変わるアジアの繊維産業(下)/インド、東南ア市場を重視

2016年12月01日(Thu曜日) 午後4時39分

 世界有数の繊維・アパレル輸出量を誇るインドだが、近年は主戦場の米国や欧州連合(EU)向けの輸出はベトナムやバングラデシュに押されている。繊維・アパレル産業の発展には、東南アジア諸国連合(ASEAN)市場の成長を取り込む重要性を指摘する専門家は多いものの、中国との競争が激しくなることは避けられない。

 世界銀行の統計によると、インドのアパレル輸出は125億ドルと、世界の3・5%を占める。中国の1450億ドル(世界の輸出に占める割合41%)とバングラデシュの228億ドル(6・5%)、ベトナムの150億ドル(4%)に次ぐ、アジア有数のアパレル輸出国だ。インド外国貿易機構(IIFT)のアブヒジット・ダス教授はインドの繊維・アパレル産業の特徴として「紡績能力は、世界有数の規模だ」と話す。伝統的に綿花の生産量も多く、国内外向けに低価格で供給している。中国と異なり、小規模の生産に対応が可能で「ニッチ」に強い。「外国企業が500万枚のTシャツを作るとしたら、中国に発注するだろう。100万~200万枚であれば、インドに発注することが多い」(ダス教授)

 繊維・アパレル大国ともいえるインドでは自国の需要が大きい上、米国とEU向け輸出が大部分を占める。ただ、米国とEUは将来的な拡大がそれほど見込めない上、インド企業にとっては劣勢に立たされている市場。2010~14年の米国向け輸出は1年当たり平均で28億ドルほどと、ベトナム(60億ドル)の半分にとどまる。EU向けは13億ドルと、ベトナム(6億ドル)は上回るものの、バングラデシュ(27億ドル)には大きく水をあけられているのが現状だ。

 05~09年と10~14年の年間の平均輸出額を比較すると、インドは米国向けとEU向けがともに縮小している。EUは後発発展途上国(LDC)に対して武器を除く全ての製品の輸入関税を免除しており(EBAスキーム)、バングラデシュも対象国に含まれる。バングラデシュはEU市場で、インドと比べて価格面で12~14%優位とされる。

〈ASEANでは中国との競争激しく〉

 今後、インドの繊維・アパレル産業にとって重要性を増すのが、ASEAN市場だ。インドの15~16年度(15年4月~16年3月)のASEAN地域向け繊維・アパレル輸出は、12億7000万ドル。他の地域向け輸出に比べれば小規模だ。ただ、インドとASEANは自由貿易協定(FTA)を既に締結しており、購買力と人口の大幅な拡大を見込めることを考えれば、大きな可能性を秘めている。

 コルカタ(東部の西ベンガル州)にあるウーマンズ・クリスチャン・カレッジの経済学部長、マウスミ・カー教授は、ASEANが中心となる東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の重要性を強調する。「世界の化学繊維貿易の30%はRCEPの参加国によるもので、この割合も拡大中だ。市場自体も広がっており、大きな恩恵をもたらす」

 一方で、ASEAN向けの輸出拡大に当たって注意すべきは、中国との競合という。インド繊維輸出促進機構のシッダルタ・ラジャゴパル理事は、「ASEANを中心に据えたRCEPの参加国中、中国はインドにとって最大の競合国だ。国内産業の現状を踏まえ、関税引き下げの取り決めはHSコードの品目ごとに、慎重に検討し進める必要がある」と説明する。

 インドを含む南アジア諸国にとって、ASEAN諸国は有望な輸出先であるとともに、競争相手でもある。中国産のアパレル製品の価格上昇と、ASEAN諸国の輸出増加には密接な関連性がある。世銀は、中国産のアパレル製品の価格が10%上昇した場合、ASEAN諸国から米国への輸出は37~51%増えると試算している。一方、南アジアから米国への輸出は13~25%増えるにとどまる。

 インドの繊維・アパレル産業のうち、外国資本の割合は1%以下とされ、外国直接投資(FDI)の流入額も00~10年で2億ドル。バングラデシュの繊維・アパレル産業の外国資本比率が5~9%、FDI流入額が11億5700万ドル(02~11年)と比べると、産業の大きさに見合う投資を獲得できていないことは明白だ。インドの繊維・アパレル産業としては、まずは外国からの投資を受け入れる体制を整えることが急務になる。

(おわり)

〔NNA〕