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2018春季総合特集Ⅲ(5)/top interview シキボウ/産業革命の恩恵、有効活用必要/社長 清原 幹夫 氏/新中計で成長のための大型投資

2018年04月25日(Wed曜日) 午後4時35分

 シキボウにとって2018年3月期は、15年度にスタートした中期経営計画の最終年度だった。主要生産拠点だった中国の人件費上昇などで、定量的目標は達成はできなかったが、生産拠点の東南アジアシフトなど、行おうとしていたことを前倒しで進めることができた。新たな中計には、「10年スパンで生きていくための設備投資や、10年先に花開くような事業のための研究開発投資」など、先を見据えた投資も盛り込む。例えば、インドネシアの紡織加工子会社では、双糸、強撚糸の生産能力を増強するための投資を行う。

  ――第4次産業革命が進行しつつあるとされますが、実感はありますか。

 間違いなく起こっていると思います。繊維業界について言えば、インターネットを介して、半分素人のような方でも商売を行える時代になっています。小資本でもビジネスできるような状況が生じているわけです。

 当社にどんな影響が出るかですが、第4次産業革命の恩恵をビジネスに活用しないといけないという思いが半分あります。もう半分は、メーカーであってよかったとの思い。

 今劇的な変化が起きているのは、小売りなどサービス分野。ただ、われわれは設備を持ってモノを作っている企業です。もちろん、デジタル技術をモノ作りに活用する必要はありますが、生産物そのものが必要なくなることはないと思います。第4次産業革命の中でも、企業としての役割はまだあると思っています。もちろん、それだけで生き残れるわけではないので、産業革命の恩恵を有効に活用していかないといけません。

  ――2018年3月期の業績は。

 一言でいうと、繊維事業の中の、紡績糸販売と中東向け民族衣装用生地輸出が苦戦しました。業績が当初の目標からかい離する主因はこれです。それ以外の繊維事業や、産業材事業はまずまずだったのですが。

 18年3月期は、15年度にスタートした中期経営計画の最終年度でもあります。定量的な面では、目標数値に対し大きな未達になります。中国で作った商品を中国やASEAN地域へ拡販することを計画に盛り込んだのですが、中国の人件費の高騰を受けて、生産拠点を中国からASEAN地域へシフトせざるを得なかったことなどが要因です。

 ただ、定性的な面では、行おうとしていた方向でのビジネスが進みました。数値目標は達成できませんが、やろうとしていたことは前倒しでできました。中国偏重だったモノ作りのポートフォリオを見直し、中国のウエートを下げてASEAN地域へシフトするという考え方が前からありました。しかし中国がモノ作りの中心であり、中国で作って中国で販売したいという計画もありましたので、中国に大きな生産スペースを持っていました。ところが思っていたよりも早く状況が変化し、採算が合わなくなってきましたので、前倒しでシフトを進めました。

 タイにおける紡績事業も昨年終了しました。このビジネスは、継続できないような状況ではありませんでしたが、3年先、5年先は厳しくなると予想し、ベトナムやインドネシアへのビジネスモデルの移管を前倒しで行いました。

 大きく伸ばす計画だった航空機部材については、顧客のスケジュールの遅れに伴って、2、3年遅れで進行しています。ただ、われわれの体制は整いましたので、量産の注文が来ればいつでも受けることができます。18年度からの新中計でスタートする予定だったエンジン部材の事業も、前倒しで始まっています。

  ――今年度(2019年3月期)から、新たな中期経営計画が始まりました。

 方向性が大きく変わることはありませんが、中計とすれば少し大型の投資を計画しています。これまではどちらかというと財務体質の改善や構造改革、株主還元など、世間水準に達していなかったことがたくさんあり、それを優先する必要がありました。今後もこれらに力を入れますが、それと同じくらい、成長するための投資にも重点を置きます。

 10年スパンで生きていくための設備投資や、10年先に花開くような事業のための研究開発投資などを行います。費用が先行して発生するので、利益が(新中計期間中に)大きく増えるということにはなりませんが、将来の利益を増やすためにやり切れていなかったことを積極的にやっていこうということです。

  ――将来を見据えた投資は、繊維事業でも。

 研究開発投資は複合材料が中心になると思いますが、設備投資は産業資材や繊維事業でも行います。10年戦える設備になっているかというと、そうなっていない部分もありますので。繊維にしろ産業資材にしろ、これから10年やっていくというスタンスの部分については、積極的に投資していきたいですね。

 例えば、インドネシアの紡織加工子会社、メルテックス。同社はポリエステル・綿混の単糸を生産していたのですが、現地企業との競争が激しくなっていることに加え、同糸の産地もベトナムへ移行しつつあります。ですので、メルテックスをポリエステル・綿混の双糸、強撚糸の工場にします。既に30~40%が双糸になっています。

 実は、紡績事業を行っていたタイのタイシキボウは、純綿を中心とする細番双糸の専用工場化することで、昨年の事業終了まで生き残ってきました。メルテックスについても、素材はポリエステル・綿混ですが、その中でも双糸、強撚糸に特化した工場にしたいと考えています。そのための投資をしていくつもりです。メルテックスには織布、加工工程もありますが、まずは糸で勝負できるようにします。それに連動した織布工程への投資も考えています。

〈私の記念日/インドネシアへの赴任日〉

 清原さんの記念日は、インドネシアの紡織加工子会社、メルテックスに赴任した2007年5月15日。出張では何度も行ったが、赴任となると一抹の不安も。しかし、楽しみでもあった。帰国した先輩たちが英語でビジネスし、インドネシア語も話すのを見てすごいと思っていた。自分もあんなふうに変われるのかもしれないとの期待があった。結果的には「そんなには変わらなかった」。ただ、次々と発生する想定外の問題に立ち向かう中で「開き直って覚悟する」ことを覚えた。貴重な経験だったと言う。

〔略歴〕(きよはら・みきお) 1983年シキボウ入社。2002年繊維部門衣料第1事業部長、08年メルテックス社長、11年執行役員、12年取締役、15年取締役上席執行役員。16年6月から取締役社長執行役員。