メーカー別 繊維ニュース

特集 2017夏季総合(4)/フロンティアを切り開け/わが社の新領域

2017年07月24日(Mon曜日) 午後4時5分

 人類の歴史で繊維素材は常に先端材料であり続けた。そして、それを扱う繊維産業もまた、時代の最先端技術を担うことで近代産業を先導してきた。そのDNAは今日も変わらない。繊維素材や繊維加工技術、あるいは生産プロセスの技術をベースとしながら最先端のフィールドを開拓している。

〈東レ/変革の可能性秘める「hitoe」〉

 東レとNTTが共同開発した生体情報センシングウエア「hitoe」が実用化への動きを強めている。スポーツ用途に加えて、工場や建築現場での作業員見守りシステム、そして医療分野でも実証試験や具体的な導入に向けた動きが加速してきた。hitoeは繊維産業の事業構造を変革する可能性すら秘める。

 hitoeは導電性高分子をナノファイバーに含浸させることで高い導電性を持たせた生体電極材。これをウエアに使うことで心拍・心電情報を計測できる。既にゴールドウインがトレーニングデータ計測用デバイスとして採用したが、新たな用途へも広がり始めた。

 その一つが「作業員みまもりサービス」。NTTコミュニケーションズのクラウドシステムを活用し、工場などで作業員の生体情報をモニタリングすることで安全を確認する仕組みである。これをベースに実証試験にも参加していた大林組が、独自に「暑さ指数」のモニタリングを組み合わせたシステムで熱中症対策を含む作業員の安全管理システムを実用化した。

 hitoeは医療分野でも注目を集める。2016年に一般医療機器としても登録。今年2月から藤田保健衛生大学とリハビリテーション分野で実証実験を開始した。リハビリ中の生体データをモニタリングし、リハビリの影響の測定やプログラム立案・実行に活用する構想である。そのほかモータースポーツやドライバー向け眠気検知システムなど実証実験が行われており、その用途が広がる。

 hitoeのもう一つの特徴は収益化の方法。東レはウエアや機器の販売だけでなくシステム使用料などサービスに対して課金する方向で普及を進めている。サブスクリプション方式が広がれば繊維の事業構造を劇的に変える可能性を秘める。

〈ユニチカ/3Dプリンター用材料で高評価〉

 ユニチカのモノフィラメントが3Dプリンター用材料として高評価を得ている。ポリ乳酸(PLA)に加えて、感温タイプなどユニークな商品も開発した。

 3Dプリンター用材料としてABSやPLAのモノフィラメントが使用されている。ところがプリンターの急速な普及とは裏腹に、材料開発が遅れていた。このため中には樹脂を単にモノフィラメント状に引き伸ばしただけの粗悪品さえ流通していた。こうした材料は高分子の配向性の制御ができていないため加工段階で破断したりする。

 こうした中、ユニチカのPLA「テラマック」モノフィラメントに注目が集まる。培った紡糸技術で配向性なども制御されており、高品質な加工が可能だったからだ。ユーザーの評価は高く、販売量の増加が続いている。

 さらに共重合技術を応用してポリエステルで感温タイプも開発した。体温など安全な温度で造形後に軟化し、自由に形状を変化させることができる。冷やすと形状を保持し、さらに高温で熱セットすることで硬化して、その後は熱変形しない。

 3Dプリンター用材料はユニチカにとっても新たな分野である。現在はホビー用途が中心だが、今後は工業用途などでも市場開拓を進める。

〈東洋紡/動物分野にも高機能素材〉

 東洋紡は高機能素材による新規領域として動物分野の開拓を進めている。先進国ではペットは成長産業であり、高機能素材の有力市場。

 近年、じわじわと人気が高まるアクアリウム。このほどペット・アクアリウム用品大手のGEXとメダカ用産卵床「卵のお守り産卵床」を共同開発した。グループ会社である日本エクスラン工業の抗菌機能アクリル「銀世界」の不織布を活用したもの。

 通常、メダカの産卵床には水草や布などが用いられるが、同じ産卵床に無精卵と有精卵が混在すると、無精卵からカビなどが発生し、有精卵の孵化を妨げる場合がある。これに対して卵のお守り産卵床は銀世界がカビの発生を抑えることで、孵化率が約2倍に高まる。

 ユニ・チャームとは3次元構造クッション材「ブレスエアー」を使ったペット用ベッド「からだ想いラボ 足腰・関節にやさしいベッド」を共同開発した。東洋紡の感覚測定技術も応用し、ペットにとって最適な体圧分散などを実現。背もたれと枕部分には速乾性・抗菌・防臭・防ダニ性に優れた高機能ポリエステルわた「フィルハーモニィ」を採用した。

 そのほかフィルム状導電素材「COCOMI」は競走馬の心拍数測定用腹帯カバーに採用されている。全力疾走中の競走馬の心拍が安定して計測することを可能にした。

〈宇仁繊維/「弱者の戦略」が根幹〉

 宇仁繊維(大阪市中央区)は生地製造販売業として1999年に創業された新進の会社。以降、減収決算は一度もなく、右肩下がりの業界にあってその存在感を世に知らしめてきた。そのフロンティアスピリットは、「弱者の戦略」(宇仁龍一社長)にあった。

 宇仁社長によると、「後発で潤沢な資金があるわけでもない当社には二兎を追うことはできない」。顧客が求める生地を、コストダウンを追求しながら国産で作り、販売する。最終製品には手を出さず、同業他社の後追いやまねもしない。「わが道を行く」ことが、海外シフトが急速に進む中で逆の差別化になり、業績拡大につながった。

 同社の成長の原動力になったのはまぎれもなく「人」だ。新卒者を毎年10人以上採用し、業界経験者の中途採用にも積極的。女性社員が多いのも特徴で、「自分が着たい服を作って売る」ことを商いの基本とする。もちろん、一人よがりのモノ作りではなく、顧客と密接に結び付き、情報を得るというマーケットインの視点も追求する。宇仁社長によると、顧客との関係が密接な営業スタッフほど、営業成績も優秀という。一点集中主義という「弱者の戦略」を「人」が実直に実践する。これが宇仁繊維のフロンティアスピリット。

〈旭化成/“コネクト”でCNF開発〉

 次世代の高機能材料として急速に注目が高まるセルロースナノファイバー(CNF)。旭化成は1990年代からCNFの研究開発を進めており、既に不織布シート化にも成功している。今後は素材特性を生かした用途開拓を進める。

 CNFは高い比表面積と空孔率、優れた耐有機溶剤性、熱膨張係数の低さなどが特徴。こうした材料特性を生かした用途開拓が実用化のポイントとなる。旭化成では現在、プリント配線基板用の層間絶縁膜といった電子材料、あるいは機能性フィルターといった用途での研究開発を進めている。メディカルやヘルスケア分野も有力な候補となる。

 CNFのような先端材料の用途開拓は繊維分野単独では難しい。他の材料との組み合わせが欠かせないとみる。旭化成は“コネクト(結合)”をキーワードに新事業の創出に取り組んでいるが、CNFはその代表格となる。樹脂事業との連携でコンポジット材料へと展開するなど開発の成果も上がり始めた。

 社内だけでなく社外のリソースとも積極的にコネクトすることでCNFの材料としての有効性が発揮できる分野を探索し、実用化に向けた用途開拓を進める。同時に量産技術・量産技術の確立にも力を入れる。

〈サカイオーベックス/縫製品ODMを強化〉

 サカイオーベックスは縫製品事業でODMを強化する。主力の染色加工事業で積極的な設備更新・増強を行う一方で、自主販売の1つ、縫製品の拡大も目指す。その一つが縫製子会社のイタバシニット(東京都渋谷区)を含めた縫製品のOEMからODMへの転換であり、同社の新たな挑戦でもある。

 縫製品のODMシフトに向けてデザイナーも拡充し、7月5、6の両日にはグループ初のODM展を東京で開催。本体のテキスタイル、アパレル各販売部とイタバシニットが連携した企画提案を行った。

 さらに縫製品は東南アジア生産の基盤強化、テキスタイルと連携したユニフォームの縫製拠点開拓、さらにネット販売への対応も課題に掲げる。

 一方、テキスタイル販売は開発センターと工場の連携による白衣・介護用や企業ユニフォーム向け機能加工素材の開発に注力。スポーツ衣料向けの欧州輸出やユニフォーム・資材の中国市場の販路開拓も行う。

 同社は2017年度から3カ年の中期経営計画をスタートした。最終年度の19年度(20年3月期)には「16年度の連結営業利益15億円の、単体での達成」(松木伸太郎社長)を狙う。

〈ダイワボウレーヨン/今年度輸出量50%増へ〉

 ダイワボウレーヨンは、同社レーヨン短繊維の海外市場開拓を強化している。今年度は、持ち帰りを含まない純輸出量を、前年比50%増やす計画だ。以前から輸出している防炎レーヨンに加え、水解紙やフェースマスク用の拡大で目標を達成する方針。

 米国では、側地が燃えてもマットレスに燃え移らないようにすることを法律で求めている。同社防炎レーヨンは、火の燃え移りを防ぐために側地とマットレスの間に挟む生地の素材として採用されている。2005年から輸出し、ピーク時には年間6000㌧に達した。その後競合が激化したが、より高性能の防炎性を付与したタイプや、防炎性と防カビ性を兼備したタイプなどを投入し、現在も年間2000㌧程度の輸出規模を維持している。

 トイレに流せる便座シートなどの水解紙用レーヨンも、欧米や中国へ輸出している。水解紙の主素材はパルプだが、それだけだと強力が不足する。このため、補強材として同社レーヨン短繊維が採用されている。今年度はその輸出規模を、前年の3倍に増やす計画。中国へは、フェースマスク素材としても、同社の特殊レーヨンを3年前から輸出している。それも今年度は、前年の2倍に増やす方針だ。