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特集 「安心」届ける機能素材/繊維業界の防災提案/「防災月間」で関心高まる

2017年08月22日(火曜日) 午前11時26分

 1923年9月1日に関東大震災が発生。190万人が被災、10万人以上が死亡あるいは行方不明になり、11万棟弱の建物が全壊、21万棟強が全焼したとされる。この大惨事を忘れないために政府は1960年に、9月1日を「防災の日」と定めた。この時期は台風の襲来が多いため、災害への備えを怠らないようにとの戒めも込める。繊維業界もこれまで、防災のためにさまざまな提案を行ってきた。全国的に防災への意識が高まる9月1日の防災の日、そして9月の「防災月間」を前に、繊維企業が開発した「“安心”届ける機能素材」の今を紹介する。

〈双日/実績十分の「レンチングFR」/無機物練り込み防炎タイプも〉

 レンチングの難燃レーヨン「レンチングFR」を輸入販売する双日。レンチングFRはアラミド繊維と複合することでハイスペックが要求される用途で圧倒的な実績を重ねてきた。無機質練り込みの防炎タイプも用意しており、需要開拓に取り組んでいる。

 双日が販売するレンチングFRは、アラミド繊維との複合用途が主力。現在でも安定した販売が続いている。特に官需ユニフォームでは2020年の東京オリンピックに向けてモデルチェンジの話などもあり、今後の動きに期待を寄せる。民需ではガス・電力分野のユニフォームで採用されているが、こちらも安定した需要が続く。ガス・電力といった分野では安全性が最重視されるため、アラミド・レンチングFR複合素材への評価は高く、いったん採用されると他素材に代替される可能性が少ないという強みがある。

 一方、課題はコスト面だ。レンチングFRは一般的な難燃レーヨンと比較しても価格が高い。このため価格競争力が求められる用途に需要を広げるのが難しく、急激な販売拡大は望めない。

 このため双日では、やはり同社が扱うレンチングの精製セルロース繊維「テンセル」とレンチングFRを組み合わせた素材提案にも取り組む。テンセルを一部使用することでコストを抑え新たな需要を掘り起こす。

 レンチングの難燃素材には、無機物練り込みタイプの防炎レーヨンもある。双日ではこうした素材も日本で紹介している。無機物練り込みの防炎レーヨンはマットレスなどでウレタンに炎が燃え移らないようにするバリアシート用途が主流だが、炎に対するバリア性を生かし、車両分野など資材用途での新規開拓に取り組む。

〈カネカ/アジア市場を開拓/作業服分野の強み発揮〉

 カネカのモダクリル繊維「カネカロン」の、難燃用途での評価が一段と高まってきた。難燃性を高めたタイプ「プロテックス」を中心に販売拡大が続く。今後、さらにアジア市場で作業服分野の新規開拓に取り組む。

 現在、難燃素材の需要拡大が続いており、カネカの原綿販売も好調に推移している。欧米は作業服用途が中心であり、アジア市場は難燃毛布が主力。米国向けは原油安でシェールオイル関連の作業服需要が落ち込んでいるが、欧州は作業服用途で販売が増加した。価格だけでなく吸湿性など着心地面のからアラミド繊維使いをプロテックス・綿混に切り替える動きが増加している。自己消火性があるためセルロース繊維との複合で難燃性を確保できる性質への評価は圧倒的。

 今後はアジア市場でも作業服分野での新規開拓に取り組む。アジア市場はアラミド繊維と綿後加工品が防炎作業服用途でシェアを二分しているが、難燃性とコストパフォーマンス、着心地など切り口にこれら素材からシェア切り崩しを狙う。さらに中国市場にも重点を置く。中国では作業服に関する規制が強化される流れが続いており、難燃素材の需要拡大が期待できる。

 作業服のほか、子供用パジャマなど一般衣料、自動車関連資材など多用途展開も進める。10月に独デュッセルドルフで開催される国際労働安全機材・技術展「A+A2017」に出展し、新規開拓とカネカロンとプロテックスのブランド力向上に取り組む。

〈クラボウ/課題克服し白色登場/防炎生地の「ブレバノ」〉

 クラボウの防炎生地、「ブレバノ」に、白色が登場した。防炎生地は、白に染めることが難しく、染めても黄変しがちだったという。同社の徳島工場(徳島県阿南市)がこの課題を克服した。

 これを受けて同社は、コックコート素材などとして、食品・サービスユニフォーム業界への提案にも力を入れる。8月24、25日に広島県福山市で開催する同社のユニフォーム素材展でも、白色ブレバノの披露を予定する。

 ブレバノは、カネカのアクリル系難燃繊維「プロテックス」と綿との混紡糸を使った生地。帯電防止性を備えた「ブレバノプラス」、落綿使いでエコマーク認定対応の「ブレバノエコ」、防炎性と強度を高めるためにアラミド繊維も使った「ブレバノネクスト」、透湿防水や高視認などの機能を付与した「ブレバノF」など、さまざまなタイプの織物に加え、編み地「ブレバノKT」もそろえている。

 国内では、ワーキングウエアに加え、消防団服、シーツなどにも採用されている。7、8年前から米国のレッドウイング社へも、ブレバノ(海外での商標は「クラプロ・FR」)を供給している。ドイツの国際労働安全機材・技術展「A+A」の2015年展では、欧州では珍しいとされるオレンジの高視認性色を表現したブレバノを出品し注目された。

 「ブレバノ」が発売されたのは25年以上前。近年、この生地への需要増が目立っており、現在の販売規模は10年前の2倍に達している。

〈ダイワボウレーヨン/洗濯必要用途の開拓へ/不燃物練り込みレーヨン〉

 ダイワボウレーヨンは2005年から、不燃物であるシリカを練り込んだレーヨン短繊維を米国へ輸出している。ただ、その用途は限られていた。シリカの洗濯耐久性が低いため、洗濯を繰り返す用途への提案は難しかった。しかし、洗濯可能なシリカ練り込みレーヨンの開発にも成功。現在、このレーヨンの用途開拓に力を入れる。

 米国の法律は、側地が燃えた場合に、マットレスに燃え移らないようにすることを求めている。このため同社のシリカ練り込みレーヨンは、側地とマットレスの間に挟む不織布の素材として採用されている。レーヨン部分が燃えてもシリカが燃えずに残り、マットレスへの延焼を阻止できる。

 不織布ではなく、編み地を挟むケースもある。編み地の場合、素材の使用量が限られるため、炎を防ぐ性能をより高めるために自己消火性を兼備したシリカ練り込みレーヨンを同社は開発した。自己消火性に加え、防カビ性も備えたシリカ練り込みレーヨンも投入。このような品ぞろえの拡充で、年間2千㌧の米国向け輸出規模を維持してきた。

 ただし、シリカはアルカリに弱く、洗濯で溶出しやすい。このため、洗濯の繰り返しを前提とする用途には使いにくかった。しかし3年前に、洗濯耐久性があり、かつ自己消火性も備えたシリカ練り込みレーヨンも開発。洗濯を必要とする用途へ向けて提案し始めた。

 他の難燃繊維との混紡素材などとしての需要を同社は期待している。

〈QTEC/防炎の登録認証確認機関 高層ビルに義務付け〉

 カーテンは一度着火すると、天井に燃え移りやすく、カーペットはたばこなどが着火しやすい。カーテンやカーペットを防炎物品にするのも防炎対策の一つ。日本繊維製品品質技術センター(QTEC)は、消防庁施行規則に基づく登録確認機関として、防炎ラベル表示事業者に対する確認業務を行う。

 製品ロットごとに防炎性能確認試験を行い、製品に表示する防炎ラベルにロットごとの防炎性能確認試験の番号を記載。防炎性能を担保するとともに、万一不都合が生じたときも、トレーサビリティー(追跡調査)が可能だ。

 QTECの検査対象はカーテンやじゅうたん、布製のブラインドなどで、製品に着火し、炎がなくなるまでの時間や、炭化した面積などを測定する。福井試験センターは、消防法関連のほとんどの燃焼試験設備を備える。

 消防法では、高さ31メートル(11階建て相当)を超える高層建築物は居住階に関係なく、カーテンとじゅうたんは防炎物品を使うことが義務付けられている。品質保証部の宮崎博司副部長は「防炎物品の義務付けは、消費者にまだ浸透していない。もっと関心を持ってほしい」と話す。

 6月には英国・ロンドン西部の公営高層住宅で火災が起こった。多くの犠牲者を出す痛ましい火災の発生だった。

 QTECはこのほかプライバシーや防犯意識の高まりから、カーテンの遮像性試験や遮光性・採光性試験など明るさに関わる試験も行っている。