「第11回アジア化繊産業会議」/付加価値の必要性鮮明に/標準化作業委員会も発足

2017年04月18日(Tue曜日) 午前11時12分

 インド・ムンバイで13日から開かれていた「第11回アジア化繊産業会議」が14日、共同コミュニケを採択(別掲)して閉幕した。サブテーマを「低原油価格の時代の化繊産業の持続可能な戦略」とし、参加各国・地域の化繊産業の現状報告が行われたほか、中長期需給見通しなどが議論された。標準化作業委員会も正式発足した。次回は19年4月にインドネシアで開催される。

 今回は、現状報告と中長期的需給見通しに、合繊原料問題、通商問題、用途・開拓・製品開発、環境・省エネなどを加えたさまざまな問題が題材となった。ホスト国であるインドの繊維産業について、三つの特別報告と二つの特別アジェンダが実施された。

 日本からは、日本化学繊維協会の日覺昭廣会長(東レ社長)が「アジアおよび世界の化繊の中長期需給見通しおよび構造変化」について特別テーマ報告を、同協会の伊藤正明副会長(クラレ社長)によるカントリーリポートを行った。旭化成の小堀秀毅社長が中国の報告に、東洋紡の楢原誠慈社長がマレーシアの報告にそれぞれ発言した。

 会議では、今後も世界の繊維需要は成長を続け、その伸びは化繊が支えるとされたが、20年には需給ギャップが拡大する予想。こうした中、アジアの化繊産業は高機能・高性能繊維の開発や非衣料用途開拓が重要との指摘が各国・地域から相次いだ。

 そのほか、アジア化繊産業連盟の下で標準化作業委員会が正式に発足した。アジア化繊産業の高度化を踏まえ、標準化の意識向上、人材育成、情報提供・共有などを目的とし、同委員会を通じて活動に取り組む。18年の春に第1回ワークショップを開催する予定としている。

 開催国のインドでは高い経済成長、中間層の拡大、消費高度化を背景に化繊産業の投資に対して積極的な姿勢が見られた。世界最大の化繊生産国である中国は、高機能・高性能繊維・環境対応繊維を強化して質的向上を目指す方針を明確にした。

 第11回会議には9カ国・地域(日本、中国、インド、インドネシア、韓国、マレーシア、パキスタン、台湾、タイ)からの参加となり、過去最多の230人が出席した。

〈第11回アジア化繊産業会議共同コミュニケ(抜粋)〉

 1.成長とダイナミズムの精神を表す、アジア化繊産業連盟のロゴ策定が合意された。

 2.高い原油に比べ、安い原油が化繊産業に資することは暗黙の了解であるが、世界経済の回復が遅れているため、需要予測は下方修正されている。これらの新秩序経済状況の中、化繊メーカーはこの新しい秩序に適応し、それぞれがニッチ分野を開拓する必要がある。

 3.化繊産業は引き続き世界の繊維需要を支え、その最大シェアを占める。世界的な食糧危機から耕作面積に限りがある天然繊維は供給が制限される。将来の需要増に対応できるのは化繊だけである。

 4.コモディティー品主導型構造から進化し、各種の衣料・非衣料分野で付加価値に対するニーズが高まっており、新規用途の開拓が必要となっている。

 5.さまざまな機能性、高性能に関する標準化の設立が必要であることが認識された。アジアの化繊産業と繊維産業の貿易拡大と協力を促進し、アジアにおいて新しい化繊の開発、新規用途の開拓を進めるため、アジア化繊産業連盟標準化作業委員会の設立が合意された。

 6.環境関連に対するコンプライアンス強化の必要性が合意された。天然資源の節約が必要であり、リサイクルのスピードアップも必要。これらは天然資源の汚染削減を伴うものでなければならない。

 7.ビッグデータ時代を迎え、化繊メーカーはより良い製品の開発の手助けとなる、顧客データの収集とフィードバックの仕組みを構築・改善する必要があることで合意された。

〈日本化繊協会・日覺会長/インドの成長性に期待感/日本化繊産業が手本に〉

 日本化学繊維協会の日覺昭廣会長は「第11回アジア化繊産業会議」について、「アジアの化繊産業の進む方向性がまとまり、一致団結できた」と総括した。中でも標準化作業委員会が正式に発足したことの意義は大きいとし、「日本の存在感が増す」と強調した。一問一答は次の通り。

  ――11回目のアジア化繊産業会議が終了した。

 ようやくアジア化繊産業の方向性がまとまってきたという印象を持った。ここ数回は自由貿易協定など通商問題が中心だったが、日中韓の間で進展していることもあってほとんど議論されなかった。今会議では、これからの化繊産業の発展には「高機能繊維・高性能繊維や非衣料分野にかじを切ることが重要」との考えで一致した。アジア化繊産業連盟の「共に学び、共に考え、共に進む」という理念に沿った、意義深い会議だった。

  ――特に標準化作業委員会の正式発足には意味がある。

 大きな成果の一つと言える。高機能繊維や高性能繊維などがアジア化繊産業界で標準化できると、偽物が市場に出なくなり、高機能繊維や高性能繊維で優位性を持つ日本にとって追い風になる。まずは日本と中国が共同事務局を担い、2018年の4月か5月に第1回ワークショップを日本で開く。

  ――ホスト国のインド繊維業界の印象は。

 人口増加と経済成長の両面に支えられているインドでの需要拡大は確実だが、今回の会議に繊維大臣をはじめとする政府高官が参加するなど、国全体で繊維産業を盛り上げようとしている。会議への参加者が、9カ国・地域合計で過去最多の230人に達したのも、インド化繊産業への関心の高さだと思う。

 国や地域、民族で嗜好(しこう)が分かれるファッションアパレルについての市場開拓は大きな困難が伴うだろうが、一方で非衣料分野は、自動車関連や紙おむつなどを中心にチャンスがある。インドでは現在越境税が賦課されているが、今年7月にもこの越境税が廃される見通しで、これを機にモノの動きが活発化する可能性がある。

  ――日本の化繊産業については。

 アジアの化繊産業は、高付加価値化・高機能化、非衣料用途の拡大、そして標準化の方向に動いており、日本がアジアの国・地域の手本になれると思っている。これからも日本が引っ張っていかなければ、アジアの化繊産業の発展はないとの思いを強くした。