ベトナム/需給格差で労働力の確保難/15~24歳の失業率7.6%に悪化

2017年11月06日(月曜日) 午後2時8分

 製造業を中心とする外資系企業の新規進出・事業拡大に伴い、ベトナム国内で企業間の競争が激化する中、非熟練・熟練労働者の確保に苦労する企業が増えている。特に新規進出が増えている北部ハナム省やハイフォン市では、若手人材を確保したい企業側と、都心で就職を希望する求職者側の相違などを背景に、労働者の需給格差が発生。企業が人材確保に頭を抱える一方で、15~24歳の失業率は7・6%に上っている。

 人材紹介エン・ジャパン(東京都新宿区)傘下で、ベトナム最大手の求人サイト「ベトナムワークス」や「ナビゴス・サーチ」を運営するナビゴス・グループ・ベトナムの越前谷学社長兼最高経営責任者(CEO)は、「ベトナム北部では、新規進出が増えているハナム省やハイフォン市で非熟練労働者の需要が拡大しており、労働力確保に苦労している企業が多い」と説明する。

 その背景として、「若手人材の採用に関しては、都心で働きたい求職者が多い一方で、人材を募集する工場などは郊外にあることが多い。雇用される側とする側で希望勤務地に違いがあり、労働者の需給格差の原因になっていると考えられる」という。また、「日系企業の多くが『安価な人材』もしくは『安価かつ優秀な人材』を求めているのに対し、欧米などの外資系では『優秀な人材獲得のために投資する』という企業が多い。ITエンジニアなど熟練労働者は、日系以外の外資系企業に流れていく傾向にある」と指摘。コストメリットの観点だけでの採用が難しくなってきており、優秀な人材確保のために採用条件を見直す日系企業も増えてきているという。

 日系の人材紹介会社アイコニックのグローバル人材紹介部門、桝田亮マネジャーも「非熟練労働者の確保の難しさは、勤務先によって変わる。労働者の確保に苦しんでいる企業は、全体の給与ベース情報に伴う給与の最適化を図れていないと考えられる」と指摘。ただ、非熟練労働者よりも、熟練労働者の確保の方が依然として難しい状況にあると説明する。

〈韓国企業による/引き抜きも〉

 労働力の確保が難しくなる中、外資系企業の間で引き抜きも起こっている。特に韓国系企業では日系企業よりも高い給与待遇を提示することが多く、人材が流れるケースが多く見られるという。

 越前谷社長は、「日系企業が新卒一括採用にこだわる一方、韓国を含む多くの外資系企業は経験者も採用する。ベトナムのマーケットでは、2年程度の経験者の給与は、新卒者の倍以上の開きがある企業も少なくない」と説明。日系の大手企業が2年程度かけて育成した新卒者を、韓国企業が倍近くの給与で引き抜くケースも見受けられると指摘する。

〈大卒者、低賃金と単純労働嫌う傾向〉

 ベトナム統計総局(GSO)によると、9月末時点の失業率は2・26%で、6月末時点の2・28%からわずかに改善した。失業率は2015年末以降、2・3%前後で推移しており、大きな変動はない。一方、15~24歳の失業率は9月末時点で7・63%に上り、3月末の6・96%、6月末の7・48%から悪化。都市部は11・99%で、地方の5・96%の2倍に上っている。

 地場電機メーカー、サンバンマイ・エレクトリシティーで北部の責任者を務めるグエン・バン・カイン氏は、国営ベトナム通信(VNA)に対して、「給与が低い職業や単純労働を強いられる職業に就くぐらいならば、失業状態にあった方が良いと考える大卒者が少なくない」とコメント。同社では、月給600万ドンで一般家庭やオフィスで電気工事をする技術者を募集しているが、給与の低さがネックとなり、労働者の確保に苦労しているという。

 アイコニックの桝田マネジャーは、「企業からの求人が増えれば、労働者側は選択肢が増え、いわゆる『売り手市場』になり、求める環境や給与条件が高まるのは世界共通」と説明する。

 ナビゴス・グループ・ベトナムの越前谷社長によると、北部では製造と金融、南部では小売り、IT、教育業界で求人が多く、過去3年の年平均成長率では教育業界の求人数の伸びが顕著という。これらの業界では今後、人材争奪戦が一層過熱すると見込まれる。〔NNA〕