メーカー別 繊維ニュース

特集 今治タオル産地(7)

2018年06月28日(Thu曜日) 午後4時19分

《染色加工業/変化への対応力問われる》

 ここ数年の間で、今治タオル産地の染色加工業を取り巻く状況にさまざまな変化が生じた。変化に翻弄(ほんろう)されることなく、各染色加工業は、未来へ向けた歩みを着実に続けている。

〈染色加工業も調整期に〉

 今治タオル産地でタオル生産が活況を取り戻していた2016年から17年にかけ、後処理工程を中心に混雑が続いた。特に人気が集中していた“白いタオル”で、最終的な納期が読めない状況に陥り、染色加工工程が今治タオル産地の“ボトルネック”と指摘される事態になった。

 混雑の原因は産地の後処理工程のキャパシティーが根本的に不足していることに加え、「今治タオル」ブランドの品質基準を守るため、厳密で丁寧な処理が必要とされたことにある。キャパシティー増強の必要性を指摘する声も産地内の各段階であったが、排水処理の面からも現状以上の増設は難しい状態にあった。

 16年から17年にかけての産地内のタオル生産はエアジェット織機など高効率な織機が多数導入されたこともあり、「確実に過剰生産」(タオルメーカー)との見方もされていた。

 その規模に合わせた増設が必要なのだろうか――と懐疑的な声があったことも事実で、染色加工業は新設備による高効率化や稼働時間の調節で対応を進めてきた。実際に17年を通じての産地タオル生産は前年比で減少に転じた。

 18年3月に、産地内の大和染工のタオルの後処理工程を担う第三工場で火災が発生。大きな被害を受け、当面の稼働の見通しが立たない状況となった。

 産地内では、加工能力の高い工場が停止することで、さまざまな混乱が生じることが懸念されたが、火災直後を除き、目立った混乱は起きなかったようだ。

 産地内の同業他社が大和染工の人員を一時的に受け入れ、請け負っていた加工を代行する措置を取ったことが大きい。今治タオル工業組合もその動きに合わせた柔軟な対策を取った。産地一丸で危機を脱したと言える。

 その一方で、今回の対策だけでカバーできるほどに後処理の加工量が急減していることも浮き彫りになった。

〈メーカーとの連携が鍵に〉

 過剰生産の時期が過ぎ、産地内のタオルメーカー同様、染色加工業にも「次の一手」を考える調整期が訪れている。

 越智源の越智裕社長は、「1年前までは、とにかく『早く、早く』だったが、時間をかけて製品を熟成しようという機運が産地内で高まっている」と語る。

 中央繊維の竹田圭吾社長も「この間、産地内のタオル生産は減少傾向にある」と話し、量が減少する中で、タオルの付加価値を向上させる加工やサービスをメーカーにどれだけ多く提供できるかが、染色加工業に問われてくると指摘する。

 タオルメーカーの藤高はグループ企業の同心染工と、田中産業は東洋繊維との関わりをより深める方針を打ち出している。

 越智社長も「タオルメーカーとの緊密な連携は不可欠になってくる」と話す。必要な設備投資は既に一段落しており、今後は社内組織の柔軟性を高め、同社で可能な加工を見極めながら積極的にアピールし、受注獲得を図る方針を示す。

《素材・メーカー編/高付加価値化支える礎》

 今治タオル産地のタオルメーカーでは、付加価値の高いタオル企画に糸段階からの差別化を打ち出すケースが目立つ。一部では、別注糸を自社リスクで在庫するなど、自社の特徴を打ち出すための重要な要素として用いている。素材メーカーもさまざまな切り口でその要望に応える。

〈東京五輪へギリシャ綿混/コシと柔らかさ併せ持つ/シキボウ〉

 シキボウは2020年の東京五輪と関連させたタオル糸の拡販を、今期(19年3月期)の重点戦略に掲げる。

 ギリシャ産綿混の4層構造糸「オリンピアコットン」がその中心的な役割を果たす。オリンピック発祥の地であるギリシャ産の綿花を使用することでストーリー性を持たせ、糸の設計はアスリートの筋肉をイメージした。綿花の特性と糸の設計によりコシと柔らかさを併せ持つタオルができる。

 オリンピアコットンは16年に提案を始めた。今期は、東京五輪が開催まであと2年に迫り、関連したタオルの生産増に合わせて提案をさらに強める。

 これまで提案してきた風合いの良さを強みにする素材に、機能も付けた商材の提案を始める。風合いの良さに、機能を新たな付加価値とすることで新規需要の開拓に取り組む。

 吸水速乾の機能を持った2層構造糸「クイックドライコットン」はその一つ。30番単糸で混率は綿70%・ポリエステル30%。糸構造によりポリエステル混ながら風合いは綿のような肌触りを実現する。

 タオル以外のリネン製品やシャツ地に従来施してきた機能加工も、タオル向けに展開して新たな需要を探る。抗菌効果で部屋干し臭を抑える機能加工「ルームドライ」をタオル素材に展開する。繊維上の細菌の増殖を抑える制菌加工「ノモス」をタオルへの製品加工で始める。

〈タオル糸「金魚」拡販へ/オーガニック100%投入/東洋紡STC〉

 東洋紡STCは、タオル用途の綿糸ブランド「金魚」の販売拡大に力を入れる。このほどオーガニック原綿100%の金魚を開発した。オーガニック素材の認証を取得し、今治タオル産地での販売を始めた。

 金魚は東洋紡の綿糸ブランド。原料にはシャツやインナーといった衣料用で特に風合いの良い原綿を使う。糸を構成する繊維の本数が多いため、タオルにすると洗濯しても痩せにくく、ふっくらとした柔らかな風合いが長続きする。

 同シリーズには綿100%の定番糸「金魚」と、アクリル混で銀イオン由来の抗菌機能を持つ「金魚AG」との二つがある。製造工場は富山事業所で綿にストレスがかからない独自の紡績技術が使われている。今はタオル向けがメインだが今後、カジュアル衣料での展開も視野に入れる。

 今年は金魚ブランドの誕生100周年。発売当初は今治に工場があったため、産地で急速に普及した。1986年、輸入糸の増加を背景に今治工場が操業停止となり一度は、姿を消した。“今治タオル”の知名度が高まったことをきっかけに2014年3月にタオル専用の糸として復活。産地には往年の金魚をよく買っていたというタオルメーカーも多く、4年間で売り上げは堅調に拡大しているという。