日系繊維企業/香港の機能を再強化/ASEAN生産の拡大で

2018年04月17日(Tue曜日) 午前11時24分

 日系繊維企業の一部が、香港の機能を再強化している。ASEAN地域生産の司令塔としての役割の重要性が増していることが背景。広東省と香港を一体化し発展させる構想「粤港澳大湾区」により、香港から華南市場を狙う動きも今後出てきそうだ。(岩下祐一)

 蝶理〈香港〉は、蝶理グループのASEAN地域を中心としたグローバル展開の司令塔の役割を担っていくため、このほどオフィスを移転した。蝶理の安藤敏彦常務取締役執行役員は9日に開いた開所式で、「まずはオフィスが大事だと考え、一等地の九龍・尖沙咀のオフィスビルに引っ越した」と話した。

 安藤氏は、前職の東レ時代に約10年香港に駐在し、東レ香港社長などを務めた“香港通”で、グローバル展開での香港の機能活用について造詣が深い。安藤氏の知見を生かしながら、蝶理〈香港〉はこれから、ベトナムやインドネシア、タイなどの現地法人をネットワーク化し、ASEAN地域でのビジネスをグループで一体となって拡大していくとみられる。

 日系繊維企業の香港での事業展開は近年、中国華南エリアからASEAN地域に縫製地が移管される中、縮小傾向をたどっていた。ところが、ここに来てASEAN地域生産の拡大に伴い、同地域の司令塔としての役割の重要性が増しており、一部が蝶理〈香港〉のように改めてその機能を強化し、反転攻勢に出ようとしている。

 レーベルを中心とした副資材の欧米向け販売を手掛ける三景横濱〈香港〉の2018年3月期決算は、売上高、粗利益とも前年を上回った。香港を起点に、生産拠点のバングラデシュ、ベトナム、中国・太倉、東莞の連携を強めたことが功を奏した。

 これまでは、商品の売れ筋などについて香港から各国拠点に流す一方通行の情報がほとんどだったが、連携強化でそれが双方向に変わっている。1社の顧客に対し、グローバルでチームになって動くケースも増えている。

 中村知真総経理は、香港について「英語が堪能で、教育レベルが高く、欧米顧客と対等にコミュニケーションできる人材がそろっているのが強み」と話す。

 日本向け製品OEMを手掛ける豊島〈亜洲〉はこのほど、ミャンマーでダウンウエアの生産を始めた。これまではベトナムの自社工場と中国の協力工場でセーターを生産してきたが、今回のダウンウエアを皮切りに布帛製衣類も強化し、課題の欧米顧客の開拓に結び付けていく。

 中国政府は現在、広東省と香港・マカオを一体化し発展させる構想「粤港澳大湾区」を推進している。現状は、華南エリアのニッターへの糸売りで成果を上げる旭化成紡織〈香港〉など一部に限られるが、同構想により今後、香港から広東省など華南エリアの開拓を狙う動きが増える可能性もある。