2017年秋季総合特集Ⅲ

2017年10月25日(水曜日)

Interview 独自性の時代~少数派志向への転換~ ユナイテッドアローズ 上級顧問クリエイティブディレクション担当 栗野 宏文 氏

「他責では何も生まれない」――。ユナイテッドアローズの栗野宏文上級顧問クリエイティブディレクション担当はそう強調した。衣料品が売れないと叫ばれているが、それは「生活者の求めに応じるモノが提案できていないことの結果」とし、改めてファッションの意義を問い直す必要があると説く。脱大量生産・少数派志向の時代をどのように進んでいけばよいのか。栗野氏の言葉から難問を解く手掛かりを探る。

  ――現在の社会状況、生活者の変化についてどのように感じていますか。

 衣食住という言葉がありますが、それは既に過去の概念と言えます。今は健康、食、コミュニケーションの順番になり、かなり下位の方にようやく衣が出てくるような状況です。ソーシャルメディアの進展も劇的変化の一つになりますが、とにかく生活の中での衣料品の優先順位は非常に下がってしまいました。

 一方でファストファッションが台頭しています。お金を使わない生活者に対し、商品価格を抑えることで消費を促したのですが、簡単に衣料品を買う人を増やすという結果を招きました。日本以外の国でファストファッションの店に行くと、購入者と同じぐらいの人が返品の列に並んでいる光景も珍しくありません。

 価格が安く、しかも商品が気に入らなければ返せばいいのであれば、深く考えて購入する必要はなくなります。自己責任の時代といわれますが、衣料品の購入に関しては自己責任がすごく薄められています。たくさん売れることは悪ではありませんが、弊害も出てきています。このほど公開された映画「スローイング・ダウン・ファストファッション」はこうした現状に警鐘を鳴らすものでした。

  ――脱大量生産や少数派志向への転換が要求され始めているのですか。

 ユナイテッドアローズは、比較的価格の低いものや中価格帯も取り扱っていますが、元々のスタートは高価格帯です。趣味性の強いというか、万人受けするとは限らない商品から始まりました。今は本当にファッションが好きな人に対して、こだわったモノを提供していくことに力を注ぐという原点に改めて回帰している段階です。

 新たな取り組みも既に開始しています。昨年に「ユナイテッドアローズ六本木ヒルズ店」を拡張し、新コンセプトストア「エイチ ビューティ&ユース」を表参道にオープンしましたが、どちらも非常に良い成績を上げています。今年9月にリニューアルオープンした「ユナイテッドアローズ原宿本店」についても価格帯がアップするなど順調です。

 原宿本店のリニューアルに伴って閉館したウイメンズ館で「Re」をテーマにしたリサイクルイベントも実施しました。通常は廃棄される傷物をきちんと説明した上で販売したもので、非常に多くのお客さまに来ていただきました。今後は「大量生産で残ったものを廃棄する」「傷物を廃棄する」ことからいかに脱するのかを会社全体で取り組んでいきます。

 これらは脱大量生産、少数派志向に転換する取り組みの一つです。今後も価格帯を上振れさせる商品の提案や、訳ありの商品を承知で購入していただけるお客さまへの訴求を含めて、万人受けではない商品の打ち出しに力を入れていきます。お客さまや生活者は明らかに変わりつつあり、われわれの考え方が受け入れられる余地は大きくなっています。