メーカー別 繊維ニュース

2018新年号 トップが語る今年の展望(5)/2018年新春アンケート調査報告

2018年01月05日(Fri曜日) 午後2時17分

〈海外生産・調達/ベトナムの首位続く/中国回帰現象に変化〉

 「繊維品の海外での生産、もしくは海外からの調達を拡大するか」との問いに73%が「する」と回答した。このウエートは、前回(70%)、前々回(73%)とほぼ同水準だ。海外生産、海外調達を拡大する動きは、依然として続いている。

 ただ、「拡大しない」と回答した企業の中に、これまで海外生産・調達に力を入れてきた大手繊維専門商社、OEM商社、百貨店アパレル、紳士服チェーンが少数ながらも存在する。国内回帰なのか、海外比率が限界まで高まった結果なのか、気になるところだ。

 海外生産・調達を拡大すると回答した企業に、重視する国を複数回答で聞いたところ、最も回答数が多かったのは、これまで同様ベトナムだった。本紙がこのアンケートを開始した4年前以降、5年連続でベトナムは首位の座を維持している。ベトナムを選ぶ理由としては、「インフラ、人件費、税金などバランス良くやりやすい」(素材メーカー)、「政情、国民性などあらゆる面でカントリーリスクが低く、国として繊維産業に力を入れている」(同)、「政治の安定、工賃などの要素から」(商社)、「いずれの要素も安定している」(同)、「ベトナムは日本に近く人間性も良い」(同)などが挙がる。

 ベトナムが不動の1位となっているのとは対照的に、変化が激しいのが中国。4年前と3年前に4位だったが、2年前に5位へ後退。ところが前回は2位へ急浮上。しかし今回は3位に後退した。中国が前回急浮上したのは、東南アジアシフトを急いだ結果、納期遅れなどのトラブルが多発。中国回帰が必要になったためだとみられる。

 中国回帰現象は現在も続いている。「ASEANのコストが上昇する一方で、中国では“余りキャパ”が出始めており、ロジスティック・品質の安定性などから中国回帰する」(アパレル)、「ベトナム、インドネシア以外のASEANからの揺り戻しもあり中国が拡大すると思われる」(同)といった指摘が、中国を重視すると回答した企業から出た。

 一方、重視する国から中国を外した企業からは、「中国生産については、人件費の上昇からさらに価格面で厳しくなることが予想され、東南アジアへのさらなるシフトが進むと思われる」(素材メーカー)、「拠点がある国のうち、中国は調達より販売を重視しており、ASEANのベトナム、インドネシアでの調達を考えている」(素材メーカー)、「中国またはベトナム資本によるASEAN3カ国での紡績・染色が本格化し、繊維インフラ投資が一定規模化することから、AJCEPを活用した編み立て・縫製が加速する。副資材などの現地調達比率も高まる」(アパレル)との指摘が出る。中国の人件費上昇と、ASEANでの素材生産の強化が、チャイナ・ブラスワンの流れを加速するとみているわけだ。

 中国を重視する企業としない企業が混在する背景には、「小ロット対応で中国回帰の傾向が見られる一方、染色事業などは中国の環境規制の影響で中国からASEANのシフトが見られる」(商社)ことがあるだろう。中国の環境規制厳格化は全土に及んでおり、染色を中心に、織布、縫製でも、中小・零細工場の淘汰が進んでいる。この影響が今度どう出るかを注視しておく必要がある。

 中国に代わって、前回の3位から2位に浮上したのはインドネシアだ。「繊維産業のあらゆる工程がバランス良く成長している」(素材メーカー)、「比較的人件費が低く、生産性もそこそこある」(アパレル)というのが、重視する理由だ。

 前回に続いてミャンマーが4位、バングラデシュが5位の座を守った。「人件費などのコストアップから中国、インドネシアに代わる生産拠点として両国の重要性が益々上がると思われる」(素材メーカー)、「特恵免税対象国であり、コストメリットがある」(商社)とみているからだ。ミャンマーについては、「原料の調達がポイントであり、ベトナム、また中国、韓国、タイなどからの輸入調達も含めてミャンマーといった国に期待したい」(商社)との指摘もあった。

 以上の国以外については、国名を記入してもらう形で回答を募った。タイ、インド、カンボジア、韓国、台湾を重視するとの指摘があった。

〈中国生産・調達/現状維持が大勢/一部で「中国回帰」?〉

 海外生産・調達を拡大する先としてはベトナムが脚光を浴びるが、中国が最大の生産・調達先であることには変わりない。その中国での生産・調達を今後どうするかを問うたところ、これまで同様「現状維持」との回答が最も多く、59%を占めた。縮小するとの回答は年々減少し、今回は23%だった。分野別に見ると、現状維持派のウエートが最も高いのは川上で川上企業の71%を占める。

 一方、川下企業の現状維持派は57%にとどまりで、縮小派は33%と川上、川中よりも多い。

 現状維持の理由としては、「品種、価格、ロットでの中国とASEAN諸国との生産のすみ分けがほぼ完了したため」(素材メーカー)、「中国でのコスト上昇や環境問題などのリスクを考えると、中国現地生産の積極的な拡大には慎重にならざるを得ない」(同)、「日本、中国以外の国では一貫生産が難しい」(商社)、「人件費などが高くなったとしても物流費や時間を考えると日本が主な販売拠点である限り、中国、ベトナム以外でのコストメリットは低い」(アパレル)などが挙がる。

 チャイナ・プラスワンへの移行が一段落しつつあることもあってか、「縮小する」との回答は年々減少し、今回は23%とどまった。縮小すると回答した理由としては、「中国の企業自体が海外へ生産を移している」(商社)、「日本製へシフト中である」(アパレル)などの指摘があった。

 興味深いのは、拡大するとの回答が17%あること。このウエートは、これまでの10%からむしろ高まっている。「中国回帰」を裏付けているのかもしれない。拡大する理由として商社からは、「小ロット対応、加えて、原料調達においては中国を重要視している」「廉価品から、ある程度付加価値の高い商品へと調達内容を変化させていく。圧倒的かつ多様な原料を調達できる背景を有しているのは世界を見渡しても中国しかない」といった見方が出た。アパレルの間にも、「戦略として中国生産の拡大はないが、日本産業の縮小から拡大していくと思われる。また、自社輸入として直接商売できる可能性が高く、素材調達から一貫で行える環境にメリットを感じる」とする指摘がある。

〈オピニオン/帝人フロンティア 社長 日光 信二 氏/独自のサプライチェーンを提供〉

  ――2018年の海外戦略のポイントは。

 現在の衣料品市場を見ると、国内は厳しいながらも総需要は減っていませんし、海外は需要自体が拡大している。このため海外生産・販売の拡大が基本となります。当社の場合、2010年から進めてきた構造改革が18年上半期で完了し、国内の生産基盤がタイに移管されることになる。今後、国内は研究開発の基盤とし、海外で量産する体制となります。

  ――海外生産の高度化も進むと。

 生地生産では中国の南通帝人で高付加価値化や生産性向上のための投資を進めていますし、タイ・ナムシリ・インターテックスも高機能品生産のための設備投資を行います。インドネシアでは協力工場への技術指導もしている。原糸・原綿はタイで帝人フロンティア・タイ・イノベーション研究室〈タイランド〉を18年1月に開設し、タイ国立科学技術開発庁(NSTDA)と提携しました。この成果をテイジン・ポリエステル〈タイランド〉やテイジン〈タイランド〉で取り込み、人材育成やタイ発信の素材開発を進めることになります。インドネシアや台湾でOEMによる原糸・原綿生産も増えています。

 縫製も機能アパレルを得意とする点を生かし、欧米スポーツアパレルなどへの供給を増やします。中国生産と東南アジア生産の比率も安定する小康状態。やはり愚直に海外でのモノ作りを行うことで、独自のサプライチェーンを提供することが重要になるのです。

〈海外販売/最も重視する国は中国/米欧への期待も依然高い〉

 「海外販売を拡大するか」との問いには、85%が「する」と回答した。これまで同様80%台の高い比率で海外販売志向があることになる。「人口が減少する国内にしがみついていては、繊維事業の将来はない。日本の匠の技術を生かして、購買力の高い国、発展していく国で売り上げを確保していく」(商社)という考え方は、内需依存型の一部の分野を除くと、完全に浸透したと言えるだろう。

 海外販売を拡大する場合に重視する国はどこかを複数回答可で聞いたところ、最も多かったのは中国で、68%が同国を支持した。本調査を開始して以降、中国は毎回トップだ。「中国景気はしばらく減速が続くが、一定の底堅さを保つ。本物志向の増加と中国アパレルの成熟が期待できる。マーケット規模にも大いに期待している」(素材メーカー)、「中国はGDPも高く中高級品の市場に成長。今後は現地での開発に力を入れ、内販を拡大する」(同)、「当社保有ブランドがターゲットとする富裕層の人口が多く、引続き増加が見込める」(商社)、「市場として日本より大きく、成長している」(同)、「まだ伸びる余地があり、物理的な距離が近い中国をまず重視する」(商社)、「ネット販売のインフラが整備されており富裕層も多い」(アパレル)といった理由で、中国に耳目が集まっている。

 中国に次いで重視されているのが米国。同国は毎回2位で、今回は46%だった。今月17、18の両日、日本貿易振興機構(ジェトロ)が米ニューヨークで初の単独テキスタイル展、「ジャパン・テキスタイル・サロン・イン・NYC」を開催し、22社の生地を紹介する。このような試みは、米国に注目する企業をさらに増やすことにつながるだろう。

 米国に続く3位は前回同様欧州連合(EU)。支持率が45%へ上昇し米国にほぼ並んだ。米欧を重視する素材メーカーは、「(中国同様に欧米は)価値を提供する当社のプレミアムテキスタイルに適した市場である」と期待する。「ウール製品なので東南アジアは難しい」(素材メーカー)といった、消去法的支持理由もある。

 アパレルからは、「(欧米には)国内よりも大きいマーケットが存在しており、また海外のハイブランドはいまだ国内ブランドへの影響力が大きいので、波及効果を期待できる」「ITによる流通革命で出店等のコストが必要なくなったことと、当社の商品と市場の相性が良い」などの指摘が出た。

 今回選択肢として用意したのは、中国、米国、EUに、タイ、インドネシア、ベトナムを加えた6カ国・地域。大手企業を中心に、これら全てを重視するとする回答も目立った。大手素材メーカーは、「東南アジア・中国では当社顧客である衛材メーカーなど日系企業の現地進出・拡大に合せて今後も成長拡大が期待できる。加えて、高級裏地の欧州向け、カーインテリア用人工皮革の欧州・北米向け、民族衣装素材のインド向けの拡大が期待できる」とする。

 別の大手素材メーカーは、「各国の経済成長に伴い、当社の展開する高付加価値素材を使用した高機能繊維製品や高級アパレル品などの需要が高まってくる。また、産業用途でも、自動車向けの需要拡大など、底堅く推移していくと想定している」という。

 ベトナムを除く5カ国とインドを重視するという素材メーカーは、「先進国では炭素繊維、アラミド繊維などの需要が拡大基調にあり、適時投資を行い増産を進めていく。これらの繊維は、自動車、航空機向けといった高度な産業で使用されるケースが多いため、依然として先進国での消費が多い。買収した米国企業の業績拡大も寄与すると思われる。一方で、高機能繊維複合材料は、海外での加工・組み立ても拡大し、グローバルで市場が拡大すると思われる」とする。

 選択肢以外の国については記入方式で回答してもらった。前回同様、韓国、インドなどが挙がった。