メーカー別 繊維ニュース

特集 環境新書(3)/サステイナブルを実現/取り組み強める繊維企業

2018年06月15日(Fri曜日) 午前11時52分

〈注目浴びる「ループラス」/技術でアップサイクル/クラボウ〉

 クラボウの繊維事業部が展開している「ループラス」は、縫製工程で発生する“裁断くず”を廃棄処分せず、衣服や雑貨などの高付加価値品へアップサイクルする仕組みと製品の総称。長年にわたって積み重ねてきた開繊・反毛のノウハウに、紡績や織り・編み、染色・加工の技術が組み合わされている。

 2017年にデビューしたループラスは、金属やプラスチックと比べて低いといわれる繊維の再利用率向上に貢献する。具体的には、使用生地量に対して10~20%発生(アイテムで異なる)する裁断くずを同じ組成や色に分別して集め、さまざまな繊維製品の原材料として再資源化し、衣料品などの身近なファッションアイテムによみがえらせる。

 反毛・開繊は海外の協力工場で行い、国内自家工場で紡績するが、日本を含めた適地での反毛・開繊も視野に入れる。反毛の繊維製品への活用は珍しくないが、同社は(反毛の時に)長い繊維を取り出す技術で優位性をアピールする。昨年はリサイクルわた30%混で26番単糸の展開だったが、50%混で30番単糸の生産を可能にした。

 現在はバージンコットンとの組み合わせによる綿100%糸での展開となり、丸編み製品と布帛製品の両方が作れる。丸編み生地が布帛製品に、ジャケット生地が丸編み製品にアップサイクルする。

 赤や黄色などの反毛わたの組み合わせによって色目に変化(バージンコットン混)を持たせることもできる。

 同社によると「織物のボトムを年間5万本作った場合、1512キロの反毛わたができ、5639枚のTシャツに還元することができる」と言う。これまで廃棄物の再資源化活動であるゼロエミッションに取り組んできたが、「自社が販売している生地でも実現を目指す」。

〈紙から作る「KAMIの糸」/天然原料で高い持続可能性/ダイワボウノイ

 ダイワボウノイはこれまでわたから独自の技術を駆使して新素材を開発する“ファイバー戦略”を進めてきた。その中には自然環境の保全に貢献する素材もある。

 その一つが天然原料100%、生産面で高い持続可能性を持つ紙糸。グループの王子ファイバーの紙糸「OJO+」に加えて、「KAMIの糸」も販売している。紙糸は、マニラ麻や針葉樹パルプを原料とする。スリットする前の製紙は高度な技術により非常に薄い。紙は繊維間に空隙が多く見掛け比重は0・5と軽い。

 撚糸は特許技術である水撚りにより均整度が高い紙糸ができる。テキスタイルにすると毛羽が少なく、クリアな表面感があるほか、ハリ・コシのある風合いで接触冷感性、吸放湿性もある。

 KAMIの糸には二つのタイプがあり、いずれも原紙から撚糸まで国内で一貫して生産する。一つはソフト感があり、レギュラースペックでリーズナブルな「森(MORI)」。厳選された針葉樹パルプを使用する。

 もう一つがドライタッチ、高強力の「陽(HINATA)」だ。

 このほど開催した機能素材展でもKAMIの糸を使ったさまざまなテキスタイル、繊維製品を披露した。アロハ、ビジネスシャツ、ジーンズ、ワンピース、帽子と展開できるアイテムの幅も広がっている。

 繊維素材ではないが昨年、新たに開発した羽毛洗浄材もこれからの環境保全に貢献する機能材だ。中国では環境規制の強化から羽毛の洗浄場が苦境にあり、この洗浄材によりこれまでより水の使用量を削減できるため今後の拡大に期待がかかる。

〈有機綿のロゴ一新/異業種からの引き合いに対応/豊島〉

 豊島はオーガニックコットン普及プロジェクト「オーガビッツ」を12年前から展開している。当初は限られた分野で使われていただけだったが、活動を続けるうちに多様な業種で使用されるようになった。このため、従来の綿花と畑をデザインした具体性のあるものから、より多くの製品に合うよう、シンプルで上質感のあるロゴに変更した。

 オーガビッツはオーガニック100%にこだわらず「10%を1000人に」届けることで、より多くの人に使ったもらうことを目指して始めた。世界のコットン生産の1%に満たないオーガニックコットンの普及により、有機農地を広げ、環境汚染を「ちょっと(ビッツ)」ずつ改善していこうという発想。ただ、オーガニック100%が求められるようになってきたことから、現在では10~100%に対応するようになっている。

 単に普及させるだけでなく「さくら並木」「ピースバイピースコットン」などのプロジェクトを設け、オーガニックコットンを使用した製品の代金の一部を拠出する仕組みとした。3月には新たに「ジャイアントパンダ保護サポート基金」が発足し、現在のプロジェクト数は11となる。

 さくら並木プロジェクトでは、東日本大震災を風化させないため、津波到達地に桜を植える。ピースバイピースコットンは、オーガニックコットン栽培の7割を占めるインドの農家の生活を支援する。

 これまで参加企業はアパレルが中心だったが、最近は異業種からの引き合いが増えており、化粧品会社や食品会社などのノベルティー、音楽ライブのツアーグッズ、Jリーグチームのグッズなどに使われるようになった。そこでロゴを一新し、より多くの製品への展開を図ることにした。

〈環境負荷少ない製法確立へ/FSC認証も取得見通し/オーミケンシ〉

 オーミケンシは大学と共同で環境への負担の少ないレーヨンの製造方法の研究を進めている。

 レーヨンの製造法はパルプを溶かす際に二硫化炭素を使うビスコース法が一般的だが、生産工程で硫黄と硫黄化合物が生成され、そのまま排出すると自然環境を汚染するため必ず回収しなければならない。今回の研究で、二硫化炭素を使わない製造法が確立すればより環境に負荷をかけることなくレーヨンを製造できるようになる。

 今年度上半期(2018年4~9月)には「FSC認証」を取得する見通し。FSC認証は管理された持続可能な森林から生産された木材を原料にしていることを証明する認証制度で、取得により同社レーヨンの環境面の付加価値が高まる。

 植物や果物などの天然成分で機能性を持たせたレーヨン不織布や後加工のラインアップも充実させる。紅椿、ヒマワリ、アボカドのオイルを練り込んだレーヨン「ボタニフル」や日本で古くからなじみのある素材を使った後加工も数多く開発している。沖縄の薬草として知られる「月桃」や、化粧水として使われていた「ヘチマ」、ハーブの女王とされる「ヨモギ」などの成分を活用する。

 月桃は、沖縄で有機栽培を行う月桃農園と協力し、保湿効果の高い葉水をタオルに浸透させた。ヘチマは潤い成分、ヨモギは葉緑素のクロロフィルなどをそれぞれ使い、抗菌効果やUVカット効果が期待される。

 アズキ、イチョウ、メロン、ブドウの成分を応用した加工も新たに加わった。アズキは肌のアンチエイジングに良いとされるポリフェノールを、イチョウは抗菌成分、メロンは果実の中心部分に含まれる植物性プラセンタに着目し保湿や美容効果などをアピールする。ブドウもアズキと同様のポリフェノール成分で抗菌や肌のケアといったメリットをアピールする。

〈エコの打ち出し強める/綿糸は全て有機綿混に/新内外綿〉

 新内外綿は環境に配慮した素材の打ち出しを強める。これまで精製セルロース繊維リヨセルやオーガニックコットン使いなど環境に優しい素材を多数ラインアップしてきた。天然由来染料によるトップ染め杢(もく)糸「ボタニカルダイ」も優しい色合いから多くのファンを獲得している。

 今期から始まる3カ年の中期経営計画では、事業を通じて自然環境に配慮した取り組みに重点を置く。その具体的な施策の一環として今期から取り扱う全ての綿混糸に最低でも1%のオーガニック綿を混ぜる。有機栽培では農薬を使わないため土壌への負担が少ないという点に着目した。

 オーガニック綿を使うことで、これまでよりも生産コストは上がるが、持続可能な自然環境に貢献するという新たな付加価値を消費者にアピールしていく。オーガニック綿はインドをメインに調達する。

 子会社で主力紡績工場のナイガイテキスタイル(岐阜県海津市)はオーガニック綿の世界認証であるOCS認証を取得しているため、認証工場で生産したオーガニック素材として発信する。

 長門秀高社長は「欧州を中心に環境への貢献を強みとする素材への関心が高まっている」とし、「小さなことであっても、できることで実際に行動し、自然環境に貢献する企業として認知度を高めていきたい」と話す。

 有機栽培綿以外に竹糸の販売にも力を入れる。竹糸は麻のようなシャリ感と肌に触れたときの冷感性などが特徴で現在、中国産の無農薬栽培の竹を繊維原料とし製品化している。国産の竹を原料とした竹糸の開発も試みており、ゆくゆくは京都産の竹を原料にして、人の手が入らなくなった里山の保全と結び付けた素材として販売する。

〈GOTS認証の生産体制/省エネや排水でも環境配慮/大正紡績〉

 大正紡績は、認証基準のハードルが高いとされる「GOTS」(ザ・グローバル・オーガニック・テキスタイル・スタンダード)の認証を取得した工場で生産するオーガニック素材が強みだ。工場は毎年、第三者国際有機認定機関によって実地・書類の両検査を受け、その都度、合格している。

 近年、繊維分野でも“オーガニック”が盛んに言われるようになったが、同社にとってオーガニックコットンとは、遺伝子組み換えを行っておらず、3年以上農薬や化学肥料を使っていない農場で有機的に育てられ綿花を使用した素材を指す。

 GOTSが定めるのは素材についてだけではない。素材の生産でもエネルギー面での配慮も義務付けられており、工場では使用電力の削減、水質環境を考えた排水といった環境への影響にも最大限に気を配っている。

 原料生産から最終製品まで、全ての工程のトレーサビリティーの保証もGOTS認証を取得するうえで必須だ。そのため同社のさまざまな国のオーガニックコットン使いの糸はその原料となる原綿がどこで産出されたものか生産履歴の詳細を追跡できるようにしている。

 同社が展開しているオーガニックコットンは、米国産をはじめ、インド、トルコ、エジプト、ウガンダ、ペルー産など多彩だ。米国では、高級綿として有名な「シーアイランドコットン」をルーツとする超長綿を、契約農場でオーガニックコットンとして栽培。「アルティメイトピマ」と名付け、糸として展開している。

 保有紡機は1万5千錘。毎日、その5分の1で生産品種を切り替え、月間100種もの糸を生産する。見本糸の場合で50キロ、本番生産でも200キロからの別注に対応する。

〈天然由来原料を生かす/トレーサビリティーを実現/レンチング〉

 レンチングは、高付加価値な再生セルロース繊維「テンセル」の生分解性や木質原料由来であることなどを生かし、SDGsに適応したサステイナブルな繊維素材であることを従来以上に打ち出している。

 同社は現在、事業のコア戦略にSDGsへの対応を掲げる。その一つがテンセルの原料である森林資源のサステイナブルな利用。例えば森林資源の計画的な利用を確認する「FSC」認証も取得し、さらにカナダに本部を置く森林資源の責任ある利用を目指すNGO「キャノピー」に積極的な情報開示を行うなど協力してきた。キャノピーにはアパレルでもH&M、リーバイス、ユニクロなどが参加しており、グローバルな視点からサステイナブルな繊維産業の確立を目指す。

 こうした取り組みを確実なものにするために開発したのがトレーサブルレーヨン「エコベーロ」。同社のビスコースレーヨンに特殊な処理を施したもので、原綿にエコベーロを使用した糸、生地、製品は特殊な方法で分析することによって実際にレンチングのレーヨンが使用されているのかを確認することができる。

 廃棄綿布などをパルプ化して原料とするリサイクルテンセル「リフィブラ」の普及にも取り組んでおり、ZARAに続いてリーバイスやパタゴニアも採用した。

 近年、マイクロプラスチックへの懸念から合繊起毛素材への忌避感が欧米で強まった。レンチングは生分解性を持つテンセルの特徴を打ち出すことで需要開拓に取り組む。スポーツ用途で表面にポリエステル、裏面にテンセルを配したダブルニットのテンセル面を起毛するといった生地開発が増えるなど環境配慮の面から再生セルロース繊維への注目度は高い。こうした強みを川上・川中だけでなく消費者にも訴求するプロモーション活動にも力を入れる。

〈微生物培養でエコ商品/助剤・染料など全工程で/洛東化成工業〉

 洛東化成工業(大津市)には微生物培養をコア技術にした環境対応製品がそろう。有害化学物質を使用しないケミカルフリー志向の広がりも背景に、精練漂白、染色、仕上げまでの全工程でエコ処方の確立に取り組んでいる。

 環境負荷の少ない薬剤として、カセイソーダ不使用の酵素精練など「洛東式エコ前処理シリーズ」をはじめ、仕上げ用でシリコンフリー柔軟剤シリーズ、自然由来原料100%の工業量産を実現した草木染め染料「RKカラー」を展開。いずれもエシカルファッションが広がりを見せる中、オーガニックコットンなどの国際認証取得の際の環境・安全基準対応の処方として、ユーザーの信頼は厚い。

 RKカラーは発売十数年で定番原料が18種に拡大。さらに滋賀県東近江市のヒトミワイナリーのワイン原料から抽出した新色が加わるなど、地域産品を活用した開発にも取り組む。このほか、各地の農産品を活用した繊維製品開発のための抽出依頼も増えており、原料持ち込みによるオリジナル染料開発にも対応。原料持ち込みでは、色素抽出のみで原料同様の鮮明な色味の再現が難しいケースも、媒染剤や他原料の染料での補強などきめ細かくサポートする。

 こうした天然由来成分の製品に加え、漂白時の活性化温度を従来比約20℃下げ、燃料コスト削減に寄与する過酸化水素漂白用助剤「アピアゲンHAN」も省エネ対応のエコ商品。これまでのニット染色加工やタオル後加工向けの国内販売に加え、輸出販売の足掛かりもつかむ。欧米メガSPAの生産基地となっているスリランカ、バングラデシュの染工場では省エネ効果以外に、時短化による生産性向上や、日本より希少な工業用水の節約などの利点もあり今後の採用拡大の余地が大きいと同社ではみている。

〈グループで環境経営推進/持続可能な社会貢献を/YKK〉

 YKKは「YKKグループ環境経営方針」(2017~20年度)で、「技術に裏付けられた価値創造による低炭素社会の実現」で、持続可能な社会作りに貢献する。17年度には、サプライヤーCSR調査などを実施した。

 YKKグループは、YKK精神「善の巡環」、経営理念「更なるコーポレートバリューを求めて」の実践を通して、環境経営を推進し、本業を通じた持続可能な社会貢献に取り組む。世界73カ国/地域で事業活動を展開し、どの国/地域においても、自らが環境・社会に及ぼす影響の負荷を低減することを目指す。また、YKKグループの特長や強みを生かした環境・社会的課題の解決、事業活動の成長も志向する。

 東日本大震災以降のエネルギー問題では、「技術の総本山」である富山県黒部市で、社宅跡地を利用し、黒部川扇状地の豊富な伏流水や地域特有の季節風「あいの風」、太陽などの自然エネルギーを最大限活用した次世代集合住宅「パッシブタウン」の整備を進める。この地域と共同した取り組みが評価され「第27回地球環境大賞フジサンケイグループ賞」を受賞した。

 ファスナーやスナップ・ボタンも、製品の安全・安心だけでなく、製造から廃棄に至るまでの環境への負荷低減に取り組む。「ジャパン エコテックス アワード2017」では最優秀賞のグランプリを受賞した。

 事業活動に伴うCO2や水、廃棄物、化学物質などの環境負荷の最小化も進める。地球温暖化をはじめとした気候変動問題では、2030年度目標としてCO2排出量30%削減(13年度比)を掲げる。省エネの取り組みに加え、高効率な生産体制や省エネ技術、設備開発などの技術力を生かした施策も実施、運用改善による省エネの海外展開にも力を注ぐ。