香港新成長/越境EC拠点としての課題(前)/高コスト吸収が鍵に

2017年07月13日(Thu曜日) 午後4時44分

 中国向けのクロスボーダー電子商取引(越境EC)を手掛ける上で、香港はさまざまなリスクヘッジができる機能を持つ。ASEAN地域への展開が視野に入る環境にあることも魅力だ。ただ良いことずくめではない。世界有数の高額なオフィス賃料をはじめとする“高コスト”が難題として立ちはだかる。香港活用にはコストを吸収できるだけの販売の見込みに加え、覚悟や本気度も求められそうだ。

 エフカフェ(大阪市淀川区)の高岡正人取締役は、中国向け越境ECのリスクヘッジができることも香港の優位性に挙げる。

 中国の保税区とECプラットフォームは規定の変化が速く、ついこの前まで送ることができた商品が急に送れなくなったり、販売できなくなったりする。高岡氏によると、現時点で商品の原産地証明や放射能証明の提出を義務付けているECプラットフォームは一部だが、今後は国自体が規制に乗り出す恐れもある。

 日本から中国にモノを送るハードルは日増しに上がっていると言える。もし規定が急に変わっても、保税区に入れたらもう商品を取り出すことができず、販売ができなくなっても放置したまま。食品なら廃棄しなくてはならないリスクが出てくる。

 ならば、出し入れしやすい香港にモノを置く選択肢を作るべきというのが高岡氏の考えだ。

 「今後は中国への一極集中ではなく、腐らず規制対象になりにくい衣類は中国に置き、廃棄ロスの可能性があり規制変化の激しい食品や化粧品などは香港、日本というように商品分野ごとにリスクヘッジする分散型のスキームを組むべきだ」と呼び掛ける。

 香港はASEAN地域向けに越境ECを展開する上でも有利だ。フリーポートとしての魅力を備え、ASEAN地域とも地理的に近い香港に倉庫を設けて商品を集中管理すれば、各国に安く商品を送りやすい。出店するASEAN地域各国のECプラットフォームは現地で探し、各地に支社を展開する形が想定される。

〈デメリットに対策を〉

 香港を噛(か)ませて越境ECを手掛ける日本企業は現在、皆無に近い。それでも、香港を活用したい企業は増えているという。

 ただ香港を使うデメリットも存在する。

 「ユーザー目線で言うと、日本の商品なのに香港から送られてくるということが問題になる恐れもある」と高岡氏。中国人消費者は日本人が使っている日本からの直送品が欲しい。ただ香港からの配送だと、商品には香港から送られてきたことを示すシールが張られるので、消費者に「偽物ではないか」という疑念を抱かれるリスクがある。不信感を取り除くためには販売時にしっかりと説明するなど消費者をフォローする必要がありそうだ。

 当然ながら、香港で事業を展開するには拠点の管理費がかかる。世界有数の高さで知られるオフィス賃料や在庫を確保する倉庫の費用、人件費など高コストに耐えられる財務的な体力が必要だ。

 香港の倉庫物件が借りにくくなる恐れも出てきた。最近では地場企業に加え、香港の利便性に目を付けた外資企業がEC商品用の倉庫として工業ビルを借り受ける事例が増えている。〔NNA〕