メーカー別 繊維ニュース

特集Ⅱ/アジア繊維産業(10)

2016年09月15日(Thu曜日) 午前11時23分

わが社のアジア戦略

〈拡大するベトナム生産/TPP視野に欧米向けも/東亜紡織〉

 東亜紡織がベトナムでのテキスタイル生産を拡大させている。ベトナム関係会社であるドンナム・ウールン・テキスタイルでの梳毛織物生産は年1万2000反規模となった。東亜紡織の山田哲社長は「現在はパンツ地の生産だが、今下期からスーツ地の生産も開始する」と話す。

 ベトナムで生産する梳毛織物は現在、大手郊外店向けが中心だ。日本から紡績、整理加工、補修の技術者を送り込むことで生産精度の引き上げも進めた。新たにビゴロ捺染の設備も導入し、高品質な霜降り糸の生産も可能になった。今下期からスーツ地の生産も本格化させることで2017年度は年産1万5000反にまで拡大する計画だ。

 また、紡績能力に余裕があることからテキスタイルだけでなく梳毛糸の販売にも取り組む。ベトナムではトップ染め梳毛糸を生産する紡績は少ない。このため現地のニッターへの原糸販売にも取り組む。

 環太平洋連携協定(TPP)の発効も視野に入れ、日本向けだけでなく米国向けなどの開拓にも取り組む。米国向け縫製や編み立てを行っている現地企業への糸・生地販売を開拓する構想だ。そのために海外展示会にも積極的に参加する。

 東亜紡織はこれまで中国関係会社を主力にテキスタイル生産を行ってきた。依然として中国のスーツ縫製は大きな市場であるため、中国での生産は維持しながら、ベトナムとの2極でテキスタイル事業を拡大させる戦略だ。

〈中国向けは停滞局面/人材投資で再拡大へ/宇仁繊維〉

 宇仁繊維は中国の上海と北京に販売拠点を構える。上海は現地法人として2007年に開設、北京の現地法人はその後、12年に設置した。直近の同国向けテキスタイル販売は横ばいで足踏み状態だが、人材投資など、てこ入れを進め、拡大を狙う。

 現状、上海現法には7人、北京には12人のスタッフがいるが、日本人常駐スタッフは上海に1人のみ。宇仁龍一社長は「しっかりと全体をコントロールできる日本人スタッフが必要」と認識、人材登用に力を入れていく。

 同社の中国事業は、「日本製生地を売る」という明快さが特徴だ。同国での生地生産や縫製品ビジネスは現状、「全く考えていない」。

 東南アジア向けでもこのスタイルは変わらない。同地域向け生地販売では拠点は設けておらず、エージェント経由で日本からコントロールするが、規模は小さいながら徐々に拡大基調という。

 対日製品OEM(相手先にブランドによる生産)向けではなく、インドネシア、タイ、ベトナムなど各国市場向けの生地販売であり、インドネシアでは同国に精通する東海染工と、ベトナムでは伊藤忠商事との連携を進めている。

 宇仁社長によると、同社の主力品であるポリエステル薄地織物を筆頭に現地アパレルからの評価は高く、今後の市場の成長性も見込まれるため、将来の拡販に向けて地道に提案を続けていく。

〈ベトナムにミシン糸工場/独資で本格稼働目指す/グンゼ〉

 グンゼは2017年2月か3月をめどにベトナム・ハノイのミシン糸専用工場を完成、稼働させる。現在、近くの仮工場で既に生産、販売しており、日系企業を中心に順調な立ち上がりを見せる。

 本工場は独資によるもので、工場建屋は染色(1500平方メートル)を含めて約1万5000平方メートル。インナーウエアを中心にニット、スポーツウエアなどを対象にし、月産100㌧を目標にする。工場従業員は、現在は仮工場のため少数だが、目標の100㌧達成時には200人以上となる予定。

 ベトナムでは新しい拠点として縫製工場の数が増加しているため、ミシン糸の現地調達ニーズに応え、同国でのシェア拡大を狙う。

 商品は、バングラデシュで順調な販売を続けているポリエステルウーリー糸「ポリーナ」とポリエステルスパン糸などをベトナム工場でも主力にする。欧州向けのジーンズ縫製工場向けにスパンの太番手でジーンズ分野も開拓する意向だ。

 グンゼ(繊維資材事業部)のミシン糸生産工場は現在、国内では岡山県の津山工場、海外では中国(上海郡是通虹繊維)、インドネシア(グンゼ・インドネシア)、バングラデシュ(グンゼ・ユナイテッド)の計4拠点。これにベトナムでの生産拠点が新たに加わり、国内外5拠点となる。

〈中国、インドさらに強化/S&Bのアジア戦略で/ニッセンケン〉

 ニッセンケン品質評価センター(ニッセンケン)はスクラップ&ビルドのアジア戦略を推進する。中国とインドの拠点を拡大する一方で、インドネシアの試験事業から撤退した。

 ニッセンケンは7月にインドネシアの試験業務を行っていたジャカルタラボを閉じ、ソロ検品センターの検品業務のみ残した。駒田展大理事長は「チャイナ・プラス・ワンとして期待したが、試験業務の拡大は今後も難しい」と判断した。

 その一方で、「中国はアパレルの見直し機運もあり、引き続き強化する」考えだ。中国では現在、上海、南通、崇川、南通人民路、煙台の5事業所を有する。また、支所として青島、大連、上海マート、紹興、張家港に営業拠点を設け、如東検品センターも設置する。

 「煙台は試験、検品とも依頼が増え、青島や大連支所も好調。煙台事業所は山東ニッセンケンとして会社を一格上げ、開発区の自前の土地に建物を建設して移転する。来年央には稼働したい」と語る。中国の縫製工場の北部への移転に対応する。

 インドでの活動も活発だ。2014年、インドにジャイプル事業所を構え、その後、デリー支所、チェンナイ支所も設けて、日本企業のインド進出を支援する。10月にジャイプルのシタプラインダストリアルエリア内で開かれる繊維企業展示会「Vastra2016」展にも出展。「インドでの認知度も上がってきた。日本向けだけでなく、内販や欧州向け試験も行っていく。情報面を含め日本からのインド進出企業を支援」する。

 バングラデシュのダッカ事業所試験センターは今後が期待される。9月初旬に開かれた「ダッカ インターナショナル ヤーン&ファブリックショー2016」にも出展した。東南アジアではミャンマー(ヤンゴン事業所試験センター、同検品センター)に続き、カンボジアのプノンペンにプノンペン検品センターも開設。「既にキャパオーバーの仕事量」と好調だ。

〈カケンのアジア戦略/企業の海外進出を支援/中国回帰にも注目する〉

 カケンテストセンター(カケン)は今年度2%の増収を計画する。4~6月期は国内事業がプラスながら、海外事業は5%強の減収となった。これは「円高に推移した為替の影響」(長尾梅太郎理事長)によるものだけに今後の為替動向を注視する。東京事業所は50カ国の規格基準情報を提供するほか、大阪事業所に続き、海外向け試験にも対応。企業の海外進出を支援する。

 長尾理事長は、衣料品の生産が中国から東南アジアにシフトしたが、ここに来て「中国に戻る動きもある」と指摘する。納期に余裕がある商品、ロットの大きいものは東南アジアや南西アジアにシフトできるが、短納期・小ロット生産は中国に依然として優位性があるためだ。人件費だけで生産地は決められない。

 「ミャンマーを視察したが、ベトナムに比べて投資環境の改善に向けたスピードが遅い。賃上げもさらに進みそうで、韓国系企業には撤退するところもある」と語る。カケンとして東南アジアでの新規拠点作りは様子見の段階にある。

 現在、ベトナム・ホーチミンにビューローベリタスと提携したBVCPSベトナムがある。「試験依頼は順調。中国から移転するアパレルも多い。環太平洋連携協定(TPP)でも注目され、今後への期待は大きい。カンボジアのビューローベリタス経由で、同国内の試験依頼にも対応」する。ベトナム北部(ハノイ)の依頼は、カケンの香港検査所が受託。

 バングラデシュのダッカには提携先のKOTITIがKOTITIバングラデシュを開設。KOTITI日本チーム(日本語対応可)が対日試験を代行する。

 カケンはカンボジア、ベトナム、インドネシア、韓国、香港でも特定芳香族アミン規制、新ケアラベルのセミナーを開催。国内だけでなく、海外でも情報サービスする。

 中国では上海科懇検験服務のほか、南通、青島、大連、寧波、無錫に拠点を設ける。「上海科懇検験服務は抗菌性試験も開始した。中国国内での短納期対応が可能」になった。特定芳香族アミンの試験も量的に対応できる体制で、内販向けにも対応する。大連試験室も試験依頼は順調だが、好調だった青島試験室は現地大手企業の東南アジアシフトの影響が出てきた。「アジア生産は選別の時代を迎えた」とみる。

(カケンインドネシア/軌道に乗る検査業務/検品事業はアイテム拡大)

 カケングループのカケンインドネシアの検査業務が軌道に乗り始めた。これまで先行投資を続けてきたが、2016年上半期は収益も黒字化した。このため試験項目の拡大も進める。一方、検品事業は衣料品だけでなく服飾雑貨の検品も強化する。

 カケンインドネシアの検査業務は16年に入ってから依頼件数が30~40%増のペースで推移している。大手SPA向けやスポーツを中心に「インドネシア製生地を使った縫製が増加したことで、検査も現地で行う流れが強まっている」(羽生浩之社長)。

 特に昨年から導入した吸汗速乾性試験など機能性試験の依頼が増加している。このため新たにUVカット性試験の設備導入も検討するなど試験内容の拡充を進める。

 一方、検品事業は一時低迷していたが、今年後半に入ってからオーダーが回復傾向だ。ジャカルタ、バンドン、ソロの3カ所に研修センターを設置し、縫製工場での出張検品に対応する。また、衣料品だけでなく服飾雑貨の検品も拡大させる考えだ。既にスポーツ用手袋やカーテンの検品を行っている。さらに靴の検品にも参入したいとする。

 試験、検品いずれも農機対応の速さに定評がある。このため引き続き納期対応力も武器にインドネシアでの受注拡大を進める。

(カケンベトナム試験室/増員でサポート機能強化/素材産業の発展に注視)

 カケンテストセンターのベトナム拠点であるカケンベトナム試験室はフランスの第三者検査・認証機関であるビューローベリタス(BV)社のベトナム拠点BVCPSベトナムと業務提携している。染色堅ろう度試験や物性試験、繊維鑑別試験、安全性試験など、日本と同様の試験ができる設備で、同水準のサービス提供に強みを持つ。

 BV社の物流を利用し、カンボジアのプノンペンやバベット地区など縫製工場が集積する地域からの依頼も送料無料で受け、報告書も届けるピックアップサービスも展開。新しい洗濯絵表示に関するセミナーも企画し、プノンペンでは20人、ホーチミンでは40~50人が集まるなど、東南アジアでの縫製拡大に伴ったサービス拡充に力を入れる。

 ベトナム、カンボジア全土の工場、検品場への出張検品にも対応し、この際に取得する現地情報の発信機能も重要だ。今期から1人増員した邦人6人体制で臨んでいる。

 池田翔太郎室長によると、4~7月の縫製品での試験依頼については「爆発的な伸びはひとまず静まった」と言う。4~5年前に比べ4倍に膨れ上がり、15年も14年比3割以上増えた依頼数が、今年は10%程度の伸びに若干、落ち着いている状況だ。縫製地としての基盤が確立され、「ボトムアップが進んだ」とベトナム縫製産業の現状を見通す。

 依然として縫製品での試験依頼が多い状況だが、副資材の試験依頼も増え、生地の基本物性依頼も多くなっている実感もあるようだ。ただ、今後に向けて対日で生地の依頼が拡大していくかについては、やや不透明な見方を示す。日本から生地の現地調達ニーズは確実にあり、こうした取り組みが増えていくことは確実視されるが、小ロットで品質も厳しい日本向けで、どれだけの現地の素材メーカーが関心を示していくかを注視している。

〈QTECのアジア戦略/内外の連携を強化/特徴のある拠点づくり〉

 日本繊維製品品質技術センター(QTEC)は海外事業での横串機能の強化を進めながら、既存拠点の見直し・強化を進めている。提携先のインターテックなどとの連携も強める。

 QTECは昨年から海外事業部の下に中国地域統括、アセアン・南アジア地域統括を置き、責任体制をより明確にし、国内外、地域内での連携を強化する。中国では上海総合試験センター(上海可泰検験)を中国の中核拠点と位置付け、一般試験だけでなく、抗菌性や消臭試験体制をいち早く整えた。

 また、特定芳香族アミンの分析といった安全性試験も行う。「上海はハード面の整備ができたが、営業力がまだ弱い。人を送ってより強化していく」と、奥田利治理事長。また、国内の営業との連携も進める。

 青島試験センターは好調を維持し、無錫試験センターも試験の引き合いが多い。「無錫は羽毛試験を行う。国内の中部事業所の羽毛分析試験のノウハウを移植した。海外でも特徴のある試験が武器になる」と言う。一方、深セン試験センターは「生活用品主体に試験を行ってきたが、そこからの拡大が進んでいない。次のステップで見直したい」と今後の課題の一つに挙げる。

 東南アジア・南アジアでは昨年、ベトナム試験センターを開設。インターテックとの提携によるもので、ホーチミンにある。

 製品検査、耐洗濯性試験、染色堅ろう度試験から、撥水(はっすい)性、速乾性などの機能性試験、特定芳香族アミン、重金属など安全性試験にも対応する。

 「新規顧客の開拓に向け営業力のあるスタッフを派遣する。提携先のインターテックは非繊維の試験も行う。そうした強みを生かしたい。また、試験だけでなく、検品事業も検討する」考えだ。

 バングラデシュのダッカ試験センターはテロ事件もあったが、好調を維持する見通し。「インド、パキスタンからの依頼もあり、今後は提携も検討する。バングラデシュを基点に南アジアを強化していく」と言う。

 タイのバンコク試験センターはタイ国繊維試験所(THTI)と、繊維製品の試験業務のための技術協力、支援で提携し、2014年に開設した。検査依頼は増加傾向にある。

(中国のQTEC/内販向け試験を拡大/GB対応支援などに注力)

 QTECは、中国では上海、江蘇省無錫、山東省青島、広東省深セン市の4市に拠点を置き、日本と中国内販向けのアパレル製品や生活用品の試験を受託している。中国でも日本と同様、川上から川下までワンストップで試験を受託できる点を強みとし、主力の日本向け試験に加え、内販向けも徐々に拡大しつつある。

 日本向け試験では現在、生地の特定芳香族アミン(アゾ染料)の規制が今年4月1日から日本で施行されたことを受け、アゾ染料分析試験が増えている。昨年11月から受託が立ち上がり、実施後、増加傾向に拍車が掛かっている。

 今年下半期(7~12月)は、12月1日に変更されるケアラベルへの対応支援を強化していく。上海可泰検験総経理で上海総合試験センター所長の仲本浩之氏は「混乱が起きないよう、周知徹底のためのサポートに力を入れている」と話す。

 一方、内販向けでは今年、内販参入を予定する日系アパレルブランドの中国国家標準規格(GB)への対応支援に注力している。日系小売企業から受託する靴や傘などの生活用品の試験も増加しており、その試験項目の拡充に取り組んでいるところだ。

 近年課題としているローカル企業からの受託は、まだ件数は少ないが、機能性試験を中心に依頼を受けている。QTECは昨年1月、中国紡織工業連合会の検査部門と戦略的パートナーシップを結び、内販向け試験の拡大に向け布石を打ったが、その成果が少しずつ表れているとみられる。

 上海可泰検験では、今年も中国の試験事業者の国家認定制度「CNAS」の認定項目範囲を拡大する。「特に機能性関係の項目を充実させていく」(仲本総経理)

 今後も川上から川下まで対応できる強みと専門性の高さを生かしながら、日本、内販向けともに充実を図っていく計画だ。

(ベトナムのQTEC/対日素材開発の進展注視/現地メーカーに期待)

 QTECのベトナム事業は、ベトナム試験センターが担う。2015年11月、海外で8番目の試験センターとして、ホーチミンに開設した。欧米向けを主力とする国際的な検査機関であるインターテックとの提携で製品検査、耐洗濯性試験、染色堅ろう度試験、混用率試験のほか、紫外線遮へい率、撥水(はっすい)性、速乾性などの機能性試験、遊離ホルムアルデヒド、特定芳香族アミン、重金属の分析といった安全性試験も行う。

 先行しているのは縫製品での試験依頼で、矢野富士男所長は「日本向けでは依然、縫製地としての認識が色濃い」と指摘する。

 一方、素材はまだまだ中国で試験済みの中国産を使うケースが対日では主流のため、ベトナム現地で開発した素材の試験を受注する動きは緒についたばかりだ。

 矢野所長が注視しているのは、対日で素材を開発するベトナム現地のメーカーがどれほどの規模で育ってくるかだ。高い品質基準でロットが多くない対日に関心を示す企業の開拓は商社など日系繊維企業にとっても重要なポイントとなっているが、矢野所長は「徐々に増えてくる」とみる。

 これらの動向を見極めて確実に試験依頼を得ていくことが今後の方針だ。提携先であるインターテックは欧米の規制に知見を豊富に持つため、対日から欧米向けまで広く相談窓口になれる機能も生かしたいとの考え。こうした利便性を試験依頼のしやすさにつなげる。