メーカー別 繊維ニュース

不織布新書 17秋(2)/不織布アップデート/盛り上がる需要、新たな用途

2017年09月28日(Thu曜日) 午後2時47分

 経済産業省のデータによると2017年上半期(1~6月)の不織布生産は16万7422トン(前年同期比1・3%減)となる。前年実績は下回るもの、これは一部生産が海外移管されたスパンボンド減少のため。一方でケミカルボンドやニードルパンチ、スパンレースなどは前年実績を上回る。湿式不織布の増勢も見逃せない。全体としては不織布生産は増勢の兆しがあると言って差し支えないだろう。こうした動きを支えているのが、盛り上がる需要と新たな用途の登場である。不織布に関する動向は常にアップデートされている。

〈活況が続く紙おむつ〉

 インドネシア・ジャカルタの繁華街にあるショッピングモール。その中にあるスーパーマーケットの紙おむつ売り場をのぞくと日本メーカーの製品が、まるで特別扱いのように並べられている。東南アジアだけでなく中国でも日本の紙おむつの活況が続いている。こうした動きが不織布の需要を押し上げる。

 経済産業省の統計によると2017年1~6月の紙おむつ生産は重量45万3446トン(前年同期比11・1%増)、枚数124億4319万枚(12・7%増)と重量、枚数ともに10%以上の増加となった。

 好調な生産を支えているのが海外需要。特に中国や東南アジアでは日本の紙おむつのブランド力が健在で堅調な輸出が続く。インバウンド消費こそ一巡したが、最近では越境電子商取引(EC)など新たな販売チャネルも成長した。こうした紙おむつ需要の拡大は、バックシートに使われるポリプロピレンスパンボンドやトップシート向けのエアスルー不織布の生産を後押しする。

 紙おむつメーカーが東南アジアを中心に現地生産体制を強化していることも大きい。このため日本の不織布メーカーは東南アジア地域で相次いで増設を進め、供給体制を整備してきた。2017年に入って増強設備の稼働も本格化。しばらくは紙おむつを中心とした衛材用途の活況が続きそうだ。

 一方、国内市場に目を向けると少子化による乳児用紙おむつ需要の減退という方向性は明白。このため今後は需要拡大が期待できる大人向け紙おむつに向けた素材開発が重要になる。大人用紙おむつは着用感などのより高度な品質が求められることから、バックシート、トップシートともに一段の素材高度化が求められることになるだろう。

〈EVシフトで新規需要か〉

 不織布にとって重要な用途が自動車である。天井材やフロアマットなど内装材に始まり、外装材も含めてさまざまな用途で不織布が使われている。採算的に決して恵まれた状況にあるとは言えない自動車関連用途だが、その物量インパクトは依然として大きい。こうした中、今後の拡大が期待できる用途として注目が高まっているのが吸音材である。

 吸音材が注目される背景には、世界的な規制強化の動きがある。例えば自動車基準の国際的な統一を図る組織である国連欧州経済委員会の自動車基準調和世界フォーラムは今後、道路走行騒音規制を現行基準からさらに強化する方向である。こうした状況は、吸音材の必要性を一段と高める可能性が高い。

 さらに無視できないのが、ここに来て急速に注目が高まった電気自動車(EV)シフト。中国やインド、フランス、英国などが将来的に内燃機関動力による自動車の販売を禁止し、EVへの移行を進める構想を明らかにした。

 一般的にEVは動力部の静粛性に優れるが、そのためかえってロードノイズや風切音がキャビン内の静粛性に与える影響が大きくなるとの見方がある。このため従来以上に吸音材などを使ってキャビン内の静粛性を高める必要が生じるかもしれない。

 もう一つの観点は、EVと内燃機関動力による自動車では発生する音の質が異なる点。内燃機関が基本的に爆発音と打撃音を発生させるのに対してモーターを動力とするEVは回転音が中心となると予想される。爆発音・打撃音よりも回転音の方が人間にとって不快度が大きいとの見方もあり、やはりキャビン内の静粛性を従来以上に高める必要が生じるとの見方だ。

 吸音材はさまざまな波長の音波を制御する必要がある。不織布は繊維による3次元構造体のため、原料や組織構造を工夫することでさまざまな音を制御できる。こうした点からも吸音材は不織布にとって有望な用途。世界的なEVシフトは、こうした不織布の新たな需要を生み出す可能性を秘める。

〈カセイソーダ高騰でレーヨン苦境〉

 スパンレースなどの主要原料であるレーヨン短繊維。そのレーヨン短繊維メーカーが今年に入ってから苦境に立たされている。要因は副原料であるカセイソーダの高騰。このため国内のレーヨン短繊維メーカーは、ダイワボウレーヨンが9月から5~10%の値上げに踏み切り、オーミケンシも10月から5~15%の値上げを実施する。

 カセイソーダは国内外ともに旺盛な需要が続いていることで国内在庫も減少するなど受給がタイト化。このためカセイソーダメーカーが強気の値上げを進めたことで4月から価格が20%上昇した。さらにレーヨンの主原料である溶解パルプも需給バランスがタイト化していることで国際価格は上昇が続く。

 ダイワボウレーヨンによると溶解パルプは7月以降も4~6月期と比較して国際価格が5~10%上昇し、今後も上げ基調となると指摘。オーミケンシも2012年対比で15~20%上昇した水準で推移していると指摘しており、カセイソーダ価格の上昇からさらなる上昇が必至だとみる。

 カセイソーダ、溶解パルプ両方で大幅な価格上昇となったことから、レーヨンメーカーでは自助努力の範囲を超えたと判断。安定供給維持の観点からも今回の値上げに踏み切った。特に営業政策上の理由から販売価格が抑えられている取引案件での価格改定が極めて重要になる。