ベトナム/18年最賃、6.5%上昇へ/11年ぶりの低水準もなお企業に負担

2017年08月14日(月曜日) 午前11時33分

 ベトナムの2018年最低賃金は、対前年比上昇率が過去11年で最も小幅な平均6・5%となりそうだ。最低賃金改定に関する政府の諮問機関である国家賃金評議会(NWC)が7日、首相への答申内容を発表した。人件費上昇を抑えたい企業に配慮した形だが、物価上昇率に比べればなお高水準で特に製造業にとってはさらなる収益の圧迫要因となる。

 ベトナムの最低賃金は地域別に4分類されており、最も高いハノイやホーチミン市などの都市部を含む第1地域は、17年比で6・1%増となる398万ドン(175ドル)に設定された。第2地域は353万ドン(6・3%増)、第3は309万ドン(6・6%増)、第4は276万ドン(7・0%増)と経済成長が遅れている地域の上げ幅を大きくした。

 最低賃金は16年まで2桁ペースの上昇を続けてきたが、近年はインフレの沈静化や企業の国際競争力維持に配慮し、改定率を縮小してきている。17年の上昇率は平均7・3%で前年から5ポイント余り低下し、18年はさらに0・8ポイント下がる。政労使の代表から成るNWCは、今年予想されている消費者物価指数(CPI)の上昇率である4%に労働生産性の伸び率や最低限の生活費などを勘案し、最終的に6・5%で議決した。

 NWCは近く政府に答申し、最終的に首相が11月ごろに政令を公布し、翌年の最低賃金を決める。首相の決定は「形式的なもの」(VNエクスプレス)とされ、大幅には変わらないとみられるが年後半のインフレ率などを考慮して多少の調整が入る可能性はある。

〈韓国企業は懸念〉

 労働・傷病軍人・社会事業省のトン・ティ・ミン労働賃金部長は、「これまでの最低賃金の上昇率は非常にハイペースだった。今後は、より緩やかになるだろう」と明らかにした。ただし18年の上げ幅でもアパレルや履物、水産、電子といった労働集約型産業の中小企業には負担が大きい。ミン部長は、「人件費抑制のために人員整理を行う企業も出てくるだろう」と予想した。

 ベトナム日本商工会(JBAV)事務局はNWCの決定についてNNAに、「11年ぶりの低水準とはいえ、CPI上昇率などと比較しても高い6・5%となった。急速な賃金の上昇は、周辺他国に対する相対的優位性を失わせかねないことをJBAVとしては憂慮している」とコメントした上で、「最低賃金の上昇により国民の所得水準の向上、内需の拡大につながることも理解しており、経済効果に期待したい」とした。

 第2地域で100人程度の工場を操業する日系企業の現地法人社長はNNAに、「今年は業績が好調なので6・3%の昇給は許容できる」としつつ、「能力が給与に追い付いていない人材については配置換えなどで減給も含めた対応を考えないといけない」と明かした。

 韓国聯合ニュースなどによれば、在ベトナム韓国商工会議所(コーチャム)は、最低賃金の「凍結もしくは最大3%の上昇」を求めていたが、要望していた水準の倍以上の負担増となる。中国の3分の1程度という安価な人件費を求めてのベトナムへの工場移転が、逆に収益を圧迫しかねないとの懸念が広がっている。

「ベアと昇給の区別を」

 人事労務の専門家でアジアゲート・ベトナムの豊田英司社長は、来年以降の昇給を考える上で、ワーカーに適用する最低賃金の改定率を、「賃金が元々高いスタッフや管理職に当てはめる妥当性は低い」として、職位に応じて柔軟に対応するべきと指摘している。昇給を検討する上で「ほぼ一律に賃金が上がる『ベースアップ』と業績や貢献度に応じて行う『昇給』を区別し、従業員に自社の賃金改定の仕組みや理由を説明することが重要」と提唱している。

〔NNA〕