香港新成長/越境EC拠点としての課題(後)/香港の機能、うまく活用

2017年07月14日(金曜日) 午前11時25分

 物流業界団体の香港物流協会(HKLA)は、「ECの発展に伴い、香港では今後、EC向け商品を扱う倉庫の需要が増える。香港は国際ブランドのEC商品の倉庫・発送ハブになる潜在力を持つ」と報告。倉庫の新設需要は向こう10年で700万平方フィート(約65万平方メートル)に達すると予測した。

 「現在の工業ビルの賃料は中国の保税区にある倉庫と比べてもそれほど差はない」(業界関係者)との指摘もあるが、旺盛な倉庫需要に供給が追い付かなければ、賃料上昇が加速する流れになるのは間違いない。

 エフカフェの高岡正人取締役は、「高い管理コストが吸収できることを見越した上で、越境EC事業の香港拠点を設置できるかがポイントになる。越境ECの販売が“お試し”という企業ではリスクがある。中国でマーケティングをして商品の手応えを得られた企業か、ASEAN地域も視野に入れて越境ECを本格展開したい企業であれば、香港活用を勧める」と話す。

 香港跨境電子商貿総会(HKGCCE)の陳楚冠(ダニエル・チャン)創会会長は、「日本企業は香港のEC関連企業と組んで、中国市場に進出してほしい。われわれは中国の政策を熟知しており、日本企業の進出を手助けできる」とアピールする。

 香港経由で中国に運ばれたEC商品は2015年に150億米ドル。中産階級が育つ中国では、海外商品の引き合いがますます高まるとみられ、各種の強みを持つ香港を経由してEC商品が行き来する流れは今後も広がる可能性が高そうだ。

〈航空ハブに魅力〉

 香港の機能をうまく活用して越境ECを手掛ける企業がある。香港で立ち上がったオンラインのアパレルブランド「グラナ(GRANA)」だ。

 最高経営責任者(CEO)を務める豪州人創業者のルーク・グラナ氏は、「香港はECを展開する上で、最適の地だ」と強調する。

 グラナは14年4月に設立。製造や物流面で中間業者を介さないビジネスモデルを採用し、現時点では香港、米国を中心に13カ国・地域で事業展開する。中国の提携工場などで製造した製品を香港に集め、各地に向けて一括配送する。香港には倉庫機能を置くのみだ。

 香港に本部を設けた理由は、モノの出し入れがしやすいフリーポートであることに加え、ファッション業界の人材ハブであることも考慮した。多くの衣料メーカーが香港に拠点を設けているため、人材が豊富で商品開発も容易。「本部として検討した豪州のシドニーや米ニューヨークで、香港のように人材を見つけるのは難しい」と言う。

 さらに、グラナ氏が推すのは、香港が「世界有数の航空ハブ」であることだ。

 世界中の航空会社が香港に乗り入れていることは、参入市場への配送の面でメリットが大きい。香港から発送される「速達配送(エクスプレス・シッピング)」の小包量は多いため、他都市よりも最適な発送時間と配送料金が得られる。例えば豪州には1~2日で届けることが可能だ。

 ECを通じた中国向け販売でも、香港から中国に輸出する方が、他国から中国に直接輸出するより容易で速い。中国側の境界までは車で45分の距離。税関を通るのも簡単だ。1~2日で商品を消費者の手元に届けることができる。「香港は中国に輸出するのにとても良いロケーションだ」。グラナ氏はこう力を込める。

(おわり)

〔NNA〕