繊維街道 私の道中記/鈴木靴下 社長 鈴木 和夫 氏 (5)

2018年03月02日(金曜日)

もう“道楽”ではいられない

  鈴木の開発商品は今や、当初の“道楽”の域を遥かに超えて、鈴木靴下の“顔”というべき存在になっている。

 最近では米ぬか繊維SKをベースに、柔らかい肌触りを追求したブークレ糸の「クロム」を開発しました。これを用いた靴下は、当社も参加する奈良県靴下工業協同組合の産地ブランド「ザ・ペア」を構成する一アイテムです。靴下以外でも「米ぬかお風呂ミトン」を開発し、カタログ通販から販売を始めました。ただ、米ぬかに固執しているわけではありません。今後はもっと、ニーズを先回りした“商品発想力”そのものがアピールポイントになるメーカーを目指したいと思っています。

  実際、米ぬか繊維と同時並行で進めた多数の開発が、一つずつ商品として花開きつつある。

 軽く保温性の高い合成繊維を使った携帯用ウオーマーや、特注の吸湿発熱繊維や特殊な編み組織を盛り込んだ四層構造で究極の暖かさにこだわった靴下も、並行して開発し、商品化しています。

 ウオーマーは日本産業皮膚衛生協会での臨床試験時に、検体を抑えるサポーターを提供したのが開発のきっかけです。

 四層構造靴下も米ぬかと全く別の文脈で、ゴルフ靴下開発時にヒントを得て、編み機の独自改造から取り組んだものです。依頼した機械メーカーにもこれが限度と、途中でさじを投げられ、引き取って1年半は生産できないまま機械とにらめっこ続き。ようやく生産が軌道に乗り、靴下求評展でも賞を頂きました。昨冬の発売以来、お陰さまで大好評ですが、他の編み機では作れないため、生産が追い付かず、お客さまをお待たせする状態がしばらく続きました。

  ただ、鈴木は、一人で遮二無二進める開発に限界も感じる。

 一人はあくまで一人です。感動を呼び、社会に新しいウォンツを提起する商品開発には、トップダウンだけでなく、現場からも提案が出て、社員一丸で腹の底から議論する環境の必要性を感じます。「社長の道楽」に始まる開発ではなく、「皆の想いが集結した商品開発」が、今後の鍵です。

 社内にも頼もしい新しい力が出てきました。軸になる開発商品が増えて、忙しくなったのを見かねた長女のみどりが、前職のキャビンアテンダントを辞めて入社してくれました。企画デザイン担当のスタッフも採用し、営業企画チームも発足させました。社内全体のモノ作りへの意識や技術レベルも次第に上がってきたと感じています。

  鈴木靴下もメーカーとして過渡期にある。

 これまで大変お世話になり、現在も当社のベースを支えているサッカーソックスOEMですが、忙しい入学シーズンとオフシーズンとの波が激しく、これだけでは操業安定が図れません。

 そうなると、もう一つの軸として自社商品により大きな期待がかかります。現在は20%弱の自社開発商品の構成比を、将来的にOEMと半々まで伸ばせるのが理想的です。

 見本帳にある素材と、最新鋭のコンピューター編み機で、どこでも誰でもいつでも同じ商品が作れてしまう時代です。最新鋭機が1台もない当社ではなおさら、今後も発想をとことん突き詰めた開発商品で愚直に勝負していくしかありません。(この項おわり、文中敬称略)