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ユニフォーム総合特集(1)/ユニフォームが社会の好循環を支える!

2016年11月29日(火曜日) 午後3時32分

 ビジネスユニフォームの市場規模は、2020年の東京五輪に向け拡大しつつある。少子高齢化で労働者が減ると言われながらも、市場が広がりつつある背景には、企業イメージの刷新、人材の確保、着心地の進化などさまざまな要因が考えられる。これまでユニフォーム市場を見向きもしなかったカジュアルや婦人服アパレルも商品開発を試みるなど、市場に新たな風が吹き始める。

〈市場規模5000億円突破/東京五輪見据え、需要拡大〉

 矢野経済研究所によると、2015年度の国内のユニフォーム市場規模(メーカー出荷金額ベース、スクールも含む)は、前年度比1・6%増の5026億円となり、5000億円の大台を突破した。15年の国内アパレル総小売市場規模は0・2%減の9兆3609億円(矢野経済研究所の試算)とマイナス成長になる中で、12年以降、ユニフォームが市場規模を伸ばしている背景には、景気回復による土木建築需要の増加や、女性の社会進出、外国人観光客の増加によるショッピング、ホテルといった施設でのユニフォームのニーズ拡大などが挙げることができる。

 16年度以降も規模拡大を予測するのは、20年の東京五輪を見据え、ユニフォームを更新する動きが活発化していることがある。実際、尾州産地(名古屋地区)の撚糸業者によれば、五輪に向けて、警察、消防、地下鉄などのユニフォームの更新が予定されており、撚糸のスペース確保の動きが一部に出てきたという。国内では生産スペースが限られるだけに、多品種小ロット、短納期での対応が今後ますます難しくなる可能性がある。

 一方で、今年2月から日銀が実行しているマイナス金利政策によって金融機関の業績が悪化、大口が多い金融機関向けのユニフォーム需要では暗雲が立ち込める。ここ数年、制服廃止から一転し、メガバンクを中心に制服復活が目立っていただけに、「マイナス金利が実施されて以降は動きがまるで止まってしまった」(素材メーカー関係者)と、事態は深刻だ。

 個人消費で再びデフレ傾向が出てきた中、個人買いが中心のワークウエアショップでの販売も伸び悩む。「価格が安いだけでは消費者は買ってくれない」(アパレル関係者)こともあり、“物余りの時代”だからこそ、価格にとらわれずに魅力あるユニフォームの企画が求められる様相が強まりつつある。

〈踊り場だった今年の市況/衣替えの概念が喪失?〉

 本紙「繊維ニュース」ではビジネスユニフォームを取り扱うアパレルに対してアンケートを実施し、昨年と同じ41社から回答を得た。ビジネスユニフォームの今春夏物商戦は、「増」「大幅増」と答えた企業は、昨年に比べわずかながら0・1ポイント減り46・3%(21社)だったものの、半数近くのアパレルが堅調に売り上げを伸ばした。今年、春夏物は値上げを実施した企業も多く、売り上げ自体伸ばしているが、販売数量で見れば前年より落としているケースが多い。

 一方で、秋冬物商戦の見通しについては34・2%(13社)が「増」「大幅増」の見通しで、昨年比べ大幅に減った。昨年は60%近くが「増」「大幅増」と答えていたが、暖冬で予想以上に悪かったことで、慎重な見方を示す企業が多い。また、金融機関を中心にユニフォームの更新需要が活発だったが、マイナス金利で業績が悪化する中、オフィスウエアの動きも低調になりつつある。

 秋冬物が不振の理由の一つとして気温がある。9月は例年より2℃ほど平均気温が高かったことで、特にショップを中心に店頭での販売が落ち込んだ。

 さらに衣替えの概念が希薄になってきたこともある。9、10月が年間で最も売り上げの多い月だった企業も最近は11、12月に売り上げが分散する傾向にある。ユニフォームを採用する側にとっても秋冬物よりは春夏通じて年間で着用できるものを選ぶ傾向が見られ、業界全体が秋冬物そのものの企画を根本的に考え直す時期に差し掛かっていると言える。

〈値上げ収束へ/一部に値下げも限定的〉

 円高や生産調整などで、13年の秋冬物から続いた値上げの波は今春夏物で一度収束に向かいつつある。どうしても値上げが追い付かなかった企業の中には今秋冬物も値上げする動きもあるが、8割以上の多くの企業が「価格改定をしない」と回答した。

 ただ、大手アパレルの一部に「市況が良くなく、流通段階ではアパレルのこれまでの値上げをエンドユーザーに転嫁し切れていないところも多い」(アパレル首脳)ことから、疲弊する流通段階に対応する形で秋冬物から値下げを実施。小売価格は下げずに卸価格を下げる企業もある。

 半面、この時期での値下げに慎重な意見も少なくない。今年の春夏物まで値上げしてきたアパレルの多くは「これまでのコストアップを説明して何とか値上げを理解してもらっただけに今秋冬から値下げするのは難しい」と言う。為替が安定しない中で「急な円高からまた円安に振れれば、再度、値上げをお願いするというのも難しい」と、先行きを懸念する声も少なくない。

 流通段階の中にも、「これまで苦しい思いをしながら値上げをユーザーに説明して理解してもらったのに、値下げとなると、従来の説明が何だったのか」と反発もある。

 今のところ、値下げを表明するアパレルは少なく、限定的な動きにとどまる。来春夏物についても9割以上が価格を据え置く方針だ。しかし、米国大統領選の影響で円安基調となり、今月17日5カ月半ぶりに1ドル=110円台までに下がった、為替に対して先行きが見通せない状況にあり、海外生産が多いだけに今後さらに円安へ振れることを警戒する。

〈ユニフォームは魅力的?/これからも参入が増えてくる〉

 ユニフォームの需要が拡大する中、一般衣料の分野からユニフォーム事業を強化する動きが出てきた。

 ユナイテッドアローズは今年6月、プランドゥシーの関連会社で制服を手掛けるユニックス トーキョーとの協業で新たに制服レーベル「ユニフォーム ユナイテッドアローズ」を立ち上げた。同レーベルの制服は航空会社のスカイマークが今月12日から導入、好調なスタートを切っている。「アイテムの幅を増やし、病院や鉄道など対象業種も広げていければ」と、今後もさまざまな分野への市場開拓を進める。

 アーバンリサーチもライフスタイル提案型セレクトショップ「アーバンリサーチドアーズ」で、10月にオープンしたツタヤが運営する「ツタヤブックストア」の新業態「スタートアップカフェ大阪」が併設する新店舗のユニフォームを制作。店頭では暮らしにまつわる雑貨のほか、店員が着用するデニムのセットアップのユニフォームの販売もする。

 ワールド(神戸市)も2013年からユニフォーム事業を強化している。それ以前は地元神戸の企業向けに小口の別注案件を扱っていた。14年にディスプレーデザイン大手の乃村工芸社のワークウエアや、JA兵庫信連のオフィスウエアなどを手掛ける。15年からは神戸市の「医療都市宣言」と関連してドクターコートを制作するなど規模、カテゴリーを広げた。「J∞クオリティー」認証を受けた縫製工場の品質も強みにする。

 事業強化の背景には、新しい価値を求めるユーザーの意識と、アパレル不振の中で活路を求める企業の戦略がうかがえる。

 既存のユニフォーム専業アパレルにとって脅威と感じる可能性もあるが、業界全般にとって決して悪いことではない。

 これまでユニフォームと言えば、ファッションから一歩遅れた存在で「ダサイ」「着たくない」と言われることも多かった。しかし、近年DIYブームや会社のブランディングに有効的な存在といった認識が高まるにつれ、むしろユニフォームを改めて見直す動きが強まっている。

 さらにここ数年、値上げが続いたことで、価格競争に巻き込まれない商品開発の必要性を感じる企業が増えた。一般衣料アパレルやSPAと対抗していくためにも、専業アパレルとしてはブランディング戦略をはじめ、自社の商品価値を高める取り組みが重要になってくる。

〈安定成長の学生服アパレル/“コト”戦略に転換へ〉

 この特集ではビジネスユニフォームに絞って取り上げているが、あえて今回は学生服アパレルにも目を向けたい。少子化で学校や生徒数が減っていく中でも、菅公学生服(岡山市)、トンボ(同)、明石スクールユニフォームカンパニー(明石SUC、岡山県倉敷市)、瀧本(大阪府東大阪市)の大手4社の2015年度決算は前年度から一転し4社全てが増収、営業・経常増益となった。

 中でもトンボと明石SUC(決算は明石被服興業)が、過去最高の売上高、経常利益となった。4社とも増収だったのは、制服の値上げが進んだことや、昨年のような消費増税に絡む反動がなかったこと、今年の入学商戦でのモデルチェンジ(MC)校が増加したことなどがあるが、4月の入学式に制服をしっかり供給できるという徹底したサービスが根底にある。

 展示会を見ても、同じユニフォーム分野の中にあって、来場者の心を捉える巧みな展示手法を常に試みている。菅公学生服は3年前から「ソリューションフェア」として、学校教育に関連する異業種とコラボした総合展を開始。今回の総合展では「カンコ―ネクスト企画」として、これからの学校、生徒たちに必要なプランを、制服を介しデザイン提案する内容で来場者の関心を高めた。ビジネスユニフォームの展示会も洗練されてはきたが、これからのユニフォームを訴えるような企画はまだ少ない。

 アイドルの制服を手掛けるデザイナーや企業とのコラボ、SPAとの連携など新たな仕掛けを繰り出しながら、次代を見据えた制服ビジネスを志向。単なる商品“モノ”から、目に見えない価値を含めて訴える“コト”が重視される時代へと移行するなか、制服を売るだけでなく、学校支援やエンドユーザーへの発信を強めることで、新たな市場開拓につなげる動きが加速する。

 物余りの時代だけに、いずれビジネスユニフォームを手掛ける企業にとっても新たな戦略が求められる。一歩先を見据える学生服アパレルの動きは、業界にとっても参考となる事例が多いはずだ。

〈今後の最重要課題/「人材育成」「販路拡大」重視〉

 今回、本紙「繊維ニュース」では、「今後の最重要課題は何か」という質問についてもアンケートを取った。その中で割合が多かったのが「若手の人材確保」(25・8%)、「販路の拡大」(24・2%)だった。

 特に企画では若手が中心となって取り組む企業ほど、ヒット商品を生み出している印象があり、思い切って若手に任せて見ることも企業が活気付く一つの方策になるかもしれない。

 販路拡大については、ボンマックス(東京都千代田区)のようにワークウエアへ参入し、新規分野を広げることや、バートル(広島県府中市)のように東京、大阪に拠点を設け、市場開拓を強めるなどの動きがある。市況は悪いながらも東京五輪を見据えた動きも活発化してきており、市場での競合がますます激しさを増してくる可能性がある。

 アンケートでは次に「生産拠点」「価格競争からの脱却」と続いたが、一部の企業ではモノ作りだけでなく、“コト”も重視していく姿勢を見せる企業もあり、新しいビジネスモデルを構築しようとする動きが出つつある。