メーカー別 繊維ニュース

2018季総合特集Ⅳ(4)/top interview 豊島/CVCで実ビジネスも/社長 豊島 半七 氏/製販全てやり方変える

2018年04月26日(Thu曜日) 午後2時58分

 豊島は急速に変化する市場環境を踏まえ、さまざまな手立てを講じている。その一つがコーポレート・ベンチャー・キャピタルファンド(CVC)の立ち上げだ。ITベンチャーに投資を行い、取引先にIT関連商材を提案するこの取り組みは顧客支援の一つでもあるが、CVCを通じた日本環境設計(東京都千代田区)への出資を行うなど「少し実ビジネスにも力を入れる」と豊島半七社長は次を見据える。一方で、既存ビジネスでは「やり方を変える」と述べ、収益力の向上に取り組むとともに、新規顧客開拓に拍車を掛ける。

 ――第4次産業革命が進行しつつあるとされますが、実感はありますか。

 第4次産業革命は日常生活、ビジネスにおいても実感しています。こうした変化が早すぎるため、1年後にはどうなっているのかが全く読めないとも言えます。日常生活を見ても、若者はスマートフォンがあれば全て事足りるようになっています。

 新聞も基本的な情報はインターネットで入手できる時代です。もちろん、善しあしはあります。今の若者は関心があること、知りたいことだけでつながっているため、他への興味が薄れているように感じます。目を見て話せなくなる人が増えたり、人の顔色を見て判断しようとする能力が衰えてくるかもしれません。

 ただ、こうした層がマジョリティーになればそれは問題ではなくなります。つまり、善しあしではなくて、それが普通になるということです。

 少子化による人口減少に加えて、こうした層が主流になってくると、ますます衣料品を購入しなくなるのではないかとも危惧しています。

  ――ただ、そうした変化も捉えて、貴社はさまざまな新規事業に挑戦しています。その一つがCVCの立ち上げだと思いますが、その進展はいかがですか。

 昨年1月に立ち上げたCVCは国内外のITベンチャー企業に出資し、当社の取引先にITベンチャーのIT関連商材を提案する取り組みです。さまざまな分野で、投資は順調に進んでおり、現在6社に投資を行っています。検討中のものも数社あります。基本は顧客が困っている問題を支援するものですが、CVCを通じて日本環境設計にも出資したように、実ビジネスの方にも力を入れていきます。

 日本環境設計は不要になった衣料品を店頭で回収・再生する「ブリング」プロジェクトを運営しており、回収した衣料品からポリエステル樹脂を再生します。この原料を使った再生ポリエステル繊維を当社の素材と製品が共同プロジェクトを組んで販売していきます。

  ――生地のB2Bの電子商取引(EC)サイト「テキスタイルネット」も今年1月に事業継承されました。

 以前よりも出店者が増えています。ただ、検索などユーザーの使いやすさと言う面ではまだ改良の余地があります。

 見せ方の工夫や検索方法など利便性を高めていきます。今はリピーターが中心になっていますが、ユーザーを広げるという面からも利便性の向上が重要になります。当社が継承したからといって、すぐに完成形になるわけではありませんので、順次改善を図っていきます。

  ――2018年6月期は当初から慎重な計画を組まれていましたが、業績見通しはいかがですか。

 前期比増収も大幅な減益となる見通しです。全ての部門が同じ傾向です。増収は綿花取引や一部の製品事業によるものですが、利益面では計画よりも厳しい状況にあります。これは市況の悪さだけではありません。企画から生産、販売、アフターフォローを含めて当社のやり方が悪かったのが一番の要因です。

  ――来期の商況はどのようにみておられますか。

 しばらくは厳しい状況が続くとみています。契約は進んでいますが、適正な利益を確保できているのかどうか。その面では今期の厳しさを引きずるとも考えていますので、先ほど申し上げたやり方を改善していきます。製造面でもあらゆるコストが上昇しています。商いの仕方、コストも含めた生産の仕方をどのように変えるかが、重要です。

  ――輸出も含めた海外販売にも力を入れていますが。

 まだまだ分母が小さいので、素材、製品とも海外販売は強化していきます。

 ただ、国内販売もやり方次第で伸ばせると考えています。当社の製品事業のシェアは市場全体の1%ほどに過ぎませんので、未開拓領域を開拓できる余地はあります。素材、製品、衣料分野、非衣料分野を問わず、新規顧客開拓に取り組みます。

  ――欧州市場では「エコ」素材への関心が今まで以上に高まっています。貴社はオーガニックコットン「オーガビッツ」、廃棄予定の野菜・食材を染料に使う「フードテキスタイル」などを展開しています。

 両素材とも今はまだ物足りないですね。本来ならこうしたエコ素材を持つ点は強みになるはずですが、打ち出しが明確でないのかもしれません。

  ――オーストリア・レンチング社と精製セルロース長繊維「テンセルリュクス」の販売権も取得しました。

 シルク代替を狙いラグジュアリーブランド向けを中心に開拓していきます。

 高価格ではありますが、原料となる木材パルプからクローズドシステムによる生産など環境への影響を最小限に抑えたサステイナブルな素材でもあります。難度の高い「テンセル」長繊維で戦略的なパートナーとして選んでもらったのですが、それに応えていかねばなりません。

〈私の記念日/ダブルのエイプリルフール〉

 4月1日が誕生日の豊島さんだが、本当に生まれた日とは違う。だから「ダブルのエイプリルフール」と笑う。昔は出生日を変えるケースはよくあった。豊島さんもその1人。小学生の頃は同級生に比べて背丈も小さかった記憶が残る。4月1日生まれを改めて感じたのは22歳の時。銀行入行式で「制度など分かっていなかったので同期の中で最も長く勤めるのだな」と漠然と思ったと言う。因みに社員寮で相部屋になった同期は3月31日生まれだが、4月2日に誕生日を変更していたそうだ。時代を感じさせる。

〔略歴〕

(とよしま・はんしち) 1977年東海銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行。85年豊島入社、90年取締役。常務、専務を経て2002年から現職。