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特集 紡毛・獣毛素材/企画力問われる18秋冬復活への期待感高まる

2018年02月23日(Fri曜日) 午前11時31分

 紡毛織物は16秋冬シーズン以降、需要の落ち込みなど厳しい局面が続いていたが、17秋冬シーズンは寒波により店頭の売れ行きがよく、製品在庫もはけたこともあり、18秋冬向けの立ち上がりは順調とされる。復活への期待感が高まる中で、紡毛織物や獣毛素材を手掛ける有力企業の戦略を探る。

 フラノ、メルトン、ツイードなどの紡毛織物は10~50ミリと繊維長が短い羊毛による紡毛糸を使った織物で、毛羽があり柔らかく、保温性に富む。その紡毛織物は紡績から織布、染色整理加工まで日本国内でそろう。ファッション性が非常に高い素材でもあるが、その分変動も激しい。15秋冬シーズンをピークに紡毛織物は苦戦が続いている。

 日本毛整理協会がまとめた加盟会社の2017年加工数量は織物が前年比8・3%減の4327万平方メートルだった。この内、梳毛織物は11・3%減の2384万平方メートル、紡毛織物は7・4%減の863万平方メートルだった。

 しかし、寒波の影響もあり、17秋冬シーズンは店頭販売が良く、製品在庫がはけたこともあって、18秋冬シーズン向けた生地需要の回復に期待感は高まっている。一方で「今までの紡毛織物では元に戻すことは難しい」との指摘もある。

 その面では紡毛織物の復活に向けて、各社の商品企画力が問われているとも言える。

〈最高品質の新素材投入/大津毛織〉

 大津毛織(大阪府泉大津市)は細番手の紡毛糸を強みに最高品質のテキスタイルを供給する。

 このほど開発した新素材は軽量紡毛織物「エアーファブ」の付加価値をさらに高めたもの。カシミヤ100%の生地に透湿防水膜をボンディングした。撥水(はっすい)性だけでなく防風機能もある。見た目の感性の高さと上質な風合いに加え軽くて暖かい。経糸、緯糸ともに16番手双糸。

 高級アパレル向けにスーリアルパカ69%・ウール31%混のシャギー調織物も新たに開発した。同じくボンディングによって防風機能を付けた。

 より幅広い価格帯に応じられる素材としてウール・綿・ナイロン混の新素材「コットンジロンラム」も投入する。

 布帛、ニットの両方に対応しセーター、パンツ、靴下など幅広い用途に対応。混率は綿50%・ウール30%・ナイロン20%。綿混で風合いが良く、抗ピリング性もあり、ナイロン混で強度にも優れる。糸、生地の両方で販売する。わた染めで20色展開。

 今年3月に両面ジャカード機能付きの丸編み機4台を新たに導入し、織物に加えニットも自社生産できるようにする。

〈アクリル混紡毛糸の開発/東洋紡糸工業〉

 カシミヤ糸の東洋紡糸工業(大阪府忠岡町)は、18秋冬に向けて新たにアクリル混紡毛糸の販売を始める。

 混率はアクリル60%・ナイロン21%・ウール15%・カシミヤ4%。獣毛100%素材に比べ強度があり、幅広い価格帯に応じられるのが強み。独自の技術によるふっくらとした質感や軽さも特徴。

 得意とする獣毛原料主体の糸ではウール90%・ベビーカシミヤ5%・ブルーフォックス5%混の最高級素材も新たに投入する。

 新素材の充実とともに産地へのアピールも強める。産地への単独展を増やして、素材の認知度を高める。

 昨年秋ごろから新潟、山形、福島、群馬などで個展を開き、来期での受注増を狙う。

 販売戦略としてこれまでよりも「ホールガーメント」横編み機に使える糸の生産体制を強化する。機械を製造する島精機製作所と情報を共有し、ホールガーメント機の販売との相乗効果を狙う。糸でなく、原料で在庫し、糸の過剰在庫の抑制、QRを強める。

〈原料から要望に応える/大和紡績〉

 紡毛紡績の大和紡績(愛知県一宮市)は、原料からリスクを張った提案型の経営を推し進める。生産品目は反毛品とバージン品でそれぞれ5割。自社生産に加え、外注の紡績工場を活用しながら高品質な糸を製造するが、人手不足などから納期対応が厳しい。

 豪州のウール原料から英国羊毛まで30種類の厳選した原料を備蓄。それぞれ顧客ニーズに合ったさまざまな糸を提案する。一部、糸のリスクもする。生産比率は自社工場6割、外注工場4割で、年間生産量700トンほど。自社にはカード機3台、ミュール精紡機5台(約3千錘)を保有する。

 同社の外注は4社あるが、いずれも高齢化が著しく進んでいる。70~80代も多く、生産に支障をきたしており、そのため納期も合わず、紡績の依頼を断ることも増えているという。「生産スペースは空いていても、それを動かす人がいない」(保浦祥克社長)

 反毛紡績糸は色の再現性が難しいとされるが、同社の再現性の高さには定評がある。

〈極細モヘア糸を提案/アルゴ・インターナショナル〉

 希少羊毛や特殊獣毛を販売するアルゴ・インターナショナル(愛知県春日井市)は、20マイクロメートル弱という極細モヘア糸の提案に力を入れている。

 極細モヘアは同社が独占販売権を得ている豪州のフェレイラ牧場で生産する。牧場主のG・T・フェレイラ氏が長年の品質改良を行い、極細モヘアの生産が可能になった。毛刈りの段階で16~18マイクロメートルのモヘアが採取でき、糸にすると20マイクロメートル弱になるという。小倉世暉社長は「世界一の細さ」と自信をのぞかせ、糸に加えて、原料での販売も狙う。

 スポーツウエアを中心にウール使いの衣料品がトレンドにあることから、ウール特有の吸湿性や保温性など機能訴求も図る。その一環として、ウールを中綿用に加工した「ラバラン」を提案する。耐久性やウオッシャブル性などに優れ、エコな素材として展開。ラバランを製造するドイツのウール加工メーカー、バウアーフィリストッフェから日本の販売代理権を取得した。

 同社は世界にネットワークを張り巡らし、希少で高品質な原料を供給する。

〈原料からこだわりの生地/中伝毛織〉

 婦人服地製造大手の中伝毛織(愛知県一宮市)は、18秋冬向けで、原料からこだわった生地を提案する。モンゴル産のカシミヤやベビーキャメル、ヤクに加え、豪州の特定牧場から買い付けたウールなどを訴求する。

 モンゴルで産出されるカシミヤは、中国産と比べると、より長く、強く、耐久性があるため、高品質な製品を作ることができるという。外モンゴルの遊牧民から直接買い付け、トレーサビリティーも確立した。ベビーキャメルやヤクなどもそろえ、そのままの毛色を生かした生地をそろえた。

 ウールは白度が高く、クリンプ性がある豪州産を使用。特定の牧場から、ラムだけを買い付け、厳選した良質な原料で生地に仕上げる。

 原料から織布まで一貫して手掛けるのが同社の強み。ドルニエのレピア織機のほか、エアジェット織機、丸編み機、コンピューター横編み機などを保有する。自社生産比率は90%で、繁忙期のみ外注の織布工場で製造することもある。生産品は梳毛、紡毛50%ずつで、それぞれ良質な生地をアピールする。

〈合繊複合など強み/鈴憲毛織〉

 鈴憲毛織(愛知県一宮市)はウール素材の約80%を紡毛織物で占める。中でもポリエステルなど合繊長繊維との複合品の企画生産力に強みがある。

 豪州ジーロン地方産の子羊の毛であるジーロンウールを使った紡毛織物が主力だが、そのジーロンなどの紡毛織物に合繊長繊維を組み合わせた2重織りは18秋冬向けでも「引き合いは活発」(藤澤亨社長)。

 例えば裏側に紡毛織物、表側にはポリエステル長繊維によるチェック生地を配した2重織りは表、裏で全く異なる風合いを持つ。その他、梳毛・紡毛・ポリエステル長繊維の3者混、表側はツイード、裏側にアクリルレーヨン混糸使いの織物を配した保温機能素材など多彩な複合品をそろえる。

 17秋冬は店頭販売が好調だったこともあり、紡毛織物への引き合いは活発で、藤澤社長は「18秋冬向け販売では16秋冬並みには戻す」考えを示す。そのために「消費者に分かりやすい企画を打ち出す」とともに、できるだけ需要家と一緒に「アパレルなど一歩前に出て」発信力を高める。

〈原料からのストーリー性/イチテキ〉

 紳士服地製造卸のイチテキ(愛知県一宮市)は、軽さをテーマにメンズジャケット地としてロイヤルベビーアルパカ100%の梳毛糸を使った織物などを提案する。細い糸を使うことで軽さを出すとともに、原料からこだわったストーリー性を前面に打ち出す。

 アルパカ使いの織物は18・5ミクロンという細さの原毛だけを集めて紡績した梳毛糸を使う。織物の表面には微起毛加工を施した。

 スーパー120のウール100%の織物もジャケット地で提案。ビーバー加工を施し、光沢感やしなやかさ、軽さが特徴だ。さらに、アンゴラと混紡したコート地もそろえた。アンゴラは毛が中空で、より軽さを表現した。

 ボリュームゾーンでは、ウールと合繊との複合素材も訴求。ポリエステルやナイロンなどを使い、交織や混紡で展開する。また、世界的にエコやリサイクルの機運が高まっているため、反毛の打ち出しも見直す。原料がどのように循環しているかなどをうたえるようにし、欧州や中国に対してアピールする。

〈高級獣毛打ち出す/早善織物〉

 婦人向け毛織物製造の早善織物(愛知県一宮市)は、スーリーアルパカやカンデブーモヘアを中心に、ポッサム、キャメル、シルバーフォックス、カシミヤなど高級獣毛を使った生地の提案に力を入れている。

 希少価値の高いスーリーアルパカは光沢感やハリコシに優れる。同社が扱うアルパカはスーリー種だけに限定しており、毛足の長いシャギー調やチェック柄の織物などを訴求する。南アフリカで産出されるカンデブーモヘアも希少性が高く、極細で光沢感が特徴。昨年10月に中国で開かれた展示会「インターテキスタイル上海」では、ともに人気が集まったという。

 豪州などに生息する樹上動物、ポッサムの毛を用いた生地は20年以上手掛ける。独自の原毛入手ルートが確立しているため、婦人向けで使用しているのは同社のみという。カシミヤの半分ほどの比重で軽さやソフトさがある。

 さまざまな高級獣毛の生地を手掛ける同社だが、獣毛の中でも最高級品とされるジャコウウシの産毛、キヴィアックを用いた生地も扱う。

〈高級ゾーン狙う/山栄毛織〉

 紳士服地製造の山栄毛織(愛知県津島市)は、高級ゾーンを狙った生地の提案に力を入れる。さらに、顧客のニーズをより反映させた差別化した商品作りにも取り組む。

 カシミヤ100%使いのほか、最高級品とされるイタチ科の動物テンのセーブル混やミンク混などをそろえる。山田和弘社長は「当社の原点に立ち返ったラグジュアリーな織物をアピールする」と語る。

 カシミヤ80%・ミンク20%の混紡糸使いの織物は軽さを追求し、レディース向けにも訴求する。メルトンタイプで極厚に仕上げたカシミヤ100%の織物は、他にはない肉厚さが特徴。5㍉ほどで、コート地として訴求する。

 差別化の対応では、同社、顧客企業、紡績企業が共同で生地を作り上げる。カラーや柄などに加え、仕上げ、風合などを、原料から糸、織物までの細かいニーズに対応する。

 同社はレピア織機、シャトル織機を保有し、紳士向けをメインに、ウールをはじめとした天然繊維にこだわった織物を製造する。生産品の比率は梳毛が75%、紡毛が25%。

〈受注好調、50%増ねらう/日本エース〉

 日本エース(愛知県一宮市)は18秋冬向け紡毛織物の販売量で前年比50%増を見込む。中でも2重織りによるリバーシブル素材は倍増を目指す。

 18秋冬のウール素材販売量の中で、紡毛織物は約50%を占めるまで成長し「この5年間で最高の水準。直近の紡毛ブームを上回る」(小島幹人社長)という好調ぶりを見せる。17秋冬シーズンが寒気の影響で、店頭での販売が好調だったこともあり、18秋冬向けはセレクト系を中心にして、前年よりも早めに発注が入った。

 加工コスト上昇による影響は懸念されるものの、受注量は前年よりも多く、スペースの確保に苦慮している状態と言う。

 同社の強みは糸を構える点。これによって価格、品質、納期を含めた対応力による「顧客満足度の高さ」と誇る。それが当然、紡毛織物にも生きており、需要家の安心感になっていると分析する。

 18秋冬シーズンでは廉価品から高級品まで幅広くラインアップするが、特に2重織りなど高目付品による高価格品への引き合いが強い。

〈手間掛けるシャルム加工/ソトー〉

 ソトーの獣毛混はじめ紡毛織物加工と言えば、最高級起毛「シャルム加工」になる。20年近い歴史があり、百貨店・専門店アパレルに加え昨今はセレクト系からも指定が入るほど。8~10回も加工を施す「手間暇を掛けた」高品質が評価される。

 シャルム加工は高密度の起毛加工で、柔らかさ、ドレープ性、膨らみ感はもちろん、毛羽長がそろい、毛羽のセット性に優れているため、着用時などの毛乱れが少ない。このため、同加工を施した縫製品は長く着用できる特徴があり、こうしたモノ作りは同社ならではとも言える。このシャルム加工をベースにハードセットを付け加えメンズジャケットなど向けに展開する「パーマネントシャルム」や、ミルドやケミカル加工も付与し独特のソフト感と軽さを表現する「ビオミールシャルム」もラインアップする。

 シャルム加工シリーズを主力とする獣毛混などによる紡毛織物の加工は17秋冬シーズン向けで後半から荷動きが活発化。18秋冬シーズンは「前年よりも若干多いペースで生機入荷が始まった」と回復に期待する。

〈合併に伴い工場集約/藤井整絨〉

 染色整理加工の藤井整絨(愛知県一宮市)は、匠整理(同市)との合併に伴う工場集約化に取り組む。合併による納期遅れや品質の低下が起こらないように対策も講じる。

 現状は旧匠整理との2工場体制だが、年内には藤井整絨に設備を移転し1工場にする。匠整理が保有していた設備は全て藤井整絨に移設。大型設備としては、洗い加工機や縮絨(しゅくじゅう)機、乾燥機を3月までに移設、稼働する。

 納期や品質への対策としては、加工はこれまでと同じ設備を使い、同じ人員を配置する。さらに、合併により社員は約100人となったため、「人材を有効に活用して対応する」(藤井光輝社長)。

 元々、藤井整絨はウールの起毛加工、匠整理はリサイクルウールの加工がそれぞれ得意だった。合併したことで、加工範囲が広がったため、今後は顧客にさまざまな加工を提案する。高級向けの起毛加工も開発する。

 合併は1月1日付。決算月は6月に変更。初年度は移設費用がかかるが、営業利益は黒字を見込む。