秋利美記雄のインドシナ見聞録(41)/若くて威勢のいいパートナーと

2017年08月21日(月曜日) 午後2時42分

 2014年のベトナム繊維公団(ビナテックス)の株式公開時に伊藤忠商事グループが株式を取得して以降、ベトナム企業と日本企業の大型パートナーシップが目立つようになってきたが、つい先日もあっと驚く一大発表があった。JALとベトジェット航空の提携がそれだ。

 JALは元々、ベトナム航空と長年提携して、共同運航なども進めていた。10年の経営破綻の際、JALは収益性の悪い路線から次々に撤退していったが、ベトナム路線についてはついぞ手放さなかった。それほどまでの優良路線だったのだろう。

 しかし、ベトナム国営企業改革の一環で16年にベトナム航空が株を売り出した際にライバルのANAが8.8%分、約120億円の出資に応じた。JALが経営再建下にあって海外への新規投資ができないのを尻目に、ANAはベトナム路線拡大のため出資によってこれまでの形勢を一気にひっくり返しに出たわけだ。JALは泣く泣くベトナム航空との提携を解消せざるをえなかった。それで、やむなく新たなパートナーとして今回選んだのがベトジェット航空だ。

 ベトジェット航空は11年に運航開始以来、ベトナムで急速に拡大している新興の民間LCC(格安航空会社)で、2017年にはベトナム航空の国内シェアを追い抜くのではないかと予想されるほどの勢いがある。

 このLCCを一躍有名にしたのが、機内で若い女性CAらがビキニ姿でダンスショーを繰り広げるというプロモーション。ベトナム航空当局から後日罰金を科されるのだが、この様子を搭乗客が撮影した動画はネット上で話題となり、結果的には大成功に終わった。

 同社を指揮する創業者グエン・ティ・フーン・タオCEO(最高経営責任者)は米フォーブス誌が「世界で最も影響力のある女性100人」に選んだベトナムを代表する女性実業家で、オバマ大統領が訪越時にはボーイングを100機発注するなど鼻息は荒い。

 今年初めのバンコク行きの際に、私も初めてこのベトジェット航空を利用してみた。LCCなので、バンコクでは古くからあるドンムアン空港に乗り入れるものと思っていたら、意外にも新しいスワンナプーム空港に乗り入れていたり、JALとコードシェアをする上級の座席クラスの利用者はラウンジまで用意されていたりして、単なる格安航空会社に甘んじているつもりではないように感じた。

 その意味で、同社にとっては今回のJALとの包括的提携はステップアップを図る絶好のチャンスなのだろう。JALは古女房に振られて、やむなくベトジェット航空を新たな伴侶にした形だが、野望に燃える、若くて威勢のいいパートナーと組めて、ひょっとして良かったのかもしれない。

 あきとし・みきお 繊維製品輸入販売会社カラコロモ〈東京〉代表、ミラン・コンサルタント〈ホーチミン〉副会長