メーカー別 繊維ニュース

特集Ⅱ/アジア繊維産業(6)

2016年09月15日(Thu曜日) 午後5時6分

〈アジアのモノ作りと生地販売のポテンシャル〉

 アジア諸国でのモノ作りが高度化するにつれて、その重要性が一段と認識されているのが染色加工工程だ。一方、アジアでのモノ作りの最大のネックも染色加工工程とされる。織布や編み立て、縫製の各工程で海外に拠点を作っても、頼みの染色加工工程がその水準に達していなくて、一貫生産体制が構築できないという事例もある。その点で、品質安定性や世界に冠たる高水準の差別化技術を誇る日系染色加工場のアジアでの役割は大きい。他方、販売面ではやや減速局面を迎えているとはいえ、巨大な人口を誇る中国市場の魅力は依然衰えない。日本のテキスタイル関連企業の多くが対中輸出拡大、内販拡大を重点方針に掲げ、展示会出展などさまざまな施策を進めている。中国・蘇州に染色加工場を構え、将来の内販拡大をにらむ小松精練の中山大輔常務と、対中輸出拡大を方針に掲げ、それを着実に実らせているスタイレムの谷田修一取締役に、アジアのモノ作りと販売拡大の可能性を聞いた。

《小松精練》

(蘇州の通期黒字化に全力/業務提携が大きく寄与)

  ――2004年から操業している中国現地法人、小松精練〈蘇州〉の現在の商況はいかがですか。

 今1~6月は黒字でした。このまま通期で黒字化に成功すれば5期ぶりになります。もちろん自助努力としてさまざまな手を打ってきた結果ですが、1~6月の黒字化に最も大きく寄与したのは、韓国・コーロン社、イタリア・リモンタ社との提携です。

 リモンタ社とは2013年秋に、コーロン社とは15年秋にそれぞれ包括的提携契約を結びました。「自分一人でできることは限られている」という“クラスター理論”の延長線上として、互いの弱みを補完し合い、強みを伸ばすことが両提携の趣旨でしたが、その効果は想定をはるかに超えるスピードで表れています。これが、蘇州が上期黒字浮上した最大の要因です。

  ――具体的にどのような効果が蘇州で表れたのでしょう。

 両社とも、今から中国に自社工場を設立することは難しい。でもコストで優位性を発揮して販路開拓を進めるためにも中国製の生地は使いたい。それならば提携して小松精練の蘇州を使えばいいとなったわけです。生地メーカーとしては当社と両社は本来コンペチターの関係です。しかし部分的にせよ協業できることはないかという判断になったわけです。時代の変化とも言えるでしょう。

 具体的には、両社が中国で選定、あるいは購入した生機を蘇州で加工するという取り組みです。両社の「中国生地を使いたい」という思いと、当社の「蘇州の収益を高めたい」という思いが合致し、ウィンウィンの関係が構築できています。この結果、蘇州では低採算品からの置き換えが進み、収益が大きく改善しました。両社ともにこのビジネスは順調で、欧米などへの販路拡大に役立っていると聞いています。

  ――本社工場と蘇州とをすみ分けしながらですか。

 そうです。本社でしかできない加工もありますし、メード・イン・ジャパンにこだわる顧客もいます。リモンタ、コーロン両社との提携事業についても、臨機応変にすみ分けしながら進めています。

(“現地化”と“距離感”/中国人スタッフが成長)

  ――改めて、蘇州工場の概要を教えてください。

 詳細な設備内容までは公表していませんが、月産加工能力は約200万メートルで、「ビンテージ繊意」や湿式コーティング、ナイロンのジッカー染色などを得意としています。方向性は付加価値化で、加工バリエーションも拡大しています。

 取引先は約20社で、社数ベースで約半数が日系企業です。以前は加工量の約8割が日本向けでしたが、今では欧米向けが主流です。

 スタッフは230人います。うち日本人の常駐者は4人。以前は日本人が10人以上いたのですが、中国人スタッフが成長してくれており、“現地化”が進んでいると実感しています。今では生産、営業、技術開発、業務、各部門の部長は全て中国人です。彼らと頻繁に飲みに行くなど日本との“距離感”を縮めたこともあって、高いモチベーションで仕事に取り組んでくれています。こうした意識改善も収益を改善できた要因の一つだと言えますね。

  ――設備投資のご予定は。

 順次進めていますし、今後も環境に応じて進めていきます。幸いスペースにはまだ余地がありますし、上海から1時間という利便性は今後も大きな武器になっていくと思います。

(要望に応じてすみ分け/狙うのは巨大な中国市場)

  ――今後の蘇州のイメージを。

 日本をマザーファクトリーにしながら、適地生産の観点で蘇州の力を引き上げていきたい。顧客の要望をしっかりと見極めながら両工場を使い分けていきます。その先にあるのが、巨大な中国市場への生地供給です。中国内販は徐々に拡大していますが、まだまだ余地がありますし、将来的には必ず伸ばしたい事業です。

  ――生産とは別に、アジア向け販売の現状と今後の方向性をお願いします。

 今期、アジア向け販売は落ち込んでいます。これは中国経済の減速を想定したものであり、その間は得意の欧州向けの拡大で補完するというシナリオでしたが、こちらも想定通りの推移になっています。

 中長期的に中国市場を狙っていくという戦略に変更はありません。休止していた「インターテキスタイル上海」に3年ぶりに出展するのもこの戦略の一環です。

《スタイレム》

(上海現法上期は40%増/日本製生地の輸出がメイン)

  ――グローバル販売を強化されています。各地域への上期(2016年2~7月)販売状況はいかがですか。

 中国現地法人では引き続き上海が内販を大きく拡大しました。売上高は前年同期比40%増で、利益も伸長しました。深センは微減とやや苦戦しました。その要因は、深センのマーケットが成熟期を迎えていることと、当社のマンパワーの弱さだったと思います。この改善を図ることができれば、まだまだ深センでも拡大余地はあるとみています。現法を通さない日本からの直接輸出も微減でしたが、中国向け生地販売のトータルとしては上海の好調もあり増加しました。

  ――中国市場向け生地販売のうち日本製生地が占める割合は。

 日本製が約9割を占め、残りの約1割が中国製生地ですが、今後は中国製や韓国製生地の取り扱いを増やすことが課題になります。日本製生地だけに固執していてはこれ以上の拡大は難しい。日本製生地がメインであることに変わりはありませんが、それを維持拡大しつつ、中国製、韓国製などの生地をしっかりと当社の采配で作っていくことが、今後の中国市場攻略のポイントになると考えています。日本製生地は品質や機能性、感性などで優れているのは間違いないのですが、ロットや納期、価格面では中・韓に劣ることも多い。その補完のために調達先を増やすということです。

  ――中国以外の国・地域の状況はいかがでしょうか。

 韓国向けは前期大きく伸ばしましたが、今期はやや勢いが鈍化し、上期は微増でした。同国マーケットが昨年後半から悪化していることが要因です。分母は小さいですが、香港の地場アパレル向けやOEM(相手先ブランドによる生産)メーカー向けも良くなかったですね。東南アジア向けはタイでわずかにある程度で、まだまだこれからという状況です。

(中・韓製生地拡大へ/11月に韓国現法設立)

  ――中国市場攻略のために中国、韓国製生地を増やさなければいけないということですが、理由を具体的にお願いします。

 中・韓の生地を増やしていきますが、それは日本製生地の取り扱いを減らすという意味ではありません。中国アパレルが使用する生地は圧倒的に中国製生地が多い。これに続くのが韓国製で、日本やイタリア製生地はこの2国に大きく引き離されているのが実態です。中・韓の生地をコントロールしていくことが中国市場攻略につながります。その一環として、11月ごろをめどに韓国に初の現地法人を設立します。

  ――韓国現法の事業を教えてください。

 コア事業は、韓国で生地を生産し中国市場向けに販売することです。二つ目が、日本製生地を韓国へ販売する際の窓口。三つ目が韓国で生地を作り韓国国内に販売する、いわゆる内販です。この三つが軸であり、後は韓国で作った生地を日本に販売したり、将来的には韓国製生地の欧米向け販売も視野に入れてます。

  ――インドの現地法人はいかがですか。

 現在は日本人3人、インド人13人という陣容で事業拡大に取り組んでいます。現地大手繊維メーカー、バルドマングループとの取り組みで織物を開発し、輸出するというのがこれまでのコア事業でしたが、今期から新たにジャージーの開発を始め、それら生地を使った最終製品の輸出が大幅に伸びています。開発商品のレベルもかなり高く、力を付けてきていると実感しています。

(中国はまだまだ伸びる/“距離感”縮めて深掘り)

  ――アジア向け生地販売の今後の展開を教えてください。

 現状で言えば、思っていた以上に中国向けが拡大できているというのが実感としてあります。中国は当社の強みが発揮できるマーケットです。当社の主力であるハイエンドな生地を受け入れてくれるマーケットだということです。まだまだ当社が知り合えていないアパレルもあり、新しいアパレルや小売りも続々生まれています。今後の成長に大きな期待を寄せれるマーケットと言えます。

  ――以前から、中国アパレルと“距離感”を縮めることが成功の秘訣(ひけつ)とおっしゃっていました。

 中国に限らず、当事業部の共通キーワードに「顧客との“距離感”を縮めること」を掲げています。年に数回、展示会で顔を合わせて商談するだけでは“距離感”は縮まりません。現地法人の設立などによって人員を現地に送り、相手の懐にどんどん入っていく。日本にも招待し、アーカイブギャラリーを見てもらいながら当社の歴史や強みを知ってもらう。こうした取り組みが輸出拡大に寄与していることは間違いありません。