メーカー別 繊維ニュース

特集 小学生服(1)/「制服で良かった」を追求する

2018年03月06日(Tue曜日) 午後4時18分

 小学校の一部で、服装の乱れへの対応や、私服に比べて経済的など、さまざまな理由から制服(標準服を含む)を採用する流れが広がりつつある。学生服メーカーはその流れをつかめるか。「制服で良かった」――消費者がそう思える、新しい商品開発やアプローチで市場開拓に取り組む。

〈必要性、感じる場面増える〉

 小学校は全国に2万95校(文科省「学校基本調査」確定値)あり、うち制服を採用する学校は10%強あるといわれる。私立のほとんどは採用しているとみられるが、公立はまだまだ採用が少ないと見られる。

 学校統廃合や小中一貫化の影響で、採用校は少しずつ増える傾向にあるようだが、「生徒数で見れば10%以下にとどまる」(トンボの橋本俊吾執行役員)のが実情。一部地域の小学校では制服の採用校が多いものの、「人口が圧倒的に多い関東は制服を採用する小学校が少ない」(同)ことがある。

 ただ、全国的に見ればまだ少数だが、小学校で制服採用を検討する動きが出てきた。一番の理由は服装の乱れだ。最近、一部地域の卒業式で袴を着用して出席するケースが目立ち、結果的に学校側が着用を禁止するといった事例もあるようだ。家庭の事情で誰もが袴を着用できるわけではないためだ。

 実際、京都教育大学附属桃山小学校(京都市)は、これまで制服がなかったが、「卒業式の時には紋付き袴が目立っていた」(兒玉裕司副校長)こともあり、2017年春に制服を採用。制服は年間を通してポロシャツを着用する新たなスタイルで「年間の服飾代がかなり抑えられ、保護者にも好評」(同)だと言う(6面参照)。

 こういった制服採用の流れは、学生服メーカーにとっても追い風にしたいところ。オゴー産業(岡山県倉敷市)は、小学校向けに分かりやすい提案見本を作成した。小学校は中高に比べ生徒数が少ないことが供給のネックとなるが、「紡績や商社の協力を得て、小ロットでも対応できる」(片山一昌経営企画部長)ことを強みに採用校の獲得につなげる。

 制服採用が一部で出てきたとはいえ、まだまだ全国的な流れではない。「制服の良さをどれだけ業界としてアピールしていけるか。需要を喚起していかなくてはいけない」(菅公学生服の曽山紀浩取締役)。改めてメーカー各社で連携した動きも考える時期に差し掛かる。

〈制服は本当に高いのか?〉

 菅公学生服は15年に全国の小学生の子どもを持つ親600人にインターネットで調査したところ、小学校の制服の有無は「ある」が16・7%、「ない」が83・3%だった。

 私服で困っていることについて、「成長期で、すぐに着られなくなってしまう」(43・8%)、「入学式や卒業式、冠婚葬祭用の服が別に必要になる」(31・6%)、「子供の服代にお金がかかる」(29・6%)といった費用に関することが多く挙がった。

 服装の自由が起因して、「服装による差がでる」(7・2%)、「服装のことで差別や、いじめ・仲間外れが起きる」(2・2%)など、子供の間でのトラブルを心配する声もあった。

 そういった私服での悩みを制服の導入で解決ができる部分も多い。例えば、トンボ(岡山市)の「トンボ・ジョイ」は「最初の購入のきっかけとなる成長設計をしっかり取り入れ、高付加価値を追求した」(青江宏明スクールMD部副部長)制服。撥水(はっすい)や抗菌防臭など中高生の制服と同じ機能性を持つ。

 明石スクールユニフォームカンパニー(倉敷市)は、多機能なポロシャツ「ラクポロ」が前年比160%の販売数量となるヒット商品。価格的に高くても、「高付加価値の機能を持った商品の販売は伸びる傾向にある」(江藤貴博スクール第一販売部長)と分析する。

 菅公学生服(岡山市)の「カンコータフウォッシュ」は、家庭洗濯ができ、洗濯を繰り返しても劣化しにくいことや、ピリングやひっかき傷が発生しにくいことなど使用時の高耐久性が評価され、今年の入学商戦も「前年に比べ販売が拡大している」(曽山取締役)と言う。 2月に東京都中央区立泰明小学校でイタリアの高級ブランド「アルマーニ」がデザインを監修した制服(標準服)を採用したことが反響を呼んだ。一式をそろえれば8万円以上で、一般紙では公立の小学校にしては「高すぎる」という論調が目立ち、国会でも取り上げられ、大きな話題となった。

 泰明小学校は極端な例ではあるが、その点だけを捉えて全国的に「制服は高いから問題がある」という議論につなげようとするのは、一方的な見方と言える。機能性や安全性など長い目で見れば、結果的に「制服で良かった」と思える素材・商品開発に、素材メーカーや学生服メーカーは、日々取り組んでいる。

〈制服採用が進む三原市〉

 広島県三原市の小学校は制服(標準服)が元々なかったが、2005年の市町村合併をきっかけに学校統合が進み、制服採用校が増えた。三原市と合併した本郷町や久井町、大和町では制服を採用していた学校が多く、その影響が大きいとみられる。

 中でも三原市内の中心部にあった生徒数の多い南小学校が「学校移転を機に、制服を導入したことが他校にも影響を与えた」(販売代理店関係者)と言う。

 三原市教育委員会では「市が積極的に指導して採用を進めたわけではない」とコメントするが、現在市内の小学校20校のうち12校が昨年春までに制服を採用。今春も1校が採用し、採用を検討する学校が3校ある。

 「とても学校で着る服と思えない格好の女子児童も夏場にいて、男性教諭から指導がしにくいとの声があった」(販売代理店関係者)中で、制服化によって「指導しやすくなるといった声や、郊外で事件や事故から身を守ることができるのではないかといった話がある」(同)と、制服導入をおおむね肯定的にとらえられているようだ。