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2017秋季総合特集(30)/top interview/カケンテストセンター/改善改革の積み上げを/理事長 長尾 梅太郎 氏/新「中期経営計画」策定

2017年10月24日(Tue曜日) 午後3時48分

 カケンテストセンター(カケン)の長尾梅太郎理事長は2017年上半期(17年4~9月期)について「計画を上回る増収ペースで進んでいる」と語る。前期に苦しめられた円高も一服している。とはいえ、繊維業界の構造的な問題は変わっておらず、市場のパイの縮小も否めない。このため、7月に「2021中期経営計画」を策定し、既存分野の強化、新規事業の創出などに取り組む。

  ――上半期の業績はいかがですか。

 前年度まで3期連続の減収でした。前年度は事業収支も最終は黒字でしたが、厳しい状況にありました。国内は前年同期比1%の増収ながら、海外が円高で事業収入減となったためです。顧客数や試験受付数は内外とも増加しており、中身的には健闘したと言えます。

 今年度は事業収入のプラスが重要です。国内で前年比1・1%増、海外で2・1%増、合わせて1・4%増の計画です。国内は4~9月期で1・6%増、海外は4~8月期で8・6%増と計画を上回った。円高が一服したことと、営業力の強化で試験依頼が増加したなどが要因です。

  ――地域的には。

 東京、大阪が堅調で、北陸(福井市)や西部(広島県福山市)が好調です。東海と京都が少し厳しいですね。海外は総じて好調です。中国の大連は前年並みですが、他はかなり伸びています。計画達成に向けて勢いを保っている状況です。

  ――下半期(17年10月~2018年3月)の課題は。

 アパレル業界全般に構造的な厳しい問題が続いています。消費動向や為替の行方、北朝鮮情勢や解散衆院選挙の結果にも影響されます。中国の環境問題が近い将来、顧客やわれわれのビジネスにどう影響するのかも注視しています。

 下半期だけの特殊問題だけでなく、産業全体の構造問題、人口の減少による全体のパイの縮小も否めません。このため、7月に「2021中期経営計画」(5カ年)を策定しました。

  ――どのような内容ですか。

 環境情勢の変化で人口の減少は財の必要量を減らし、質、量、価格に対する消費者の目は厳しくなります。商品・サービスの需要の減少が広範化する。その中でわれわれはどう生き残るかということですが、抜本的な改革も必要ですが、当面は改善・改革を積み重ねていくことです。

 カケンの独自性は総合的な試験サービスの提供だけではありません。付加価値の高い情報サービスも提供する情報企業を目指しています。情報に敏感で、それを考えることができる。何よりそうした人材育成が重要です。新中計でも人材育成は柱の一つです。

 営業、マネジメントなどの研修も外部のコンサルティング会社に頼るのではなく、自分たちで教本を作り、教えていく。一般論ではなく、カケンの中で経験したことを反省し、そこから課題を見出す。教本は年度内に完成する予定です。

 既存分野での競争に勝ち抜くことだけでなく、新しい試験需要を開拓するような研究事業も進めます。ジネテック社との繊維製品取扱い記号に関する知的財産使用許諾契約も新規開拓の一つです。競争者のいない分野や、追随されても先行者としてリードできる分野に取り組みます。監査やコンサルティングといったサービスも含まれるでしょう。

  ――既存分野の試験でいうと。

 毎年七つほどテーマを設けています。吸湿発熱や速乾性などの分野で先行していますが、このほど重量法による物質の吸放湿特性を自動的に測定する装置「CTC+」を開発しました。幅広い温湿度域の環境を安定・高精度に実現可能なチャンバーを備えており、電子天秤で水分含有量を経時測定できます。試験受託を開始しました。

  ――ジネテックス社との契約はその後。

 スポーツアパレルが加わり3社となりました。商標権成立国にベトナム、モロッコ、キュプロスが加わりました。5月に英国の英国ファッション・繊維協会(UKFT)を訪問しました。ジネテックス社は英国に繊維製品取扱い機能の五つの基本記号の商標出願をしておらず、日本と共通の立場にあります。日本ではジネテックス社が商標出願するのではないかと心配する向きもありますが、UKFTは既に広範囲で使用された商標は登録できないという判例が確立されており、心配なしとの見方でした。

 UKFTの話では英国の繊維産業の従業員数が1970年から80年にかけて80万人まで減少しましたが、現在は130万人に増加しているようです。これは「どこで製造しているか」が重要となり、小スケール・高品質の製品が嗜好されるようになり、英国内生産の優位性が高まったからという説明でした。日本も同じ道を歩むようになればいいのですが。

〈25年前のあなたに一言/トウ南巡講和の中で勉強〉

 「25年前は日中経済協会の北京事務所長として、北京に赴任していた」と長尾さん。トウ小平が1992年1~2月に武漢、上海、珠海などを視察し、南巡講和を発表し、改革開放路線が巻き返す時代である。ソ連や東欧の崩壊を見て、社会主義市場経済が進む。街には建設のクレーンが林立していく。政府の部長級の人にその発展ぶりの感想を述べると、「こういうのを点と線の経済といいます」と答えた。発展したところを道路で結んだだけという意味だ。「発展してますよね、といった相づちは打たず、実に率直な発言だった」と振り返る。中国の環境対策「グリーンエイドプラン」の仕事の経験も「勉強になった」。

〔略歴〕

 ながお・うめたろう 1974年4月通商産業省(現・経済産業省)入省。92年6月日中経済協会北京事務所長、2001年8月環境事業団理事、2007年7月東京工業品取引所専務理事に就任。12年6月からカケンテストセンター理事長。