明日へ これが我が社の生きる道 織布編(55)

2018年03月06日(火曜日)

岡治織物 量産力と表現力を両立

 岡治織物は播州織産地随一の23台のジャカード織機を保有する。以前は平織り・ドビー機もあったが、15年ほど前にジャカード一本に転換し、同時に5台の広幅織機を導入した。「先染め織物産地でジャカード機業がこれだけの規模で設備更新を続けてきたケースは珍しいはず」と4代目の岡本一記代表(36)は言う。

 今や産地で十数軒となった貴重なジャカード織布スペース。同社の月産5万㍍近い生産能力には信頼も厚く、産地のほぼ全ての産元から受注する。「この量産力を背景に、海外品と真っ向勝負で仕事を取ってきてくれる産元もある」。今後は、「自社の提案力・発信力を高める一方で、産元との“ウィンウィン”の関係も強固にしていきたい」と言う。

 設備規模からしてベース数量の確保は最重要課題。「5~6台の切り盛りなら生地自販もいいが、20台超のスペースを切れ目なく回すにはやはり量が必要」という冷静な現状認識が陰にある。

 産元との関係は、「以前より互いの距離感が近くなり、機業から提案しやすくなった」と、従来のような一方通行ではないことを強調。「従業員10人足らずの当社に東京に毎日通う営業力はない。その意味で分業体制は欠かせない前提」と言う。提案にほれ込めば、フットワーク軽く動いてくれるのが産元。「自社企画生地の販売をメインにせずとも、そういう仕事の呼び込み方にも十分に可能性を感じる」。写真など画像データを精細なジャカード柄で表現する「写真織り」など、産元との二人三脚でヒットにつなげた例も少なくない。

 「自前のアイデアも含め、生地企画の糸口をよりスムーズに生産ラインに乗せ、形にできる」体制づくりを優先する。5年ほど前には、電子ジャカードだけでなく、紋紙作成も「機械がなくなる最後のタイミングで内製化」し、レスポンスの速さも磨いてきた。こんな柄が欲しいという要望に対して、「どんな生地でも、20分もあれば“ツラ”を見せられるのは何よりの強み」と胸を張る。

 もちろん生地や製品の自販に魅力を感じないわけではない。昨年には、西脇市の「ものづくり・あきない経営革新支援事業」への採択を機に、シルクやカシミヤ、「テンセル」を交織した綿ストールを開発し、「まだ技術や表現力をアピールする段階」とは言うものの、フリマアプリなどで製品販売も始めた。

 生地でも、柄デザインまで自前という余裕はないが、たたき台の織り見本を見て、デザイナーやアーティストが「この厚み、この柔らかさでここまでできるのか」と驚き、衣料に限らず雑貨などでも、モノ作りのアイデアを喚起するケースも少なくない。必ずしも、産元の量産ロットには乗らないこうした出会いに対しても、間口を広く対応していきたいという。

 「産地の将来を悲観する声もあるが、悲観だけでは時間の無駄。というよりそんな暇はない」と一記代表。量産力と表現力、一見矛盾する二つの強みを同時に磨くことに力を注ぐ。

岡治織物

社名:岡治織物合資会社

本社:兵庫県西脇市上比延町

   243-19

代表者:岡本 一記

電話:0795-22-4605

URL:okajiorimono.com

主要設備:ジャカード搭載高速レピア織機23台(岩間織機製作所製、ソメット製、石川製作所製、イテマウィービング製)、ジャカードは山田ジャカード製などのメカジャカード16台、ストーブリ製などの電子ジャカード7台。電子・紋紙とも社内に柄作成設備を保有

従業員:8人