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春季総合特集(11)/小松精練 社長 池田 哲夫 氏/M&Aの速度上げていく/拡大は資材と海外で

2017年04月24日(Mon曜日) 午後5時14分

 小松精練は、厳しい事業環境が予想された2017年3月期、微減収増益という期初計画とほぼイコールの結果を出す見込みだ。利益については生産性向上運動の成果もあり、上振れする。今後も成長戦略を描くが、池田哲夫社長によるとその対象は資材と海外。基幹の国内ファッション向け、同スポーツ向けでシェア拡大に取り組み、資材と海外の拡大を、M&A(企業の合併・買収)を交えながら加速する。

  ――事業環境が激変しています。半歩先の事業環境をどのように読みますか。

 当社の主要販路であるファッションもスポーツも、国内は絶対に昔のような良い時代に戻ることはないでしょう。少子高齢化が進みますし、今より市場環境が好転することも考えにくい。従ってこの分野で大きな投資をしていくことは難しいという認識です。

 とはいえ、当社ではファッション衣料向け、スポーツウエア向けに中東民族衣装向けを加えた事業規模は全体の60%に達します。この事業規模を維持しつつ、資材向けの拡大と海外市場の開拓を進めるというのが基本戦略です。この間、「非ファッション、非スポーツ」という観点で管理職クラスの人材4人も採用しました。

  ――国内ファッション分野、同スポーツ分野向けの加工は減っていくということですか。

 残念ながら市場は縮小していきます。しかし、染色加工統計に占める当社の加工数量は12%程度。シェアの観点で言えばまだ拡大の余地はあります。強みの高次加工やデジタルプリント「モナリザ」の拡販、水平、垂直の連携を推進することで国内ファッション向け、スポーツ向けを維持拡大していくことは可能だとみています。

  ――連携の中にはM&Aも含む。

 このほど栃木県足利市の繊維素材メーカー、セイホウを完全子会社化することを決めましたが、これによりメディカル分野の攻略を進めます。今後もM&Aのスピードを上げていきます。M&Aは当社の既存領域とは違うところが対象になりますので、例えば国内同業他社を子会社化することはありません。

  ――連携という点ではこのほど、国内最大の生地商社、スタイレムと協業してデジタルプリント「モナリザ」の展示会を開きました。

 デフレが浸透するなか、基本的に高価なものが売れない時代です。モナリザという新しいアプローチを市場がどう捉えるのかを検証するための場だったのですが、非常に反響が大きかったですね。スタイレムさんの企画力、営業力に当社の技術力が加わることで従来のプリントにはない価値が創出できたと自負していますし、市場の停滞感を払しょくできるはず。今後の拡販、受注拡大に期待しています。

  ――モノ作りには今、何が必要なのでしょうか。

 キーワードはスピードです。今は何が売れるか読めない時代。でも備蓄にも限界がある。売れ筋を素早くリピート生産することが重要になってくるわけですが、そこで活躍できるのがデジタルプリントです。モナリザにとどまらず、あらゆる商品で納期短縮に取り組みながら、新たな仕組みを作っていくつもりです。

  ――生産性の向上にも取り組んでいます。

 前期は一人当たりの1時間の生産数量を10%向上させるという目標を掲げていましたが、結果は5%の向上でした。悪くない結果ですが、まだまだ余地はありますので、今期も再度10%の向上を目指します。

 その一環として、IoT(モノのインターネット)を導入することを決めました。当初は染色加工場でIoTを導入することは難しいと考えていましたが、研究の結果、道筋が見えてきました。今期からプロジェクトチームも組織し、設備投資含め順次導入していきます。まずは一つの工場で完成させ、そこをモデルに全体に広げていく計画です。

  ――IoTのポイントはどの辺りになるのでしょう。

 前工程と後工程をいかにつなぐか、さらに助剤の使い方などですね。

  ――国が提唱する「働き方改革」の一環で残業抑制の機運が高まっています。

 加工場としては正直、頭の痛い問題ですが、質を高めていくしかない。その点では当社の方向性とも一致しており、むしろ良いきっかけになると前向きに捉えるようにしています。

  ――資材関連の拡大に向けてはどのような構想をお持ちでしょう。

 さまざまな可能性がありますが、炭素繊維事業の成長が一つの核になります。本社工場内に炭素繊維ロッドの生産工場を新設することも決めました。完成は今年末になる見込みです。

  ――海外市場の開拓は。

 「プルミエール・ヴィジョン」出展を軸とした欧州トップブランドへの提案はこれまで通り続け、数量に期待できる中国市場の開拓を本格化していきます。

 いけだ・てつお 1981年小松精練入社。2006年上席執行役員、07年取締役上席執行役員、08年営業本部長代理、09年取締役常務執行役員・営業本部長、11年1月から現職。

〈思い出の味/高級品だったバナナ〉

 「子供の頃、病気になると親にもらえたバナナの味がとてもおいしかったことを覚えている」と池田さん。バナナは昭和30年代までは非常に高価な高級舶来果実で、サラリーマンの平均月給が1万円弱という時代に一房約6本で250円もした。食べられるだけでラッキーだったのかもしれない。当時の朝鮮に数年間住んでいた祖母が作る朝鮮漬けも思い出深い。「キムチとは違う」甘辛い味で、今でもその味を探すが、「どこに行っても見つからない」と残念がる。仕事柄、国内外各地のおいしいとされるものを食べてきた池田さんだが、いま一番好きなものは、卵かけご飯とみそ汁とお漬物。