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2017春季総合特集(57)/スタイレム/社長 酒向 正之 氏/2極化現象への対応急務/ど真ん中にあるのは生地

2017年04月27日(Thu曜日) 午後3時34分

 「当社事業のど真ん中にあるのはいつも生地」と改めて強調するスタイレムの酒向正之社長。海外市場開拓や製品事業の拡大に取り組む同社だが、核となるのは今も昔も生地であり、それを「企画・提案・リスク」する力だ。「市況は全世界的に厳しい」ものの、「ポケットを幾つも持った」人材の強化や企画力の向上に重点的に取り組み、難局を乗り切る。酒向社長に現状と今後を聞いた。

  ――半歩先の事業変化を読むと。

 現在、基本的に国内アパレルマーケットは悪く、良い話はほとんどありません。元気なブランドも中にはありますが、その多くは規模が小さい。今のアパレル不況は全世界的なもので、米国も百貨店がリストラや店舗縮小を進めるなど既存の売り場は総じて悪化の一途をたどっています。こうした状況下、国内市場にも元気がない中にあって当社業績のけん引役だった生地輸出でも明るい見通しが立てづらくなりました。

 基本的に市場は二極化の様相を強めています。この流れへの対応力が問われるわけですが、まずは2極が求めるものをしっかり分析する必要があります。高価格ゾーンが強く求めるのはオリジナリティーであり、新鮮さです。一方、低価格ゾーンで求められるのは、価格と価値のバランスであり、海外一貫によるコストの抑制です。この部分では海外縫製工場向けに海外生地の増強を図る必要がありますし、当社の中でも生地部門と製品部門の融合をこれまで以上に進めていく必要があるでしょう。

 どちらのゾーンにも共通して求められるのが企画力。当社が強みとしてきた部分ですが、今後も永遠の課題として人材強化を図りながら企画力向上に取り組んでいきます。

  ――商社という業態、特に人材の強化は必須ですよね。

 多様な顧客ニーズに対応するためには幾つものポケットを持っていなくてはいけない。当社の特徴である課別独立採算性に事業部制という新たな要素を導入したことで、人材の面ではより幅広い能力が求められようになっています。リーダーシップやマネジメント能力が高くないとこの組織はうまく回りません。社員の意識向上が不可欠です。毎年少しずつですがその辺りの成長が見られるのは明るい材料ではありますね。

  ――中国市場向け生地販売を拡大しています。足元の商況と今後の見通しを。

 先ほど全世界的にマーケットが悪くなっていると指摘しましたが、中国に関しては少なくとも今期(2018年1月期)までは伸ばせる見込みです。中国マーケットはまだまだ奥が深く、当社が知らないアパレルもまだあります。「インターテキスタイル上海」に5年ぶりに出展してその事実を思い知りました。ここの新規開拓が進めばまだ伸ばせます。同時に、既存顧客の深掘りも進めますし、それも可能だとみています。中国の顧客も大きく変化しています。ニーズも多様化しており、日本製生地を求めるブランド、中国製生地を求めるブランドなど違いも大きい。その見極めが事業拡大のポイントになりますし、今後は当社企画の中国生地を増強しながら、今期から本格稼働した韓国現地法人を活用した韓国製生地の提案も強めていきます。

  ――事業全体の今期見通しはいかがですか。

 17年1月期業績の詳細は28日に予定する決算発表で述べますが、下半期から市況が冷え込んだことは今期への流れとしては重苦しいですね。今期は前期よりも厳しい市況になると読んでいます。営業マンのポケットを増やし、オリジナリティーの強化などで難局を乗り切る考えです。当社はもともと営業力の会社です。課題の抽出はできているので、今期をその改善の年にするつもりです。

  ――ネット販売で成功するアパレルが目立ってきました。ネットサービスについてはどのような考えをお持ちですか。

 当社事業は基本的にB2Bなのでそこまで強く意識しませんが、顧客と当社が互いに利便性が上がるようなものは導入していかなくてはいけません。当社が14年4月からスタートしたウェブ受発注システムの利用者は年々増えており、顧客の利便性向上や当社の業務効率化に貢献しています。着分オーダーにおけるウェブシステム利用の件数は前期で55%に達しました。

  ――社内外で進める連携も今後に向けたポイントだと思いますが。

 社外では小松精練さんや三菱ケミカルさんと大々的に連携事業を進めていますし、今後も各所で連携していくつもりです。

 社内各部門、各事業の連携にも力を入れており、例えば中国向け生地販売を急激に伸ばせたことも社内連携の成果です。現地法人と日本本社との連携、生地部門と製品部門との連携がうまく進展しました。年内には上海、深センに続く拠点として北京にも現地法人を設立する計画です。

 さこう・まさゆき 1987年瀧定入社。29課長などを経て2011年2月瀧定大阪執行役員、中国総代表兼瀧定大阪商貿〈上海〉総経理、12年11月時代夢国際〈香港〉社長、15年2月スタイレム副社長。16年10月から現職。

〈思い出の味/礼文島で食べたイカ〉

 「食べることも飲むことも好き」と言う酒向さんはほとんど毎晩、販売先や仕入れ先、業界関係者らとの会食に時間を割く。「会食も重要な仕事。自宅でタイムカードを押すシステムがあったなら社内で一番働いてきたという自負はある(笑)」。平日に自宅で夕食を食べた記憶もないそうだ。実際、夜の会食をきっかけに生み出されたビジネスは数多く、会社への貢献度はかなり高いものとみられる。そんな酒向さんの記憶に刻まれているのは学生時代に旅行した北海道・礼文島で食べたイカの丸焼き。サッと火を通しただけのイカを口に入れたときの柔らかさとおいしさは忘れられない。