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特集 アジア戦略 4.0(14)/香港/今年は返還20周年/深化する中国との一体感

2017年03月31日(Fri曜日) 午後4時55分

 今年は香港が英国から中国に返還され20周年。7月1日には習近平国家主席も出席しての記念式典が予定されている。

 返還に際し中国は「一国二制度」を採った。中国の一部ではあるが、「特別行政区」として、これまでの資本主義体制を2047年までの50年間維持するというもの。外交と軍事を除く「高度な自治」と「独立した司法権」などを保障するとされたが、香港行政長官を選ぶ普通選挙は実現せず、民主化は停滞している。

 香港大学の世論調査によると、1997年の返還直後には「一国二制度」に対し、「信頼している」が53・8%、「信頼していない」が23・3%だった。2016年12月では「信頼している」47・0%、「信頼していない」45・2%とほぼ拮抗している。

 中国に対する香港の経済的立場はこの20年間で相対的に低下した。1997年の名目GDP世界ランキングは、中国7位、香港27位。香港は中国の18・4%の経済規模があった。

 しかし中国の高度成長の結果、2015年には中国2位、香港34位となり、比率は2・8%にまで落ち込んだ。

 しかし国際金融センターとしての機能は衰えていない。民間調査会社のグローバル金融センター指数では、ロンドン、ニューヨーク、シンガポールに次いで世界4位。東京(5位)、上海(16位)などより上位に位置している。人民元にとっては最大のオフショア市場になっている。

 2003年には中国と経済緊密化協定(CEPA)を結んだ。その効果もあり、世界最大の貿易国となった中国の輸出入全体の3割程度は香港を経由している。国内外への直接投資も約6割は香港が経由地として活用されている。

〈日系繊維企業/欧米向け販売を重視〉

 2016年の中国繊維品輸出は前年に比べ5・9%減少した。米国、EU、日本、ASEAN地域など主要市場が軒並み落ち込んだ中、香港向けは8・4%増の150億㌦だった。もちろん、大陸から香港に輸出された繊維品のほとんどは再輸出される。日本から見ると繊維ビジネスでの香港の役割はどんどん小さくなっているように感じるが、欧米市場などをにらんだ場合、その機能はまだまだ健在だ。テキスタイルと服飾衣料資材の事例を紹介する。

 スタイレムグループは香港に時代夢国際〈香港〉とアイパレットの2社を置き、テキスタイルビジネスの拡充を進めている。サプライソースは、日本、中国、台湾、マレーシア、タイなど幅広い。価格帯は1㍍当たり3~8㌦のミドルゾーンが中心でカジュアルウエア用に綿など短繊維素材が多い。

 当面の課題は、香港のアパレルや欧米向けベンダーなどを対象にした顧客開拓。香港でのテキスタイルビジネスから見た縫製地シフトは「ベトナムが増えているが、ファッション性の高い一部の製品では大陸回帰の動きもある」(森本暁総経理)と言う。

 三景グループの三景横浜〈香港〉は、欧米向けベンダーを主要顧客に裏地やレーベルなど服飾衣料資材ビジネスを展開している。かつては日本品が多かったが、中国、台湾、韓国などサプライソースを拡充し、「中高級からボリュームゾーンまで幅広く対応できる」(沖原正彦社長)体制を整えた。

 欧米のアパレル市場でも低価格指向は強まっており、大陸からの縫製地シフトの動きはさらに進むと見る。ベトナムやバングラデシュなど他の海外拠点とも連携し、対応を強める構えだ。

〈「香港ほど適した場所はない」/伊藤忠テキスタイル・プロミネント〈アジア〉社長 市原 良市 氏〉

 伊藤忠商事繊維カンパニーは香港子会社の伊藤忠テキスタイル・プロミネント〈アジア〉(略称IPA)を司令塔にして、ASEAN地域とバングラデシュでの繊維品オペレーションを行っている。市原良市社長は「東南アジアで、トレードと投資を両輪に事業展開するに当たって、香港ほど適した場所はない」と語った。

  ――TPP発効でベトナムからの米国向け輸出拡大が期待されたが、トランプ政権誕生で幻になった。

 ベトナムで生産機能を拡充してきたのは、決して米国市場だけをにらんだものではない。既にEPAやFTAを締結しているEUもあれば、日本もある。TPPがなくとも対米は伸びてきた。

 逆に米国向けに作られた中国や台湾系の川上・川中の工場をわれわれが活用する余地が広がったとも言える。

  ――IPAとしてはベトナムとタイに子会社を置いている。

 ベトナムでは、シャツやユニフォーム、スポーツウエア、カットソーなどほぼフルアイテムに対応できる体制が整った。素材も先染め月産400万㍍、無地染め同100万㍍のシャツ地をはじめ、ボトム用、デニム、インナー糸などが現地調達できる。資本提携関係にあるビナテックスと協力して、さらに拡充していく。

 タイは中国から供給していた素材やベトナムではまだ生産できない素材を調達して、ベトナムやカンボジアの縫製拠点に供給する機能に磨きをかける。

  ――バングラデシュ生産も増えている。

 元々は欧州向けのボリュームゾーンが中心だったが、レベルが上がり、製品のバリエーションも広がっている。素材はタイ、ベトナム、中国などから調達している。

  ――こうしたオペレーションの司令塔を香港に置く意味は。

 香港は広東省など中国華南地区でのアパレル生産のオペレーション拠点として長い歴史があり、関連の企業も多い。今では華南生産はほとんど手掛けていないが、トレードと投資を両輪にした事業展開を進めるに当たって、香港ほど適した場所はない。