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2018春季総合特集Ⅲ(9)/top interview ダイワボウレーヨン/生産にデジタル技術導入へ/社長 福嶋 一成 氏/品質向上や省力化を推進

2018年04月25日(Wed曜日) 午後2時43分

 ダイワボウレーヨンは工場へのカメラやセンサー技術の導入を早くから進めてきた。工程に有害な化学薬品を使う現場があるためだ。福嶋一成社長は「2020年度に向けて、生産をデジタルデータで蓄積・分析して品質向上、効率化、省力化を進める」と話す。グループの情報通信技術に強みを持つ企業と組んでモノのインターネット(IoT)を使った生産管理の精度向上にも取り組む。

  ――第4次産業革命が進行しつつあるとされています。実感はありますか。

 国内繊維産業の生産現場と第4次産業革命との関連性はあまりないのではないでしょうか。ただ、繊維産業に人が集まりにくい中で、人員の最適化、生産の効率化・高度化を図ろうと思えば自動化、機械化、デジタル化は避けて通れないでしょう。

 一般的にレーヨン工場は原料から繊維まで非常に長い工程を経ます。当社の工場も、パルプを溶かしてエイジングして、水あめ状にしたものを繊維にするという工程ですが、その途中では強酸、強アルカリの使用や高熱を使う作業を伴います。そのため人の目で見えないところ、立ち入れないところが多々あります。

 そうした現場であるため作業の自動化、機械化、センサーやカメラの導入には早くから取り組んできました。現在、技術者の経験則や手書きのメモで記録している生産データをデジタルデータにして、解析し品質や生産効率を改善する取り組みを始めたところです。

 特に生産データのデジタル化は機械の予防保全の観点からも有意義です。当社の場合は1年のうち360日、24時間稼働ですので点検は部分的に生産を止めて行っています。そこで日々の生産記録のデジタルデータがあれば、機械の耐用年数や、故障や不具合の有無もすぐ分かり、効率的な点検ができます。

 当社は20年度までに20億円を投じ、生産能力を増強する計画ですが、その中にこうした生産システム構築への投資も含まれています。

 最新技術の導入を進めることで品質アップ、効率化、生産管理の精度向上を図ります。IoTの分野ではダイワボウグループのダイワボウ情報システムの力も借りながら進めていきます。

  ――18年3月期決算の業績見通しは。

 売上高は微増収ですが、利益は前期並みにとどまりそうです。

 不織布への需要増が続く中で、輸出に力を入れ、中国への販売量が伸びました。国内向けも増えています。紡績用途も、17秋冬商戦で製品の在庫消化が進んだため、需要が増えてきました。

  ――中国へ貴社の特殊レーヨン短繊維を本格的に販売されます。

 ダイワボウ〈香港〉や大和紡績〈蘇州〉と組んで売っていきます。当社の顧客が製造した不織布を輸出するとともに、中国の協力工場で作った不織布を、ローカル企業や日系企業へ販売しています。

 原料段階から差別化した不織布であることが売りです。「ソフレイ」や「ベイリーズビーズ」などの特殊レーヨン使いが好評でした。ソフレイは、0・6デシテックスのレーヨンです。ここまで細い繊維を不織布にできる工場は限られます。開発力のある中国の工場と組んで生産しています。ベイリーズビーズは、透明感のある特殊形状繊維です。

  ――米国への輸出の現状は。

 マットレス用途の防炎レーヨンと衛材用途で輸出しています。防炎レーヨンは米国の流通が変化し、アジアからの製品輸入が増えているため、苦戦しています。一方で、従来から取り組んできた衛材用途の量が拡大してきました。

  ――今月から再度レーヨン短繊維値上げに踏み切りました。

 レーヨンの副原料であるカセイソーダの販売価格が引き上げられたことが原因です。背景には中国を中心にカセイソーダの需要が高まっており、需給が逼迫(ひっぱく)していることがあります。こうした原材料高が響いて、今期の営業利益は横ばいでした。

 カセイソーダ以外にも主原料である溶解パルプ、そしてエネルギーコストの上昇も続いており、当社でカバーできる範囲を超えています。

  ――19年3月期の方針を。

 輸出の倍増を狙います。中国の美容関連市場向け不織布販売に特に期待しています。市場規模は、まだまだ拡大するでしょう。当社が提案しているような原料段階から差別化した不織布へのニーズも高まっています。

 木材を原料とし、廃棄後は土に帰るレーヨンは、サステイナビリティーという観点でも有用な繊維です。焼却ではなく埋め立て処分が中心の中国や米国では、土に帰るということは特に大切な要素です。6月にサステイナビリティーを強調するための、新しいレーヨン短繊維を発表する予定です。これにより、より自然環境への負担が少ないレーヨンとして合繊の市場へも攻勢をかけていきます。

〈私の記念日/記憶に残る悲しい日〉

 「入社記念日、結婚記念日、子供の誕生日……特別な日はありますが――」と悩む福嶋さん。「次の記念日は僕の退職日かな」と笑う。「悲しい日はいっぱいある」と話す。「中国で部下を事故で亡くした日は忘れられない。毎年、お墓参りにいく」。また「これから海外に赴任する日や帰任する日も印象深く心に残っている」という。「着任前の不安と期待の入り混じった気持ちは何とも表現し難い」。帰る時もやり残したことに思いを巡らしたり、再び日本でやれるか不安になったり、複雑な気持ちになるそうだ。

〔略歴〕

(ふくしま・かずなり) 1982年大和紡績(現ダイワボウホールディングス)入社。蘇州大和針織服装総経理や第一事業本部国際開発部長を経て2011年ダイワボウホールディングス戦略事業推進室長、13年ダイワボウレーヨン専務、16年6月から大和紡績取締役兼ダイワボウレーヨン社長。