明日へ これが我が社の生きる道 織布編(36)

2017年12月05日(火曜日)

麻の播州織に夢託す

 「まだ“端っこ”をかじった程度。取り組むほど麻という繊維の“良さ”が分かり、奥が深い」と播州織産地でリネンによる生地、製品ブランド「ASABAN(麻播)」を展開する門脇織物の門脇正侚社長(71)は言う。

 間もなく創業100年の同社は綿先染め織物を産元商社向けの賃織りで手掛けてきた。設備は2重ビーム織機が大半で、技術力にも定評があったが、「来るのは昔から手のかかる特殊な要望ばかり」と振り返って苦笑いする。

 冒頭の言葉通り、麻の取り組みはまだ新しい。約10年前、レストランからのリネンのグラス拭き製作依頼をきっかけに「麻に魅了された」。短納期対応に不向きな低速レピア織機が空き始めた頃と重なり、経糸リネンの生地開発に腰を据えて打ち込んだ。

 麻播の立ち上げは2012年。「播州織総合素材展」で、自社生地を近隣で縫製した各種衣料製品を中心に初披露した。程なく本社工場近くにアンテナショップも開設。以来、北は北海道から南は宮古島まで現在も全国で精力的に個展や催事出店も続け、藍染め作家や津軽三味線の師範とのコラボ商品や神戸のホテルのウエディングドレスへの採用など、取り組みの幅も次第に広がっている。

 商品開発は綿やシルクとの混紡・交織も含めたリネン地や衣料製品に限らない。ストールのほか浴用タオル、靴の中敷き、靴下メーカーで委託生産するニットのアームグローブまで多岐にわたる。自ら製品まで手掛けると、「吸放湿性、抗菌防臭性など麻本来の機能性とその可能性にその都度気付かされる日々」だという。

 「歴史や技術では麻産地・湖東にはかなわない」が、綿にタック織りでリネンを挿入した浴用タオルや、経・緯双方で綿・リネン100%糸交織したダブルフェースのガーゼなど「綿との複合はこの産地ならでは」と、今後も麻で播州織の可能性を追求する。

 ここに来て、産元からも麻100%品の依頼がちらほら入るなど「武器になってきた」。欧州展に出展する生地ブランドから大麻布製織の依頼もあった。自社品では目下、好評の草木染めや藍染めストールを起点にガーゼ組織を進化させた衣料向けの粗目生地の開発にも取り組む。

 「やりたいことはたくさんあるが、今は手も金も回らない」と門脇社長はまたも苦笑。それでも、工場近くの畑で原料の亜麻を栽培し、オリジナルの綿・リネン混紡糸を作るプロジェクトも進める。この過程で、亜麻仁入りのケーキや雑貨、裏作で栽培する酒米で作った日本酒など繊維に限らない派生商品も生まれた。いつか「日本産リネン糸で先染め麻織物を」という大きな夢を温めながら、前を向いて進む。

門脇織物

社名:門脇織物株式会社

本社:兵庫県多可郡多可町

   八千代区中野間839

代表者:門脇 正侚

電話番号:0795・37・0011

URL:asaban.jp/

主要設備:津田駒工業製低速レピア織機10台(筬(おさ)幅は全て150cm、2重ビーム仕様)、同エアージェット(AJ)織機10台(筬幅190cm、うち5台が2重ビーム仕様)。全台がドビー搭載。綜絖(そうこう)枠枚数はAJ5台が16枚、その他は全て8枚。

従業員:3人