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2017新年号(5)/トップが語る今年の展望/2017年新春アンケート調査報告

2017年01月04日(水曜日) 午後5時3分

 ダイセンは昨年11月初旬から約1カ月かけて、2017年の業界を占う「新春アンケート調査」を実施し、川上から川下まで幅広い業種の103社に回答を頂いた。その結果を過去との比較、各社トップのコメントとともに紹介する。設問は昨年と同じ内容の11項目。①現在の景気に対する実感は②17年の景気は16年に比べてどうなるか③17年の対ドル円相場の見通しは④消費税率10%引き上げ時期が延期されたことの影響は⑤繊維品の国内生産、もしくは国内調達を増やす考えはあるか⑥繊維品の海外での生産、もしくは海外調達を増やす考えはあるか⑦増やす場合、重視する国・地域はどこか⑧中国生産、もしくは中国調達を増やすか⑨繊維品の海外販売(輸出もしくは内販)を拡大するか⑩拡大する場合、重視する国・地域はどこか⑪最もプラス効果が期待できるのは、TPP、日中韓、日EU、RCEPのうちどれか――。

〈景気実感は「足踏み中」が最多/「好転している」が過去最少に〉

 一つ目の「現在の景気の実感は」の問いは前々回、前回の基調から変化が表れた。「好転している」が前々回の7%、前回の9%から1%にまで減り、「悪化している」は61%、54%、32%と年を追うごとに減少した。今回最も多かった回答は「足踏み中」だった。グラフにはないが、3年前に実施した同アンケートでは、“アベノミクス”への期待感を表す格好で「好転している」が30%を占めていたが、それ以降の同回答の低迷ぶりから判断すると、少なくとも繊維業界には“アベノミクス”による景気好転効果はかなり薄いと言っていい。

 分野別で見ると、「好転している」という回答があったのは川上の7%のみ。「悪化している」に川中が43%を寄せていることも特徴的で、産地やテキスタイルを取り巻く環境が厳しさを増していることがうかがえる。

 当アンケート調査を実施した16年11月時点の政府の景気判断は、「着実に持ち直している。先行きについては、海外情勢の不透明感への懸念がある一方、設備投資や求人増加の継続などへの期待がみられる」ではあるが、このコメントは今回のアンケート結果とは相いれない部分も多い。

 「足踏み中」とした理由は、「企業の生産活動は輸出などにより持ち直しているが、個人消費は低迷中」(クラレの伊藤正明社長)、「雇用情勢や設備投資は改善傾向だが、節約志向の強まりなど力強さを欠く状況」(伊藤忠商事の小関秀一専務執行役員)など、個人消費の高まりが見られないことへの言及が目立った。

 「悪化している」の中でも「消費の低迷」や「先行き不透明感」を挙げる回答が多かった。

 「足踏み中」と「悪化している」の両方で「中国人中心の爆買いもピークを過ぎ」(シキボウの瀬島雄二取締役)、「インバウンドが一段落しているように感じる」(小松精練の池田哲夫社長)、「インバウンド消費の減少」(広撚の藤原宏一社長)、「爆買いの鎮静化」(蔭山の長谷川大二社長)などインバウンド需要に陰りが見られることへの言及が多く見られた。

 また、インバウンド需要とも連動して、「百貨店売り上げが低迷」(宇仁繊維の宇仁龍一社長)、「百貨店に代表される個人消費の低迷」(東海染工の津坂明男取締役)、「食品や化粧品といった日用品の伸びの一方、衣料品は苦戦」(そごう・西武)など、百貨店での衣料品消費の低迷という現状を指摘する声も多かった。

 「好転している」とした理由には、「外需・民需が力強さを欠くものの、公共投資に支えられ、穏やかな景気回復基調が続いている」(東レの日覺昭廣社長)などが挙がった。

〈今年の景気予測/3年連続で「変わらない」が最多/「好転する」過去最少に〉

 「17年の景気は16年に比べてどうなるのか」。最も多く寄せられた回答は、前々回、前回と同じ「変わらない」だった。ただし、グラフにあるように「好転する」は前々回の34%、前回の25%を下回って16%にまで減少。グラフでは割愛しているが、3年前のアンケートでは「好転する」が45%に達しており、減少基調が顕著だ。一方、「悪化する」は前々回の15%、前回の13%よりも増えて今回は20%に達し、先行き不安感を示す結果が出た。

 分野別では大きな相違は確認できないが、川上分野で「好転する」が他分野と比べて多く、「悪化する」が少ないことは特徴的だ。

 「好転する」と答えた中では、「円安↓輸出増大↓賃上げで消費の活性化に期待できる」(TSIホールディングス)、「当面は円安が継続すると考えられ、輸出企業の業績好転が景気を下支えするはず」(日鉄住金物産の中村英一取締役常務執行役員)、「米国株高↓日本株高↓円安の循環となり、一般の景況感が好転する」(スミテックス・インターナショナルの田中真一社長)、「輸出環境が好転しそう」(一村産業の藤原篤社長)など、円安による輸出拡大によって全体景気が好転するという期待感が示された。「東京五輪などのスポーツイベントによりスポーツ以外の業界も含めて日本全体に好影響が期待できる」(デサントの石本雅敏社長)などオリンピックに向けての景気回復に期待を示す声も幾つか見られた。

 初めて20%に達した「悪化する」の中では、「良くなる動機に欠け、流通在庫も多くなっていると予想」(カジグループの梶政隆社長)、「いずれは個人消費も上向くだろうが、好転を実感できるにはまだ時間がかかりそう」(清原の前田均取締役)、「国内外とも不安定要素が多い」(第一織物の西和彦専務)など好転材料の乏しさを挙げる意見が相次いだ。

 今年も最も回答数が多かった「変わらない」でも「賃金アップが末端にまで波及するとは考えられず、他にも好材料が見当たらない」(タキヒヨーの岡本智取締役専務執行役員)、「国内外の環境が不安定」(モリリンの森正志社長)といった悲観的な要素が数多く示された上、「米国、欧州、中国など政治的変動要因が多すぎて正直、分からない」(松文産業の小泉信太郎社長)、「東京五輪など明るい要素はあるものの本邦景気の先行きは読み切れない」(三井物産インターファッションの白崎道雄社長)といった意見が多かった。いつになく予測困難な一年を迎えたことがアンケート結果から読み取れる。

 選挙時期とアンケート時期との重なりもあり、「米国の次期大統領の政策次第」(ユナイテッドアローズ)のように、トランプ政権に対するコメントが多かったのも今回のアンケートの特徴で、そのほとんどが「伴って不透明に」というものだった。

〈オピニオン/三越伊勢丹ホールディングス社長 大西 洋 氏/業態間のシェア競争加速〉

  ――2016年の国内消費はどうでしたか。

 厳しいものでしたが、中間層の消費が顕著に落ち込んだ2年ほど前から続く基調です。そこへ株安が加わり富裕層の消費も減少、インバウンドも大幅に落ち込みました。

 景気が良くないと言いますが、GDPの6割を占める消費(約300兆円)のうち約半分が小売業で、その130兆~140兆円という数字はもう何年も変わっていません。その中でECが伸び、百貨店や量販店の下げ幅が大きいなど、業態のシェアが変化しているだけなのです。

  ――今年も基調は変わりませんか。

 不透明な景気の中、業態間のシェア競争が加速するでしょう。小売り規模が変わらぬ半面、商業面積は10年間で倍増し、オーバーサプライの状況ですから、小売業の再編が起きてもおかしくない。百貨店の売上規模が6兆円を切る恐れもあります。

 雇用改善やベースアップはそれなりに進みましたが、低金利を生かした設備投資があまり伸びず、M&A(企業の合併・買収)ばかりに資金が回るようなら景気足踏みの状態が続くでしょう。

  ――三越伊勢丹としてはどう対応しますか。

 百貨店事業ではまず中間層の需要を喚起します。人口減に伴う入店客数の減少や収益率の低い百貨店のビジネスモデルを考慮すると、仕入れ構造改革の加速やSPA事業の拡大、得意先機能を店頭寄りに近づけるなど一人一人のお客さまへのおもてなし追求が不可欠です。

 1年で黒字転換のめどがつきましたので成長戦略も加速します。シンガポールやバンコクへの“ジャパンストア”出店計画も進め、海外売上比率を現在の7、8%から、15~20%に引き上げたい。新宿や日本橋にも積極的に投資し、厳しくなってきた首都圏店舗の立て直しも図ります。

〈為替予測/今年は「円安進む」が最多〉

 「17年の対ドル円相場の見通しは」の問いで最も多かったのは「円安進む」の42%。次いで「現状で推移」の35%となり、「円高進む」の23%が最も少ない結果となった。

 前回の結果は「現状で推移」が65%と最も多く、「円安進む」22%、「円高進む」13%だった。15年末が1㌦=120円前後、16年末(12月中旬時点)が同108円で、16年は瞬間的に100円を割り込んだこともあった。そのため、前回アンケートで最小回答数だった「円高進む」が正解したことになる。

 今回、どの回答でも目立ったのは、「トランプ大統領の政策が読めず、為替もその方向性につられる」という指摘。「予測不能」(小松精練の池田哲夫社長)、「トランプ大統領の動きによるので現状では何とも言えない」(島精機製作所の島三博副社長)など、政治経験のないトランプ氏が大方の予想に反して大統領に決まったことで、いつにも増して為替予測が困難な情勢になったことは間違いない。

 最多回答の「円安進む」でも、「理論的には円高株安と思うが、トランプショック以降のマーケットは円安株高を示唆しているため円安に進むか」(ナガイレーベンの斉藤信彦常務)、「米国の好景気を反映し、ドル高円安傾向に進展するのではないか」(西川リビングの宮川一幸社長)、「米国の利上げがほぼ確実なことから、傾向としては円安に進むとみる」(ユニチカの長谷川弘繊維事業本部長、一村産業の藤原篤社長、澤村の清水民生社長ら)など米国絡みのコメントが目立った(アンケート集計後に米国の利上げが確定)。

 前回と同じく最少回答だった「円高進む」では、「米国の保護政策により世界経済の鎮静化を招くのではないか」(小森の市川博章社長、ナイガイの今泉賢治社長ら)などの懸念が示された。

 いつの世も為替予測は困難である上、トランプ次期政権がどのような施策を打ち出すのかが読めない現状、さらに博打的な要素が強まったと言える。こうした情勢を反映してか、「理由があって予測できるなら苦労などしない」といった意見も今回のアンケートでは散見された。

〈消費増税延期の影響/「どちらとも言えず」6割〉

 安倍晋三首相は16年6月、17年4月に予定していた消費税率の10%への引き上げを19年10月まで2年半延期する方針を正式発表した。各社の業績にその影響はどのように表れてくるのか――。

 60%と圧倒的な回答数を得たのは「どちらとも言えず」だった。「好影響」は31%で、「悪影響」は9%にとどまった。

 分野別で大きな差は見られなかったが、川上から川下に行くほど「好影響」が少なくなり、「どちらとも言えず」が多いという若干の傾向は表れた。

 川上で「どちらとも言えず」の理由として挙がったのは、「個人消費にはプラスに作用していると思われるが、当社業績への影響についてはどちらとも言えない」(日東紡の辻裕一社長)、「消費増税の影響を受ける国内販売のうち、最終消費財が占める割合はわずかであり、当社業績への影響は限定的」(東レの日覺昭廣社長)など、川上ならではのものが目立った。川中でも同様に、「直接的な影響は少ない」(小松精練の池田哲夫社長)といった声が上がった。直接的な影響を受けやすい川下では「悪影響が先送りされただけ」(フレックスジャパンの矢島隆生社長)、「増税前の駆け込み需要は多少あるだろうが、8%の時ほどの盛り上がりは予想されない」(そごう・西武)といった意見が聞かれた。「好影響」という回答では、「延期によって増税後に懸念される消費低迷の不安要素が当面はなくなり、景気を下支えする効果が期待できる」(クラボウの藤田晴哉社長)、「購買意欲の低下を当面は招かないため、国内販売比率の高い当社としては少なくとも悪影響はないと考える」(ニッケの富田一弥社長)、「増税が消費者の消費行動にネガティブな影響を及ぼすことは否定できず、延期になることによりそれが回避できるため」(三菱商事ファッションの北野均社長)、「過去の消費増税時にはほぼ販売低迷につながっているため」(カイハラの貝原淳之専務)など、延期が一時的にせよ消費低迷に歯止めをかける点を指摘する声が多く挙がった。

 増税タイミングとは別に、「消費税は下げてもいいぐらい」(東洋紡の楢原誠慈社長)といった主張や、「いずれは上げなければならず、上がった直後は負の状況にはなるだろうが、景気を良くして早く上げるべき」(宇仁繊維の宇仁龍一社長)、「国家の財務収支の抜本的改善が図られず、社会保障費が政府だけでなく国民全体の生活を圧迫しているなか、増税の反動は予想されるが、それは仕方のないこと」(双日ファッションの長田峯雄社長)など、増税そのものの是非に言及する回答も多かった。

〈国内生産/国産推奨機運はやや後退/事業内容で意識に差〉

 「国内生産を増やすか」の設問に対する回答は、70%が「増やさない」、30%が「増やす」となり、前回調査の「増やす」48%、「増やさない」52%という結果から情勢と意識が変化したことをうかがわせる。

 円安や2015年から始まった「J∞クオリティー」認証制度、パリ「プルミエール・ヴィジョン」など海外展での日本製生地の高評価などを背景にここ数年、国産推奨機運が高まりを見せてきた。アンケートにもこの機運は反映され、「増やす」の回答は3年前の25%から、40%、48%と年々拡大していた。今回の調査で30%に下がったことには為替も無関係ではないだろう。

 米国新大統領の誕生も絡んで為替が不安定な今、「今後の為替動向を注視する」(日本バイリーンの伊豆田幸康取締役)という慎重姿勢を打ち出す声は多い。ただ、「国内生産は増加傾向だが、為替が要因ではない」(明石スクールユニフォームカンパニーの河合秀之社長)、「短期的な為替変動理由による国内生産の増減は行わない」(デサントの石本雅敏社長)、「為替はあくまで一つの要素に過ぎず、為替だけで決めるものではない」(ワールドの上山健二社長)など、為替変動に左右されないという意思を強調する回答も多く寄せられた。

 国産を増やす理由では、「適地生産・適地販売が基本であるが、国内でしか生産できない商品もある」(旭化成の高梨利雄専務執行役員)、「日本品質を生かした高機能・高付加価値商材の取り扱いを増やす」(清原の前田均取締役)、「オーダー関連アイテムの受注が好調なため」(フレックスジャパンの矢島隆生社長)、「産地、匠との連携を強化し、メード・イン・ジャパンを増強する」(TSIホールディングス)などの意見が見られた。

 一方、「増やさない」と答えた中には、「中軽衣料アイテムは微増できるが、一番増やしたい重衣料アイテムの縫製キャパシティーが縮小しており、全体的には増やせない」(ユナイテッドアローズ)、「産地のキャパシティー縮小を考えると維持が精一杯か」(川越政の川越浩治社長)などの意見が多く、増やす意思はあるもののキャパシティーの問題で増やせないという現実が改めて浮かび上がった。

 分野別では川中で最も「増やす」という回答が多く、川上が最も少なかった。紡績工場など川上分野では海外生産シフトが既に大きく進んでおり、今から国産に舵を切ることは現実的に不可能。一方、川中は各産地で分業体制のほころびが表面化しているとはいえ、「生地は国産で」という意識も根強く、取り組み方や工夫によっては国産拡大の余地があると考えるトップが多いようだ。

 テキスタイル販売を主事業とする生地商社と、製品OEM(相手先ブランドによる生産)を主事業とする総合商社、専門商社とで意識の差が表れたことも特徴的だ。総合商社、専門商社の中で国産を増やすと回答したのは、「レディース商材を中心に国産を少し増やす」としたスミテックス・インターナショナルと、「日本で唯一のニット一貫工場である第一紡績は日本製を武器に事業拡大していく」とした双日の2社のみだった。それに対して生地商社は「希少性のある商品や高品質商品など顧客に対して商品提案を継続的に行うためには今以上に国内産地と強固に取り組み、奥行きのある調達を行っていくことが重要」とするスタイレムを筆頭に、「輸出競争力のある後加工や素材にこだわった商品」(コッカ)、「コストダウンを第一に増強していく」(宇仁繊維)、「インナー製品で増やす」(澤村)、「全般的に増やしていく」(コスモテキスタイル)など、国産へのこだわりが事業拡大への必須条件であるとの認識が相次いで示された。