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2017秋季総合特集(57)/top interview/スタイレム/二極化への対応を加速/社長 酒向 正之 氏/外・外ビジネス軌道に

2017年10月26日(Thu曜日) 午後3時18分

 スタイレムの酒向正之社長は現在のファッション市場を「二極化が激しい」と分析、その対応に力を注ぐ。一つは企画力の研磨、一つはリスク(備蓄)の在り方だ。企画力の向上は外部との提携や自前人材の育成によって実現し、備蓄については「リスクに挑戦する会社であることに変わりはない」としつつも時代変化に応じてその手法の変更を示唆する。

  ――貴社が持つ独自性とは何でしょうか。

 生地を作り、売る力です。国内を軸に中国、韓国、イタリア、インド、タイなど海外でも主体的に生地を作り、それを国内外に販売する。製品事業も展開していますが、生地が当社のど真ん中に位置することは今も昔も変わりありません。

  ――生地生産については国内での取り組みを堅持しながら海外調達を拡大し、それを全世界に向けて販売拡大するという戦略です。

 海外の生地を仕入れるというインポート事業は旧貿易部門でもずっとやってきたこと。そこから発展して、主体的に当社が企画し、拠点をも設けて海外で生地を作るようになってまだ5~6年。試行錯誤しながら、ようやくうまくスタートし始めているというところですね。羊毛など原料事業でも外・外ビジネスが拡大してきました。

  ――2017年度上半期(17年2~7月)業績はいかがでしたか。

 単体業績は前年同期比で売り上げ、利益ともにほぼ横ばいでした。市況悪化の中で頑張ったとも言えますが、特に生地事業は決して良いとは言えません。製品事業は伸びましたし、経費節減に努めたことで中身も改善中です。

  ――生地事業苦戦の背景はアパレル不況ですか。

 当社の生地の販路は元々中高級品が多い。そこが今悪いわけですから、影響は免れません。百貨店アパレルのブランド削減や店舗縮小の影響はあります。一方でセレクト系の販路は拡大しています。

  ――生地輸出はいかがですか。

 引き続き中国向けが伸びており、少なくとも今期中は伸ばす余地ありとみています。欧米向けは微増。中東向けは生産調整で苦戦していますが、いずれ戻ってくるはずなので、しばらくは忍耐のときだととらえています。

 このように輸出は全般的にまだ好調を持続していますが、雲行きはやや怪しくなってきています。全世界的に与信管理が難しくなっています。日本でも顕著になりつつありますが、ファッションは世界的に二極化が進んでおり、その対応に力を入れていかなくてはと考えています。

  ――製品事業は販売よりも生産で海外との関わりが強い。海外縫製の現状はいかがですか。

 当社の製品事業では中国縫製が9割を占めます。しかし同国の縫製産業は高コスト傾向の強まりなど節目を迎えており、対応に苦慮しているというのが現状です。ただ、一方で日本のアパレルからは二極化も背景にQRと小口供給が求められます。東南アジア縫製では地理的にQRは難しく、小口に対応してくれる縫製工場も少ない。この点において中国の重要性は逆に高まっています。

  ――今後の見通しと重点戦略を。

 通期は計画通りで着地する見通しです。

 市況を分析すると、二極化が想定以上のスピードで進んでいます。ネット通販の成長も予想を上回るスピードですよね。二極化のなかで、高級ゾーンからはオリジナリティーを、ボリュームゾーンからはQRを求められます。当社の基本理念は昔から「企画、提案、リスク」というもので、リスクとは主に生地を備蓄することを指します。二極化が進むと備蓄の手法にも変化が求められます。リスクに挑戦する会社であることは今後も変わりませんが、その手法は大いに考えていかないとだめでしょうね。

 オリジナリティーの声に対しては企画力の向上しかありません。「新しいものを開発する」という当社の風土は今も昔も変化しておらず、それは国内も海外も同じ。日本の産地や海外協力工場と一緒になってこれを追求していきます。

  ――国内テキスタイル業界は今後どのように変化していくのでしょう。

 アパレル不況が深刻化していますが、伸びている会社、分野がないわけではありません。市場に全く伸び代がないかと言えばそうではない。その事実はしっかりおさえておかなくてはいけません。ポイントになるのは企画力でしょう。いかに魅力ある商品、価値を提供できるか。そのための人材育成にも改めて力を入れます。業界を引っ張れるような企画力を身に着けていきます。

〈25年前のあなたに一言/変化への対応〉

 25年前の酒向さんは28歳。婦人服地の26課で営業に精を出していた。当時は携帯電話が急速に普及中。当時の瀧定でも社給が始まり、本人の記憶によると、その第1号が酒向さんだった。第1号に選定された理由は本人には分からないが、「外に出っ放しで連絡がなかなかつかなかったからではないか」と推測する。手渡しされた携帯電話をその日のうちに紛失してしまういう“伝説”も今では懐かしい。携帯電話の普及によって時代は急激に変化した。現在のファッション産業もかつてないほどの速度で変化している。スタイレムがこの変化への対応の“第1号”になれるかどうか。酒向さんの手腕に期待がかかる。

〔略歴〕

 さこう・まさゆき 1987年瀧定入社。29課長などを経て2011年2月瀧定大阪執行役員、中国総代表兼瀧定大阪商貿〈上海〉総経理、12年11月時代夢国際〈香港〉社長、15年2月スタイレム副社長。16年10月から現職。