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トップインタビュー(26)/スタイレム 社長 酒向 正之 氏/変化への対応力磨く/海外と人材がポイント

2016年10月26日(Wed曜日) 午後3時28分

 グループ本社の瀧定大阪が今期、為替デリバティブ契約解約違約金の220億円含む計300億円の特別損失を計上。同時に、スタイレムを中核とするサプライヤー事業に人や資源などのリソースを集中することをグループ方針として決め、その社長には副社長を務めていた酒向正之氏が就いた。本年度上半期(2016年2~7月)は市況悪化の中でも売り上げ、利益ともに前年同期並みを確保したスタイレムの今後を酒向社長に聞いた。

 ――10月3日付で社長に就任しました。抱負をお願いします。

 スタイレムとしてはここ数年間かけて進めてきた、グローバル事業の拡大や生地と製品の融合といった方向性が間違っていたとは思っていません。ただ、マーケットはわれわれが想定していた以上のスピードで変化しています。オーバーストアが顕在化し、ネット比率も上昇、小売り業態の変化が著しい。将来の少子高齢化が心配されていますが、既に少しずつその影響も出始めていると思いますね。

 例えば、ミセス市場は以前よりも人口は増えています。しかし、そこの服は売れていない。今は各家庭に毎日のように宅配便が届く時代。衣服だけでなく、消費者の購買方法が以前と大きく変わっています。基本的に消費は冷え込んでおり、今後も大きく回復するとは考えにくい。こうした変化のほとんどは当社事業にとって歓迎するものではありません。

  ――ではその変化に対してどのような手立てを講じますか。

 一つはグローバル化です。海外顧客はここ数年でかなり増えました。まだ当社事業の90%は国内向けであり、拡大の余地はあります。その際に強みになるのが問屋業の品ぞろえの力です。当社の持つ幅広い商品が、海外顧客の多様なニーズに対応できるという意味です。今後はより海外顧客を意識した商品軸へと戦略を見直すことも重要でしょう。

  ――例えばどのような商品軸ですか。

 グローバル戦略は販売と生産の両面で進めますが、生産の面では海外オペレーションの強化が必要になる。イメージとしては、日本の顧客や海外の富裕層向けではこれまで通り日本の産地や染工場の協力による差別化商品が軸になりますし、低価格品を求めるゾーンに対しては海外生産品を軸にするということです。

  ――今秋に予定する韓国現地法人の立ち上げもその一環ですね。

 そうですね。中国やイタリア、インド、タイなどでも推進してきたものです。当社が海外生産を拡大することが日本のアパレルのプラスにもなると確信しています。また、外・外ビジネスの拡大にも取り組んでいきます。

  ――主に差別化品に関してはこれまで通り国内生産を堅持するということですね。

 その通りです。当社は国内生産を減らす意思は持っていません。後継者難などで産地の規模は縮小していますが、当社としては取引規模を維持したい。その上で、海外生産の比率を高めていくという考えです。実際、仕入れ先軒数は減っていませんし、直接的に設備を持つ考えもありません。これまでと同等かそれ以上に、日本の産地とは太いパイプを築いていきたいと考えています。

  ――変化への対応としてグローバル化の他に挙がるものは。

 人材育成にも努めます。重視するのは変化をかぎ分けることができる人材です。当社には昔から時代や市場の変化を敏感に察知して販路を変えてきたという過去があります。今攻めるべきはどこなのか、そのための商品とは何なのか、この嗅覚を持ち、強い営業マンが生地を売り歩くことで発展してきた会社です。営業マンの強さを取り戻したい。それは企画力に関しても同じです。

 グループ全体で当社を軸としたサプライヤー事業にリソースを集中するという方針が立ち上げられました。方向性が定まったわけで、当社スタッフの意識も高まっているはずです。この流れを人材育成にも生かしていきたいですね。

〈好きな街/上海の「混沌」が好き〉

 出張時を含め延べ5年半を中国・上海で過ごした酒向さんが好きな街はやっぱり上海。汚さと奇麗さ、裕福な人とそうでない人――。そんな混沌とした雰囲気がお気に入りという。スタイレムは今後、高級ゾーンと低価格ゾーンという市場の二極化を見通し、その両方のターゲットを明確にした商品企画と提案手法を確立することで事業拡大を狙う。上海は日本では見られないような速度で貧富の差が拡大中。上海で「混沌」を目の当たりにしたことが、今後の二極化戦略に役立つかもしれない。

〈経歴〉

 さこう・まさゆき 1987年瀧定入社。29課長などを経て2011年2月瀧定大阪執行役員、中国総代表兼瀧定大阪商貿〈上海〉総経理、12年11月時代夢国際〈香港〉社長、15年2月スタイレム副社長。16年10月から現職。