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2017秋季総合特集(42)/top interview/クラレトレーディング/開発力と展開力で/社長 村井 研三 氏/高度差別化商品を拡販

2017年10月25日(Wed曜日) 午後5時4分

 「当社は原糸からスタートし、それを最終製品につなげる展開力で事業を拡大してきた。素材のアドバンテージを生かし、それを最終製品までワンストップ・ソリューションで展開するところに独自性がある」――クラレトレーディングの村井研三社長は強調する。2018年度から新中期経営計画をスタートさせるが、素材の開発力と海外を中心とした製品の展開力に一段と磨きをかける。

  ――クラレトレーディングが強みとする独自性とはどのようなものでしょうか。

 衣料マーケットが同質化や低価格化を背景にこれまで国内を中心に厳しい環境が続いていますが、それでも当社が生き残ることができたのは、やはり原糸からスタートして最終製品までつなげていく展開力を拡大していくところに独自性があったからです。例えばポリエステル長繊維などは世界の中で日本の生産量など小さな規模です。ましてやその中で当社の扱う量など微々たるもの。だからこそマーケットの中でどこを攻めるのか。得意とする分野で拡大することが重要になる。具体的にはスポーツやユニフォーム、フォーマルウエアやアバヤ(中東民族衣装用織物)といった分野です。そこでまず素材の独自性をアドバンテージとすることが欠かせません。

 そして流通対応。現在の衣料品マーケットは川中・川下がチャネルリーダーですから、そことの取り組みで素材の生産・開発から縫製品までも一貫で提供する“ワンストップ・ソリューション”を目指し、そうすることでプレゼンスを高めてきたのです。しかも近年、国内の縫製スペースが縮小していますから、海外でこうしたことができることが求められます。そこで当社もベトナムでの生産基盤を早くから整備してきました。既に縫製品は生産量の60%がベトナムです。

 ダナンに主力協力工場があり、今年もプリント加工設備も内製化するなど投資も行ってきました。日本から差別化原糸を持ち込み、ベトナムで生地から縫製までで行う形ができています。これを“メード・イン・ジャパン”の品質で実現することが必要です。

  ――2017年度(12月期)はあとわずかですが、商況はいかがですか。

 当社は売上高の35%が繊維、65%が化学・化成品ですが、化学・化成品は順調でした。一方、繊維は厳しい状況です。資材分野は靴用途がやや低調ながらワイピングや工業資材、メディカルといった用途を中心に堅調だったのですが、衣料分野は減収減益で推移するなど苦戦しています。

 衣料の中ではスポーツが増収基調で推移し、ユニフォームも堅調でした。サービスユニフォームで一部生産調整の動きがありましたが、ワーキングユニフォームは受注も回復するなど堅調に推移し、ユニフォーム全体ではほぼ前年度並みの数字を確保できています。しかし原糸・テキスタイルは中東向けとフォーマルが苦戦しています。中東民族衣装用織物は現地の景況が悪く、さらに政情不安など地政学リスクも重なった影響が大きい。

 フォーマル向けも国内需要の減退が止まりません。フォーマルは冠婚葬祭用途が中心ですが、特に着用する機会が多いのが「葬」の部分です。ところが近年、家族葬などが増え、フォーマルウエアを着る機会が減少している影響があります。

 ただ、強化してきた縫製品の売上高は前年度比10%増のペースで推移しています。現在、生産比率はベトナム60%、中国35%、国内5%となっています。やはり原糸からの開発力と縫製の展開力が事業の両輪ということに変わりはありません。

  ――今後の戦略のポイントは。

 来期から新しい中期経営改革がスタートしますが、やはり開発力の強化、そして海外を中心に製販の展開力を強化することが重要になります。それによって、例えば水溶性繊維「ミントバール」や特殊粒子練り込みの機能繊維など独自・高度差別化素材を拡販する。そのほかにもクラレの特殊樹脂を繊維化することにも取り組みます。こうした独自・高度差別化商品の生産比率は現在30%ですが、次期中計中には50%まで高めることを目指します。11月には久しぶりに総合展も東京で開催ますから、改めて市場に商品をアピールすることになります。

 海外での製販展開力強化では、ベトナムでの生地・製品一貫生産をさらに拡大します。販売も日本向けだけでなく、ASEAN域内での内販や中国、欧米への輸出といった、いわゆる「外・外」も狙いたい。特にASEAN域内は今後、大きな市場になることは間違いないでしょう。日本、中国、ベトナムの3極を連携させることでアジア地域での事業拡大を目指すことになります。

〈25年前のあなたに一言/後輩に迷惑をかけたけど〉

 25年前、クラレで課長になったばかりの村井さんだが、まだ独身寮暮らし。「当時、同期で独身だったのは3人だけ。寮に住むメンバーで最年長ということもあり、“クラレ高槻寮の主”のようになっていた」と笑う。独身寮生活では先輩から仕事も遊びもみっちり“揉まれた”村井さんだけに「それと同じ感覚で若手に接していたものだから、今から見れば『後輩に迷惑をかけたかも』」。ただ、「時代が違うとはいえあのころの独身寮生活には独特の一体感と密なコミュニケーションがあった」と懐かしむ。

〔略歴〕

むらい・けんぞう 1975年クラレ入社。2002年クラレトレーディング衣料カンパニー東京ファッション部長、05年衣料カンパニー副カンパニー長、06年生活資材カンパニー長、10年取締役、12年常務衣料・クラベラ事業部長、14年専務繊維事業統括。15年から社長。