繊維街道 私の道中記/鈴木靴下 社長 鈴木 和夫 氏 (3)

2018年02月28日(水曜日)

長年のアイデアを形に

  鈴木が改めて、次なる自社商品開発に挑んだのは2003年。米ぬかの美肌効果を靴下に生かすという20年近く温めたアイデアを形にすべく取り組んだ。

 着想は入社すぐの頃からありました。実家は1㌶の田でコメを作る兼業農家で、ぬか袋で床を磨くのは子供時代からおなじみの光景です。ぬかを触る母親の手がいつも奇麗だったのも印象的でした。

 糸商に掛け合っても、取り合ってもらえません。自分で形にするしかないと、靴下をぬかと一緒に鍋で煮込んでみました。乾燥するとぬかが粉になり、パラパラと落ちます。もう少し実験しようと、漬物の素の製造工場を営む親戚から大量にぬかを買い込み、細粒化してみました。パウダー化費用は原料費の100倍。それでもうまく付着しません。

 ゴルフソックス開発時も今回も、商品開発に打ち込めたのは主力のサッカーソックスを現場に任せておけたことが大きい。ただ、研究の時間は仕事が終わってから。本業を疎かにしたことは一度もないはずです。

  転機は04年。奈良先端科学技術大学院大学を見学する機会を得て研究テーマをぶつけると、米・米ぬか研究の第一人者、和歌山県工業技術センターの谷口久次氏を紹介された。

 発想の面白さを認めてもらい、主要成分γ―オリザノールの効能とともに、自分でもできる成分抽出法を教わりました。

 後加工で抽出成分を付着させた靴下の試作品を作り、知り合いにひたすら配りました。試作品には手作りアンケートも付けて、ひと月ほど着用した後の肌への効果を検証するモニターをお願いしました。「足裏のつやが良くなった」「足がスベスベする」というものから、「洗濯すると効果が薄れる」などさまざまな感想が集まりました。集めたアンケート回答は、今も大事に全部残しています。

  結果に自信を得た鈴木は、谷口氏の紹介を受け、米油製造最大手の築野食品工業(和歌山県かつらぎ町)の協力で成分抽出に本腰を入れる。成分を練り込んだレーヨンのOEMはオーミケンシに依頼することになった。

 キロ単位で糸を買ってきた人間にとって、トンが当たり前の紡糸ロットには当初面食らいました。今度の開発品は原料で、特殊形状の単一商品と違い、靴下だけでなく他アイテムや、糸や生地の販売もいずれできると思いました。

 最初に技術部長に相談できたのも幸運でした。技術面から面白いと二つ返事をもらいましたが、営業部門の人なら「何トン作って、どこに売りましょう」と二の足を踏まれたかもしれません。

  06年に完成した独自繊維は鈴木靴下の頭文字から「米ぬか繊維SK」と命名。その靴下を「歩くぬか袋」として発売した。

 同じ成分が化粧品原料にも用いられますが、含有量は、米ぬか繊維SKの方がおそらく高く、機能性には自信がありました。ただ、当社はOEMメーカーで商品販売の経験はありません。営業も手探りでしたが、もう一つ心を砕いたのは、肌トラブルなどを起こさない素材・成分の安全性。大メーカー以上に、万全の構えをしなければということでした。(文中敬称略)