秋利美記雄のインドシナ見聞録(37)/最も過酷な時期

2017年04月17日(月曜日) 午前11時30分

 日本では冬が過ぎて桜が花開き新年度を迎えるのが4月。4月の日本は気候も良く、景色も美しく、一年で最もいい季節だろう。日本に旅行するベトナム人の数も4月に一年のうちのピークを迎える。ところで、ベトナムはどうかと言えば、北部も南部も一年で一番過酷な、しのぎづらいのが4月かもしれない。

 首都ハノイのあるベトナム北部では、旧正月明けから霧雨のような小雨が頻繁に降るようになる。そして、外気の湿度が最大になるのが3月から4月にかけての時期である。大体にして、一年を通じて晴れ間が少なく曇り空がお似合いなのがハノイを中心としたベトナム北部一帯だが、3月、4月は特にどんよりとした空が続き、一日中、外は小雨模様ということも珍しくない。壁面はじめじめし、家の中はカビ臭くなり、干した洗濯物が乾かないことから、うっとうしく感じられる。ベトナム北部は日本と同様温帯にあって、気候も似ているが、暑くなる前のこの時期はどことなく日本の梅雨にも似ている。

 アパレル生産に関わる者からするとこの天気は難敵で、下手をすると出荷した商品にカビが生えていたなどのクレームがつきかねない。だから、この時期に生産する場合には、出荷前の製品の状態には特に注意を払う必要がある。工場内に仕上げ工程用の乾燥室を作って、湿度管理をするところも少なくない。

 一方で、ホーチミン市を中心としたベトナム南部は日本とは違い熱帯の気候で、4月は乾季の終盤に相当する。今年は3月末から4月初めにかけて季節外れの雨に降られたが、例年だと雨が全く降らない。地面は日中カンカン照りの放射を浴びて、夜になっても熱が引かず、翌日はまたその上に灼熱(しゃくねつ)の陽光が降り注ぐ。連日それが繰り返されるものだから、暑苦しいこと、この上ない。

 これが雨季に入ると、一日のどこかでスコールがバシャっと来て、空気中を逃げ場なくさまよう熱気を流し去って、地面を冷却してくれる。ちょうど神様が打ち水をしてくれたのだと思えばよい。だから、雨季に入ってくれた方がずっとしのぎやすくて快適だ。

 こうしたベトナムのこの時期の気候は日本にいる方々には全く想像がつかないに違いない。ベトナムに来られる機会あるならば、頭の片隅に入れていてほしい。

あきとし・みきお 繊維製品輸入販売会社カラコロモ〈東京〉代表、ミラン・コンサルタント〈ホーチミン〉副会長