もさらに産地との取り組みを広げるために11月22日、北陸3県の需要家を対象にした糸の展示商談会「原料素材プレゼン会」を石川県地場産業振興センター(金沢市)で開く。同社が取り扱う海外の戦略原糸から加工糸、独自開発品までポリエステル、ナイロンを中心に各種合繊素材を紹介するほか、同社の生地から製品までの一貫生産体制やQRなど顧客のニーズに合わせたモノ作りをアピールする。

 同プレゼン会は昨年8月に初めて開催、テキスタイルメーカーや産元商社などから好評だったため、今回から規模を拡大する。国内外の原糸メーカー約30社が一堂に会する。

〈「広さよりも深さ」重視/一体になって改善図る/スタイレム〉

 スタイレムは日本全国津々浦々のテキスタイル産地と取引実績がある。テキスタイルマテリアル事業部の飯田悟司取締役事業部長は今後の産地との取り組みの方向性を「広さよりも深さ」と表現、産地企業と「一体になって改善を図っていく」考えを示す。

 「深さ」の背景には産地規模の縮小がある。飯田取締役によると、以前であれば「なんとかしてよ」と頼めばなんとかしてくれた。しかし今は本当になんともできないほど設備と人が減っており、受注が集中するとすぐにパンクしてしまう。これでは生地商社として顧客への“供給責任”が果たせない。その改善が産地との取り組み深耕という。

 「深さ」を具体化する施策の一つが閑散期を見越した早期の発注。繁閑差が薄まってきた北陸産地とはこの関係が徐々に構築できているという。一方、春夏と秋冬の繁閑差がまだ激しい尾州などでは課題を残す。

 同社のオリジナル開発強化も産地にとっての朗報。例えばマテリアル部門で取り扱う羊毛原料で原産地からこだわった動きを強めているのは、「安易な価格競争を避けるため」でもある。これにより同社が価格を維持、あるいは引き上げることに成功すれば、産地企業への工賃引き上げにもつながる。

 産地の置かれた状況は厳しく、「(生き残るには)一緒になってさまざまな手を打って行く必要がある」。将来的には「設備投資も視野に入る」(飯田取締役)と言う。