秋利美記雄のインドシナ見聞録(31)/夢を砕くな

2016年10月17日(月曜日) 午後4時42分

 ベトナム人が大挙して日本に押し寄せる時代になった。このコラムでも以前書いたが、近年日本を訪れるベトナム人は急増の一途である。私の身の回りを見渡しても、日本を旅行したり、住んでいたりしたことのある人は今や珍しい存在ではなくなっている。

 統計資料を見ると、在留ベトナム人は今年上半期6カ月間だけで3万人近く増え、合計17万人以上。年末までには20万人を超えそうな勢いにある。来年度中には、在留外国人としては、国別で中国人、韓国人に次ぐ「第三勢力」となるだろう。

 こうした動きの背景にはベトナム国内での日本への理解や日本語の学習熱の高まりがある。ハノイ市とホーチミン市の二大都市には日本語学校が多数あるが、最近では地方都市にさえも日本語学校ができている。

 9月中旬には、ハノイ市とホーチミン市の一部の小学校で日本語教育クラスが開講した。ベトナムの小学校で日本語を第1外国語として学ぶプログラムで、ベトナムでの日本語教育の普及を目指して在ベトナム日本国大使館とベトナム政府教育訓練省が協力して実施に至った。ハノイ市では4校、ホーチミン市では1校がまずは試験校として実施され、その後順次地方にも拡大する予定だという。

 同じく先月、ハノイ国家大学傘下の日越大学の開学式も行われている。これも小学校での日本語教育と同様、日本とベトナムの政府が協力し、国際的なレベルの教育を行って優秀な人材を輩出することを目的に設立された大学で、ベトナム研究者の古田元夫東大名誉教授が学長に就任している。

 日本に行って、日本で勉強しようという人も増えている。その急増ぶりは日本留学ブームというレベルを通り越して、留学バブルと呼ぶべきではないかという意見さえもある。しかし、ベトナム人留学生は、大学の学部と大学院といった高等教育機関への進学が比較的少なく、専修学校や日本語学校への在籍が多い。「日本に留学すれば、仕事をしながら月15万~20万円も稼げる」などの誇大広告などが広まり、留学というより働いて稼ぐために借金までして費用を捻出し留学するケースもあるからだ。

 中国や韓国などからの留学生が減少し、経営の厳しくなりだした日本の日本語学校にとっては、日本を夢見るベトナム人学生らは貴重なお客さまで、中にはかなり強引な募集を行っている事例もあるらしい。日本に留学してみたら授業らしい授業を全く行わない学校もあって、トラブルに発展した事例を聞いたこともある。

 意欲に燃えるベトナム人留学生の夢を砕き、日本の評判を下げるようなまねだけはしてほしくないと切に思う。国際協力関係作りというのは、こういうところこそが一番の礎だからだ。

あきとし・みきお 繊維製品輸入販売会社カラコロモ〈東京〉代表、ミラン・コンサルタント〈ホーチミン〉副会長