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特集 スクールユニフォーム(1)/制服が学校に新しい風を吹き込む

2017年09月29日(Fri曜日) 午後4時48分

 少子化による生徒数の減少や、制服モデルチェンジ(MC)校の減退は、制服業界の構造を今後大きく変えていく可能性がある。縮小均衡が続く今こそ新たな成長戦略を描く時であり、これまでの制服の供給から、枠組みを一歩外れたところに、思わぬビジネスチャンスが潜んでいるかもしれない。業界だけでなく学校へも新しい風が吹き始める。

〈増収基調も利益面で明暗/利益が業界構造の変化促す?〉

 7月末以降、大手学生服メーカー4社の菅公学生服(岡山市)、トンボ(同)、明石スクールユニフォームカンパニー(明石SUC、岡山県倉敷市)、瀧本(大阪府東大阪市)の2016年度の決算発表が相次ぐ。17年の入学商戦は順調にモデルチェンジ校の獲得が進んだことに加え、スムーズな供給ができたことが反映し、増収基調にある。

 明石SUCは17年5月期(決算は明石グループとして公表)の売上高が前期比3・2%増の256億円、トンボは17年6月期の売上高が2・8%の278億円といずれも増収で、過去最高の売上高だった。

 発表を控える菅公学生服も17年7月期の売上高が期初計画通り350億円(前期342億円)と増収になる見通し。瀧本の17年6月期の売上高は前期比並みの98億~99億円を見込む。

 一方で経常利益では明暗が出そうだ。明石SUCは、経常利益は13・4%減の13億円と減益だった。人件費などの上昇に加え、「素材の値上がりによるコストの圧迫が強まっている」(河合秀文社長)ことも影響した。菅公学生服も昨年11月に新高城工場(宮崎県都城市)を開設するなど、大型設備投資が続いており、前の期の経常利益6億円から「減益になる可能性がある」(尾﨑茂社長)。

 トンボは、経常利益が1・4%増の18億円と増益を確保。社内全体で年間1億円のコスト削減を目標に掲げる「TCR(トータルコストリダクション)委員会」での取り組みが「社内に浸透してきた」(近藤知之社長)ことが奏功した。瀧本も「営業、生産の両方で効率、無駄の削減が進んだ」(高橋周作社長)ことで、増益となる見通し。

 昨年、制服の値上げが進んだが「これ以上、価格が上がると、制服廃止論が出てくる」(トンボの近藤社長)懸念がある。市場が広がらない中、年々人件費や素材のコストが上昇しても値上げしづらい環境下にあって、ますます利益を出すのが難しくなってくる。

 現状では減益といっても投資による影響が大きいものの、利益が出しづらい環境が恒常的に続く場合には、学生服業界そのものの構造が大きく変化していく可能性がある。

〈MC校、過去最低の公算/数十億円規模の市場喪失〉

 18年入学商戦のMC校の件数は、学生服メーカーから「例年に比べ少ない」との声が聞かれる。実際にニッケ調べによると、9月現在把握しているのは140校で、17年入学商戦の177校より少なく、この10年間で最低だった12年の164校に比べても、20校以上少ないことになる。まだ、140校から少し増える可能性はあるが、「過去最低になる」(ニッケ)公算が大きい。

 MC校が例年より少ない理由として、ニッケは「フルモデルチェンジが減った分、マイナーチェンジが増えている」ことを挙げる。学生服メーカーにとって、新規開拓の機会となるMC校数がそれだけ減るとなると、今期の業績に影響を与えそうだが、今のところ今期の売上高の見通しとして、明石SUCが262億円、トンボが283億円と増収を計画する。

 「それなりに目標として掲げていたMC校の獲得は進んでいる」(明石SUCの河合社長)、MC校獲得の「勝率が高く、数字が読めている」(トンボの近藤社長)と、強気の姿勢を崩さない。

 MC校が少ないことより、むしろ来年、中学校、高校の新入学生が前年比で6万人超も減少(文部科学省の学校基本調査〈速報値〉)することの方を深刻に受け止める向きが強い。トンボの近藤社長は、「単純に計算すれば、数十億円の規模であり、厳しい状況になる」と指摘する。

 ただ、全国各地にまだまだ地場の学生服メーカーが多く、採算が合わない、後継者がいないというケースで廃業するケースが少なくない。各社はスクールスポーツも含めて市場の深耕に努める。

〈市場の競合過熱/新ブランドで市場深耕〉

 生徒数やMC校の減少によって、学生服メーカー同士の市場での競合が過熱している。今後もシェアを維持・拡大していくために、新たな戦略を打ち出す必要がある。

 その一つに地域の流通との連携や統合で市場をより深掘りする動きがある。菅公学生服は、昨年8月に日本メンモウから社名を改めた東京菅公学生服(東京都中央区)と、企業運営の一体化を進めたことで、17年入学商戦は首都圏のMC校獲得が大きく伸びた。

 今年6月には新潟の販売代理店の丸六(新潟県長岡市)と新潟菅公学生服(同)を設立、同県内でも一体となった企業運営で販売力を高める。

 トンボは7月から販売会社のトンボメイト(名古屋市西区)を合併し、名古屋支店として直接管理しながら販売を強化、東海地区での売上高を現状の17億円から2~3年後には20億円を目指す。

 商品面でもトレンドに沿ったブランドやデザインを繰り出すことで、MCに興味がない学校も反応を示すかもしれない。菅公学生服では、カジュアル衣料のストライプインターナショナル(岡山市)の主力ブランドのデザインを取り入れた「カンコーアース」を桜華女学院中学校・日体桜華高校(東京都東村山市)が2018年度から採用(11ページ参照)。

 黄金比やフィボナッチ数列などをデザインに落とし込んだ「ダヴィンチプロジェクト」の制服を岡山理科大学附属高校(岡山市)が採用した。

 明石SUCでは、AKB48グループの衣装制作など手掛けるオサレカンパニー(東京都千代田区)と立ち上げた制服ブランド「O.C.S.D.」の初の夏服として5校が採用。トンボは、人気の制服ブランド「イーストボーイ」で4校が採用。自社ブランド「バーシティメイト」でファッションデザイナーの松倉久美氏とコラボしたおしゃれな新企画を始動した。

 瀧本は10代に人気が高まってきた「カンゴール」やスポーツ強豪校に人気の「ミズノ」で少しずつ採用を増やしているほか、19年入学生に向け、国内大手アパレルのブランドの導入を近く発表する予定で、先行して女子服の商品開発を進める。

 MC校が少ないだけに、店頭商品の企画を強化する動きもある。トンボは、来入学商戦に向け、アクリレート系繊維を使い機能を高めた「ミッドフィルダー」や、抗菌防臭機能を進化させた「マックスプラス」、ニット製の「ビクトリー」など詰め襟服の新商品を多数投入し、市場を深耕する。

〈切り口変え、市場を創出/新たな方向へ“かじ”切る〉

 ここ数年市場でシェアを広げてきた大手学生服メーカーの成長戦略も、生徒数やMC校の減少を受け、新たな方向へかじを切る段階に入ってきた全国へ幅広いネットワークや学校とのつながりを持つ強みを生かし、新たな事業構築を模索していこうとする動きだ。

 菅公学生服は、昨年「カンコー教育ソリューション研究協議会」を立ち上げ、学校教育のサポート事業に乗り出した。現在私学を中心に約10校と取り組みが進む。

 「結果的に制服のMCにつながる可能性もあるが、それとは切り離して何ができるかを考える」(尾﨑茂社長)と位置付け、学校が抱える悩みを解決するという、あまり前例のないビジネスモデルの構築を試みる。

 瀧本も「コミュニケーションパートナーとして、さまざまな学校の要望への対応力を磨く」(高橋周作社長)方針。実際に制服を供給した学校の系列大学と産学連携による取り組みを開始した。

 明石SUCは、今年7月から「明石SUCセーフティープロジェクト(ASP)」として、神戸学院大学(神戸市)と連携し、防災教育や防災関連商品の開発を本格的にスタート。全国の学校へ「防災意識を高める」(河合秀文社長)のが狙いで、「学校にとっても防災対策を取ることで差別化になる」と、学校のブランド価値向上の一端を担う。

〈攻めの分野へ投資果敢/新工場の立ち上げも〉

 スクールスポーツは、一部のスポーツ専業メーカーの事業縮小もあって、学生服メーカーは積極的な拡大策を取る。ただ、売り上げを伸ばす一方で、生産面が課題になりつつある。トンボは昇華転写プリントなど、独自性の高い商品開発を強めるとともに、女子向けブレザーを生産しているトンボ倉吉工房(鳥取県倉吉市)の隣接地にスクールスポーツの工場を新設し、自社の生産比率を高める。

 明石SUCは、スポーツでネーム入れや刺繍などの2次加工が増加していることから、宇部テクノパークアソートセンター(山口県宇部市)で設備を増強するため、拡張工事を予定する。

 菅公学生服は昨年、スラックス生産の新高城工場(宮崎県都城市)を立ち上げたほか、隣接地に南九州全体の裁断業務を一手に担う工場として、南九州カッティングセンターを建設。来月5日には開所式を実施する。

〈関西高校×ジャパンブルー/制服へデニム採用〉

 ジーンズメーカーのジャパンブルー(岡山県倉敷市)は、岡山県内唯一の男子校である関西高校(岡山市)へ、来年の新入生から「桃太郎ジーンズ」ブランドの学生服を供給する。同校はこれまで詰め襟服だったが、今年10月に創立130年を迎えるに当たり、対外的に「変革」というイメージをアピールするため、制服を更新した。

 制服は、新開発のデニム調素材「シン・デニム」を採用したブレザーに、ベージュのチノパンを合わせたスタイル。シン・デニムは、摩擦による色落ちがなく、家庭洗濯での丸洗いも可能。撥水(はっすい)性やストレッチ性もあり、3年間着用しても問題がない丈夫さを備える。

 ジャパンブルーの眞鍋寿男社長は、デニム調の学生服について「ケアしやすく、コストメリットが生まれてくることも売りにしたい」と強調。「関西高校での採用を起点に、全国から要望があれば応えていきたい」と話した。

〈制服更新に最も決定権があるのは?〉

 「学校の制服更新時に最も決定権があったのはどの部分か」――本紙「繊維ニュース」で、今年5月に発行したスクールユニフォーム特集で学校にアンケートしたところ、4割近くの学校が「教員」と答えた。

 5月に発行したスクールユニフォーム特集は、全国の私立や生徒数の多い公立の小学校、中学校、高校約5000校に配布。アンケートも一緒に配布したところ、全国43校から有効回答があった。

 制服更新を最近実施した、または今後更新の予定がある場合、「制服更新で最も決定権があったのはどの部分だと感じたか」という質問では、44%(16校)が「教員」と回答。着崩しへの対応策がとりやすい、保護者や近隣住民からの意見を集約しやすいこともあり、教員が実質的に制服更新を主導するケースが多くみられ、そのことを反映した結果となった。

 次に多かったのは「校長」で28%(10校)だった。その他では「理事」や、教員・生徒・保護者などで構成されると考えられる「制服検討委員会」という回答もあった。