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2018春季総合特集Ⅲ(4)/top interview 富士紡ホールディングス/繊維でもAIなどの活用は必然/会長兼社長 中野 光雄 氏/利益重視で「小さな大会社」へ

2018年04月25日(Wed曜日) 午後4時34分

 富士紡ホールディングスの中期経営計画「加速17-20」では、最初の2年間を基盤づくりの期間と位置付けている。中野光雄会長兼社長はこの点について、初年度は「確実にできている」と振り返る。第4次産業革命の進展は「繊維ではまだ感じられない」としつつ、必然との認識を示す。自社のあるべき姿を「小さな大会社」とし、その実現のためには営業利益が重要だとして、繊維の営業利益率を最低でも5%とすることを目指すが、そのためにも人工知能(AI)など新しい技術の活用が重要となる。

  ――第4次産業革命が進みつつあるとされています。実感はありますか。

 第4次産業革命というのは、AIやIoT(モノのインターネット)、ロボットなどの採用により、会社の中身が変わっていくことだと思っていますが、繊維についてはあまり実感がありません。非繊維の研磨材と化学工業品では、そうした技術向け商材の需要が旺盛なので、思っている以上に進行しているのではないかと感じています。

 繊維では感じられないと言いました。しかし、例えば縫製は労働集約型なので、加工料金が安いところに生産を移していますが、どこかで限界がくる。それに対応するには無人化していかなければならず、AIやIoT、ロボットなどの活用が必要になります。

 ただ、紡績であれ、縫製であれ、それほど大きな事業ではないので、装置メーカーが開発費を出して造るということにはなっていないのではないか。それならパーツを利用して自社で開発していかなければならないと考え、プロジェクトを組んでやるように言っています。

 これは繊維に限ったことではなく、当社の全事業で取り組んでいかなければなりません。

  ――電子商取引(EC)はどうですか。

 ますます拡大していくでしょう。当社としても最重要のチャネルの一つと考えています。

 問題は人材です。採用しようとしても、そうした人材は引く手あまたなので集まりません。待っていても進まないため、2年ほど前から社内で人材育成を始めています。

 商品については肌着と肌着の周辺、アウターでもTシャツまでの範囲内で商品開発を行っています。当社はこれまでメンズが主体でしたが、飽和感があります。一方、「BVDレディース」は宣伝効果により認知が進んでいますので、しっかり伸ばしていこうとしています。

 こういったものを中心に、インターネットを通じてすぐに買ってもらえるような商品群の開発が課題となります。

 課題ということでは、もう一つ、繊維では物流費が原価に占める割合が高いので、ここを徹底的にコストダウンできれば十分にやっていけると考えています。

 相当な在庫圧縮と物流の効率化によって大幅に収益を改善してきていますので、さらに力を入れていきます。

  ――どう効率化を図っているのですか。

 返品と在庫をなくすことです。余計なものは作らない、可能な限りジャストインタイム化するようにしています。

 返品があればその処理が必要になり、在庫があれば管理費も必要になります。利益なくして事業なしと言っていますが、在庫を減らせば利益が出ます。

 実際、一カ所で在庫を極端に減らしたところ、赤字なのに借り入れが大幅に減りました。そうすると借り入れる必要がないので、あとは利益を出せばいいということになります。

  ――中計の初年度だった17年度は。

 当初公表した数値と、それほど変わらないのではないかと思いますが、「加速17―20」の2020年の目標が非常に高いので、その路線からすれば達成度は低いと言えます。ただ、1~2年目は基盤づくりの期間と位置付けており、それについては確実にできています。

 繊維の素材面では受注できるものだけを作るという方針に切り替え、規模を縮小したところフル操業になり、むしろ足りなくなってきました。だからと言って、設備を増設する考えはありません。その代わり、機械を最新のものに更新することにしました。

 これにより生産性が上がり、品質も向上し、人を減らすことができる。そういう好回転に持っていくことによって利益を上げ、再投資できるような形になりつつあります。

 研磨材も一般工業用途の特需が今年はないという前提なので、昨年に比べ見た目の業績は悪いけれど、その部分を除けば安定成長できていると言えます。

 さらに、安定路線を加速させるための基盤づくりを行っています。台湾で工場を造っており、今年の夏以降には竣工する予定ですし、2年後に大分に新工場を建設する計画で、すでに土地を購入しています。

 化学工業品は設備が整いました。ただ、受注面で変動があったことから、受注の安定を図るため積極的な営業を行っています。今年以降、花が開いてくるとみています。

  ――18年以降は、どういう戦略を考えていますか。

 重点3事業である研磨材・化学工業品・繊維を伸ばしていきます。当社を「小さな大会社」にしたいと考えており、それには営業利益が重要な要素となります。

 繊維では、とりあえず営業利益率を最低でも5%以上、基本的には10%以上とすることを目標としています。繊維の一般的な営業利益率は2~3%とされますが、何としても向上させなければなりません。

 事業環境が変化していくなら、その環境に応じてやり方を変えていけばいい。さらには、仕事自体も変えてしまうようなフレキシビリティーが、今後求められていくようになると考えています。

〈私の記念日/二つの天皇誕生日〉

 「記念日というか」と前置きしながら中野さんが最初に挙げたのは、1月17日と3月11日。阪神淡路大震災と東日本大震災が発生した日だ。東日本については出身地の福島が復興途上にあることから、少しでも支援が続けられればと考えている。一方、喜ばしい日として挙げたのは、天皇誕生日。新天皇が即位すると、2月23日が天皇誕生日となるが、この日は中野さんの誕生日でもある。しかも奥さんの誕生日は現在の天皇誕生日と同じということで「忘れようにも忘れられない、おめでたい日」と笑った。

〔略歴〕(なかの・みつお) 1973年富士紡(現富士紡ホールディングス)入社、98年機能資材部長、2002年機能品事業部長兼機能品部長、04年取締役知的財産担当兼機能品事業部長、05年取締役知的財産担当兼執行役員兼柳井化学工業社長、06年代表取締役社長・社長執行役員知的財産担当、同年代表取締役社長・社長執行役員、17年代表取締役会長兼社長・社長執行役員。