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トーク 談 とーく/素材の力をニーズに合致/営業利益率10%超 確保/クラレ 代表取締役専務執行役員 繊維カンパニー長 松山 貞秋 氏

2018年03月16日(金曜日) 午前11時40分

 クラレは今期(2018年12月期)から新たな3カ年中期経営計画をスタートさせた。今期から繊維カンパニー長に就いた松山貞秋代表取締役専務執行役員は、「繊維事業が一定の収益を確保することで全社利益に貢献することが基本。営業利益率10%超を確保したい」と強調する。そのためにも既存用途を伸ばしながら新規分野の開拓を進め、革新生産プロセスの実用化にも取り組む。

  ――今期から繊維カンパニー長に就きましたが、現在の繊維事業についてどのような印象をお持ちですか。

 当社にとって繊維は創業の事業であり、これまで発展を続けてきたことは偉大なことです。それを可能にしたのは、ビニロン繊維に代表されるように独自性のある素材の力を発現させ、常にユーザーのニーズに合致させる努力を続けてきたからにほかなりません。そうやって既存用途を伸ばしながら、同時に新規用途の開拓を続けてきました。例えばビニロンは耐アルカリ性を生かした用途で拡大していますし、クラレクラフレックスの不織布も高付加価値な用途に力を入れています。その結果、17年度は売上高、営業利益ともに当初計画を上回り、営業利益率も10%を超えています。こうした状態を常に目指さなければ、当社にとって繊維事業を続ける意味がありません。

 一方、課題もあります。既存の製造設備が老朽化しており、需要に対して生産キャパシティーが不足していることです。このため今後、メーカーの本質であるコストダウンを考慮しながら、革新生産プロセスの導入で設備更新と増産を進める必要があります。

  ――今期から新しい中期経営計画がスタートしました。

 繊維事業は一定の収益性を確実に確保し、全社利益に貢献するということが基本的な考えとなります。そのためにも、これまで通り高い利益率を目指さなければなりません。繊維資材事業のビニロン繊維は自動車用途やバッテリーセパレーター用途が伸びていくでしょう。しかし、アスベスト代替用途などでは低価格品で中国品との競争が激化しています。このため一段の差別化が必要であり、それを求めるユーザーとの取り組みを強化します。革新生産プロセス「VIP」の稼働も中計内に本格化させます。VIPは設備のコンパクト化も可能ですから、これを生かした新たな設備投資の可能性も検討することになるでしょう。

 高強力ポリアリレート繊維「ベクトラン」もフル生産・フル販売が続いていますから、設備の改良で増産したい。それでも量に限りがありますから収益性を重視した販売が大切になります。振動減衰性の高さなど特性を生かした用途できめ細かく需要を掘り起こすことが重要でしょう。そのほか、高耐熱性ポリアミド「ジェネスタ」やポリエーテルイミド「クラキス」など特殊ポリマー繊維の用途開発・拡販にも取り組みます。そのためには、ターゲットを定めながら、用途を広げていくことが必要でしょう。

 生活資材事業は、特に不織布でコスメやメディカルなど高付加価値用途での拡大を進め、事業ポートフォリオを一段と高収益の方向に組み替えることを目指します。フィルター用途での拡大にも期待がかかります。メルトブロー不織布もフル生産が続いていますから、中計内での設備増強を検討しています。生活資材事業も、いろいろと夢が広がってきました。

  ――今期からクラリーノ事業が再び繊維カンパニーに移管されました。

 昨年度まで機能材料カンパニーに属していましたが、人工皮革のベースは繊維の技術です。中でも前工程は原糸の紡糸から不織布化の技術が大きな意味を持っています。このため、繊維カンパニーで担当した方が、特に研究開発の面で広がりが出るという判断です。

  ――人工皮革は自動車内装材用途への参入を表明しました。

 必要な品質基準をクリアすることが既にできています。これをどうやって採用実績に結び付けるかが課題になります。自動車は実績が重視される用途ですから、ハードルは低くありません。クラリーノの強みを生かせる提案が必要です。現在、自動車内装材向けの人工皮革はスエードタイプが主流ですが、当社は得意とする銀面付きタイプで天然皮革と合成皮革の間のマーケットを作ることを考えています。成形性に優れる点を生かし、シート材だけでなくインパネといった用途にも提案します。

  ――そのほかの用途に関してはいかがですか。

 最近では、ハンドバッグ用途で海外のラグジュアリーブランドでの採用実績が増えてきました。ハンドバッグは欧州、特にイタリアに大きな市場があります。これを引き続き伸ばします。狙いは天然皮革代替。天然皮革は、なめし工程の環境負荷が大きいことから供給量に限界がありますから。靴用途に関しては数量の出る用途ですから、収益性をいかに上げていくかがテーマになります。

 成形品で新たな需要も開拓します。そのために成型品を専門に担当する部署も作りました。現在、取り組み先と組んで米国市場を攻めています。IT関連用途がターゲットになります。

  ――繊維カンパニーとして目指すものは何でしょうか。

 当社にとって繊維を維持・発展させていくことは事業の大きな目標の一つです。そのためにも、収益面を含めて持続性のある事業運営が求められます。その意味では、サステイナブルということが繊維事業のテーマだと考えています。

〈記者MEMO〉

 クラリーノ畑出身の松山さん。長らく化学品カンパニーや機能材料カンパニーでの担当を歴任してきたが、クラリーノ事業ともども久しぶりの繊維復帰となる。好調のビニロンやベクトラン、不織布などにクラリーノが加わることで繊維カンパニーを一段とパワーアップさせようという意気込みを感じた。折しも先月、クラリーノ事業部が2011年から支援してきた女子カーリングチーム「ロコ・ソラーレ(LS)北見」が日本代表チームとして平昌オリンピックで銅メダルを獲得する快挙。同社所属の髙梨沙羅選手が女子スキージャンプで銅メダルを獲得したことも合わせて、クラレの繊維カンパニーにとって幸先の良いスタートと、士気も上がっていることだろう。

 まつやま・さだあき 1975年クラレ入社。クラリーノ事業本部東京販売部長、化成品・メディカルカンパニーメディカル事業部長兼クラレメディカル社長などを経て2010年執行役員、12年常務執行役員、13年取締役常務執行役員機能材料カンパニー長、16年代表取締役専務執行役員、18年1月から繊維カンパニー長兼大阪本社担当。