特集 アジアの繊維産業Ⅰ(6)/わが社のアジア戦略/帝人フロンティア/タイから世界に向けて発信

2018年03月28日(Wed曜日) 午後4時15分

 帝人グループがタイに進出したのは50年以上前にさかのぼる。1966年にポリエステル繊維の輸入販売拠点を開設し、67年にはテイジン・ポリエステル〈タイランド〉(TPL)でポリエステル繊維の生産を開始した。96年にはゴム資材の生産拠点を設けるなど、タイは帝人グループにとって繊維事業の重要な拠点としての役割を担ってきた。2014年から推進してきたポリエステル繊維事業の構造改革も17年に完了し、主要品種の生産が国内工場からタイに移管されたことでポリエステル繊維事業は帝人フロンティアを中心に製販一体で取り組む体制が整った。その中核拠点がタイ。タイを起点に衣料用途から産業資材まで世界に向けた発信を目指す。

〈テイジン・フロンティア〈タイランド〉/グローバル販売を進める〉

 テイジン・フロンティア〈タイランド〉は、ポリエステル繊維の生産拠点の中核がタイに置かれたことを生かし、タイを起点にグローバル販売の拡大を推進する。

 同社はゴム資材やカーシート、タイヤコードなど産業資材と原料(合繊糸・わた)、衣料用テキスタイルの販売を担う。

 ゴム資材は自動車、農機ベルト用、ホース用シングルコード糸、基布が好調に推移し、ベルト基布も好調に推移。カーシートは、自動車生産に大きな拡大はなかったものの、コンバート機能を活用した協力生産との連携でタイ国内シェアを伸ばしたことが寄与して拡大した。

 原料(合繊糸・わた)も堅調。テイジン・ポリエステル〈タイランド〉(TPL)の生産品だけでなく中国や韓国から調達した糸・わたも扱う。TPLのポリエステル短繊維も衛材用などで販売が拡大した。

 タイがポリエステル繊維生産の中核となったことを生かし、テイジン・コード〈タイランド〉が生産するゴム資材用シングルエンドコードやテイジン・FRA・タイヤコード〈タイランド〉のタイヤコードの拡販に取り組む。カーシートも車両資材は帝人フロンティアの工繊・車輛資材本部グローバル推進室と連携し、タイ国内だけでなく、海外販売も拡大する。

 一方、衣料用テキスタイルは機能素材の開発・提案を強化する。TPLが生産する機能糸・わたの活用や織布・染色のタイ・ナムシリ・インターテックスとの連携を一段と進める。また、生産会社と共同で“カイゼン”活動によるコスト削減にも重点的に取り組む。

〈タイ・ナムシリ・インターテックス/新鋭設備で独自開発も〉

 織布・染色加工のタイ・ナムシリ・インターテックス(TNI)は、積極的な設備投資や、4月に設立される繊維の研究開発拠点、帝人フロンティア・タイ・イノベーション研究室〈タイランド〉(TFTIL)との連携でタイ発信の独自素材開発も推進する。

 TNIは積極的な設備投資で2017年度も販売量を大きく拡大した。現在、織布設備はレピア織機、エアジェット(AJ)織機、ウオータージェット(WJ)織機の3機種計270台を保有し、うちAJ織機16台とWJ織機70台は最新鋭機をそろえる。これを生かした開発・生産でメガブランド向けスポーツ素材や日本向けユニフォーム素材、タイ国内向けカーシート地などが拡大した。

 18年もWJ織機数十台台を増設する。山口尊志社長は「増設を生かし、染色加工能力いっぱいまで生産量を拡大する。特にスポーツやアスレジャー、スポーティーカジュアルに向けた生地に力を入れる」と話す。機能素材の重要性が高まるため、帝人フロンティア本社やTFTILとの連携を進め、独自開発素材にも取り組む。協力工場で生産するニット生地も拡大する。

 一方、人件費上昇なども続いていることから、生産性向上に加えて会計・生産関連のシステムも全面導入し、帝人フロンティアグループの東南アジアでのテキスタイ生産の中核会社としての基盤整備を進める。

〈テイジン・ポリエステル〈タイランド〉 テイジン〈タイランド〉/ポリエステル繊維生産の中核〉

 ポリエステル長・短繊維製造のテイジン・ポリエステル〈タイランド〉(TPL)は昨年、創立50周年を迎えた。帝人グループのポリエステル繊維構造改革も完了し、テイジン〈タイランド〉(TJT)と合わせて帝人フロンティアのポリエステル繊維生産の中核の役割を担う。堀井哲也TPL社長兼TJT社長は「次の増設に向けた準備を進める。そのためにも東南アジア内外での拡販が2018年度のテーマになる」と話す。

 TPLはポリエステル繊維の主要銘柄の生産が日本から移管されたことで、2017年度は売上高が大幅に増加した。特にTPLのポリエステル短繊維は不織布用途が好調で、フル稼働の状態が続く。生産移管に伴う需要家認証もショートカットファイバーは全て完了し、コンジュゲートわたも順調に認証が進む。TJTも、原着わたが主力の自動車内装材向けを中心に堅調となり、一般資材用でも販売量が増加した。

 このため18年度はショートカットファイバー、コンジュゲートわた、クッション材「エルク」などで次の増設に向けた準備を進める。増設に向けた拡販に力を入れ、各用途でシェアを高めるために、東南アジア域内・域外いずれの需要をも積極的に取り組む。そのため4月から営業スタッフを増員する。インドネシアなどへの委託生産も活用し、現地供給のニーズに応えることで販売量の拡大を目指す。

 一方、ポリエステル長繊維はTPL、TJTともに衣料用に勢いがない。堀井社長は「タイで生産するポリエステル長繊維で競争力を発揮できるのは、スポーツ衣料やカーシート向けなどに限られてきた」と指摘。こうした高付加価値ゾーンへの特化を進めることになる。

 タイは人件費など労務費の上昇が続いているほか、TPLが立地するパトゥムターニー県クローンヌンには鉄道の延伸工事が進められており、今後はバンコクへの交通アクセスが改善されることで労働力が流出する公算が高い。地域での人手不足が加速する懸念があることから省力化・省人化投資やシステム投資も実施し、工場としてのポテンシャルを高め、生産拠点としての機能の高度化を推進する。

〈テイジン・コード〈タイランド〉/表面コーティングで付加価値追求〉

 ゴム資材向けシングルエンドコードを生産するテイジン・コード〈タイランド〉(TCT)は、2016年に設立20周年を迎えた。帝人グループのポリエステル繊維構造改革によって工業用ポリエステル繊維もタイに移管されたことで、TCTの役割は一段と大きくなる。

 TCTは現在、ベルト用が月120トン、ゴムホース用が月100トンのシングルエンドコード生産能力を持つ。

 販売の40%がタイでの内販、60%が他の東南アジア諸国や韓国、日本への輸出となる。2017年度に関して嶋田慎太郎社長は「商品の高付加価値化を進めたことで販売単価も上昇し、販売量、利益ともに大きく拡大した」と話す。

 この勢いを維持し、18年度は日本からの生産移管分も合わせて増収増益を計画している。そのためにも新しい開発に力を入れる。特に表面コーティングなどで付加価値を実現することに取り組むとして、さまざまなゴムの特性に応じた接着性の追求などに取り組む。また、ベルトやゴムホース以外の用途開拓にも取り組む。

 工業用ポリエステル、特にゴム資材用途は帝人フロンティアが得意とする分野の一つだけに、シングルエンドコードの生産拠点としてTCTの存在感が一段と大きくなる。

〈テイジン・FRA・タイヤコード〈タイランド〉/量産体制がスタート〉

 タイヤコード織物の撚織・ディッピング一貫生産工場のテイジン・FRA・タイヤコード〈タイランド〉(TFA)は2014年に設立され、16年に稼働を開始している。これまでタイヤメーカーの品質承認取得も順次進んでおり、17年後半から本格的に販売がスタートした。田中伸幸社長は「18年の早期には、量産体制をスタートさせる」と話す。

 TFAの生産能力はディップ反で年間1万6千トン。販売の40%がタイ国内、60%が他のASEAN諸国や中国、韓国、日本などへの輸出となる。ポリエステル、ナイロンだけでなく、高強力レーヨン、アラミドなど多彩な原糸を使用したタイヤコードの生産が可能なことが強みとなる。

 これを生かし、日系タイヤメーカーだけでなく欧米のタイヤメーカーへの提案にも力を入れている。特に高強力レーヨンやアラミドのタイヤコードなど高付加価値品を中心に提案する戦略を進める。素材を複合させたハイブリッドタイヤコードなど特徴のある商品の販売にも力を入れる。

 今後、アジア地域では自動車生産・普及の拡大に合わせてタイヤの需要がさらに増加することはほぼ間違いない。そうした需要に応えるため、TFAの重要性は一段と大きくなる。