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2018春季総合特集(13)/top interview カケンテストセンター/機能性試験需要が増える/理事長 長尾 梅太郎 氏/基本姿勢、経営目標明確に

2018年04月23日(Mon曜日) 午後3時37分

 カケンテストセンター(カケン)の長尾梅太郎理事長は、2018年3月期の業績が増収に転じる見通しと語る。為替が比較的安定したこともあるが、機能性試験の依頼が増えた。内外でのさまざまなセミナーなども顧客を増やしたとみる。今年度も厳しい環境を予想するが、基本姿勢と経営目標を明確に打ち出し、新たなサービスの提供、研究開発を進めていく。

  ――第4次産業革命という実感はありますか。

 IT化の推進は、不可欠です。単にITやAI(人工知能)を活用しようというのではなく、メーカーやユーザーなどがサイバーエリアにオープンな共通プラットフォームを作り、クオリティー、コスト、デリバリーの向上を図るというものです。検査でも画像認識で判定するソフトができるかもしれません。

  ――2017年度(18年3月期)の業績見通しはいかがですか。

 16年度まで3年連続で減収でしたが、内外とも業績はプラスに転じる見通しです。国内は厳しい環境ですが、機能性評価試験の依頼が増えています。情報サービスでセミナーを行ってきたことも、顧客の依頼につながったと思います。

  ――海外事業も伸びた。

 為替が安定的だったこともありますが、大口の顧客の海外シフトを捕捉できたこともあります。上海科懇検験服務、カケンインドネシアとも増収で、インドネシアは16年度に黒字転換し、17年度も黒字を継続できそうです。

  ――新年度は。

 取り巻く環境の厳しさは変わりません。繊維製品の世界貿易は縮小気味で、国内の衣料購買も減少している。昨年7月に策定した「2021中期経営計画」は5カ年ですが、最終年度の数字はそのまま、毎年ローリングしていきます。これをやれば何とかなるという時代ではありません。その時々の課題を抽出して実行、評価していくことが必要です。積み残しは何か、新しく必要な施策は何かなど、見直していきます。中計では毎年前年比1・5%の増収を目標に掲げています。18年度も国内は1・5%増を目標にしました。海外は前年の伸びが大きかったので、控えめにしています。収支の面でも黒字化を図りたいと考えています。

  ――18年度の事業計画の特徴は何ですか。

 二つあります。一つは基本姿勢と経営目標を明確にしたこと。もう一つは人員計画に方針を明記したことです。

  ――基本姿勢というのは。

 五つの開発です。ビジネスシーズ、市場、顧客、業務方法、人材の開発で、5Dと呼んでいます。検査機関ですので、これからの変化に対応するためには開発が重要です。これに加えて活動原理として、学習と情報収集、熟慮、コミュニケーション、迅速な判断と行動、組織内のコラボレーションの五つのCも掲げました。

  ――経営目標というのは。

 これまでは売上目標に終始していましたが、事業収入、営業収支、顧客数、試験受付数、労働生産性の五つの目標です。役員の業績評価として挙げた項目ですが、カケン全体、各事業所の評価にも使います。目標管理をしっかり行っていきます。

  ――具体的施策は。

 今年度は海外事業の強化です。情報提供など海外展開のアドバイスを強化します。機能性試験需要の拡大もあり、評価・試験方法の開発を進めます。重量法による物質の吸放湿特性を自動的に測定する装置「CTC+」も大阪事業所で増設します。20年には東京五輪が開催されます。競技施設の試験検査ニーズもあり、人工芝などにも対応します。

 試験データも蓄積されていますので、顧客の要望に応じて、不良品を作らないサービスの提供も。研究開発ではビジネスシーズの開発として八つのテーマがありますが、AIの活用による試験の効率向上といったものも含まれています。

  ――海外事業所の経営形態も変えました。

 上海科懇検験服務は独資になりました。タイはパートナーを変えて、ビューローベリタスと提携しました。これにより化学分析のリソースが豊富になり、欧米向けも可能になるなど、より試験需要に応じられる体制になりました。

  ――ジネテックス社との繊維製品取扱い記号に関する知的財産使用許諾契約は進んでいますか。

 昨年は3社の契約でしたが、現在6社となりました。

  ――人事制度も4月から変えました。

 年齢給から役割給になりました。今年は設立70年ですが、100年企業にしていくためには、人材が重要です。評価をいかに行うかが肝となります。評価指標がきちんとそろっているか、使いやすいかなど徐々に改善もしていきます。

〈私の記念日/断絶の時代を読んだか〉

 「過去は振り返らないので、記念日はない」と長尾理事長。それでも「印象深い日は、1970年7月のある日だった」と話す。

 東大に入学し、東中野の家に下宿していた。その家は総合商社のニューヨーク駐在員の実家でもあった。その人が帰国して、「もうピーター・F・ドラッカーの『断絶の時代』を読んだか。必ず読んでおけ」と言われた。また、「変わる気持ちのない人間、変える気持ちのない人間は企業では使い物にならない」とも。その本の内容も、アドバイスも今でも生きた教えとなっている。

〔略歴〕(ながお・うめたろう)1974年4月通商産業省入省。92年6月日中経済協会北京事務所長、2001年8月環境事業団理事、2007年7月東京工業品取引所専務理事に就任。12年6月からカケンテストセンター理事長。