メーカー別 繊維ニュース

スポーツ・アウトドア特集(4)/19秋冬スポーツ素材 環境配慮の開発進む

2018年08月06日(Mon曜日) 午後3時50分

 スポーツ・アウトドアウエア向けに、環境に負荷をかけない素材を開発しようという機運が高まっている。欧州を中心にしたスポーツアパレルが、サステイナブル(持続可能)な素材を求める動きに対応したもので、こうした動きは今後広がりそうだ。

〈「深発色ナイロン」投入/鮮やかな色と堅ろう度両立/東レ〉

 東レは、19秋冬のスポーツ市場に紫外線遮蔽(しゃへい)ナイロンテキスタイル「深発色ナイロン」を新投入する。独自の技術を駆使して開発した素材で、鮮やかで深みのある色彩と高い染色堅ろう度を両立した。ソフトな風合いや接触冷感といった機能も兼ね備える。アウターのほか、スポーツインナー用途でも訴求する。

 染料が結合しやすくなるよう、ナイロンポリマーを改質した。同時にセラミックス粒子を均一に微分散することで色落ちの原因となる非結晶部分が少ない繊維構造とした。こうした工夫で鮮やかな色彩と堅ろう度の両立を可能にし、高い染料吸尽率で排水処理の負荷軽減にも貢献する。

 軽量・コンパクト織物「エアータスティック」や特殊ナイロン糸織物「スタナー」、防水透湿織・編み物「エントラント」、ポリウレタン複合のストレッチ編み物「トリンティ」などの素材バリエーションとして積極展開する。

〈開発、自家工場強みに/「ウェアコン」採用始まる/東洋紡STC〉

 東洋紡STCはスポーツ素材・縫製品分野で有力アパレルとの取り組みによる素材開発と自家工場の強みを発揮することで業容の拡大を進める。

 機能素材への特化を進めてきた同社は、アスレチックやゴルフ分野で有力アパレルとの共同開発などにも力を入れ、一部アパレルにはゴルフウエアでブランド横断の全社共通企画素材に採用されるなど成果が出ている。

 こうした中、期待の大きい機能素材が“着るエアコン”「ウェアコン」。アクリレート系繊維に吸湿機能材を複合化して開発したもので、極めて高い吸湿性を持つ。ここに来てアパレル間で採用への動きが本格化してきた。

 インドネシアに編み立て・染色の東洋紡マニュファクチャリング・インドネシアと縫製のSTGガーメントを持つことも強み。素材から縫製までの一貫生産による縫製品供給の拡大を進める。そのためにSTGガーメントでは自動化設備の導入など生産効率向上とコスト削減に取り組む。

〈次世代快適素材を開発/スポーツなど幅広く展開/帝人フロンティア〉

 帝人フロンティアは、撥水(はっすい)と吸水の相反する機能を同一生地内で両立した次世代快適スエット素材「フリーモPRO」を開発した。重点プロモート素材と位置付け、19秋冬向けからスポーツウエア市場に投入するほか、一般カジュアルやユニフォーム用途への提案も進める。

 練り込み型撥水原糸技術と特殊マイクロクリンプの技術を駆使し、高い耐久撥水性能を持たせることに成功した。2017年に発売したスエット素材「デルタフリーモ」の製編技術を用いて生地表面にポリエステル高捲縮(けんしゅく)撥水糸、裏面に高捲縮ポリエステル糸を配した。吸水加工技術も駆使している。

 撥水加工生地の課題と言える汗による不快感を解消するとともに、軽い雨や泥などをはじき、汗染みも目立たない。同社繊維素材本部テキスタイル第一部はスポーツと一般衣料の領域融合を図っており、新素材は幅広い用途で訴求する。

〈低環境負荷に焦点/「テンセル」をリブランディング/レンチング〉

 レンチングは再生セルロース繊維「テンセル」の低環境負荷な特性をスポーツ分野でも重点的に打ち出す。マイクロプラスチックによる環境汚染への懸念が高まる中、テンセルの生分解性などを強みとする。

 世界的に合成樹脂・繊維の環境負荷への関心が高まる中、生分解性を持つ天然素材由来の再生セルロースであるテンセルへの注目がアスレチックやアスレジャー分野でも高まってきた。

 こうした流れを加速させるために2022年までにサステイナビリティー(持続可能性)に焦点を当てた生産技術や設備に1億ユーロ超を投資し、製造システムの革新を進める。

 テンセルのリブランド戦略でもスポーツ用途は「テンセル・アクティブ」セグメントとしてリヨセル、HWMレーヨンともに機能性の付与なども含めた提案でテンセル普及拡大とブランド力強化を目指す。

〈スポーツブラ分野に参入/機能提案で需要取り込む/セーレン〉

 セーレンはスポーツブラ分野に本格参入する。インナー用途で実績を持つ「フレックスムーヴ」のほか、着圧のコントロールが可能な「ビスコマジック」といった高機能生地を打ち出す。軽運動を生活に取り入れる女性の増加でスポーツブラ市場は拡大しており、需要を積極的に取り込む。

 フレックスムーヴは、フリーカットという特性に加えて、全方位への高伸縮性・高回復性に優れる丸編み生地。大手インナーメーカーのハーフトップ用途などで採用されていることもあって動きは順調。生産能力も順次増強してきたが、同社はさらなる強化も検討していると話す。

 ビスコマジックは、特殊設計で作られた素材と、デジタルプロダクションシステム「ビスコテックス」との融合によって生まれた多機能生地。着圧コントロールやベンチレーション機能を付与できるほか、ベロア調の表面感などファッション性も加味する。

〈新たな潮流も商機に/分散可染PPなど拡販/クラレトレーディング〉

 クラレトレーディングはスポーツ分野への生地・縫製品販売で、独自性のある差別化素材の拡販に取り組む。“環境”や“ウエアラブル”など繊維製品を取り巻く新しいニーズや技術の潮流も商機とすることを目指す。

 同社のスポーツ向け生地・縫製品はともに原糸など素材からの一貫生産が増加。国内生産生地を使ったベトナム縫製品、海外調達生地を使った中国縫製品やベトナム縫製品の拡大などで堅調に推移している。特に独自素材を活用した生地・縫製品への評価が高まる。

 このため新たに分散可染ポリプロピレン(PP)素材「エプシロン」など開発素材の採用拡大を進める。実績のある十字断面ポリエステル吸汗速乾素材「スペースマスター」や扁平(へんぺい)断面ポリエステル吸汗速乾素材「ブローズライト」、高ピリング性ポリエステル短繊維素材「パナパック」などのもバリエーションを拡大する。

 環境やウエアラブルといった新しい潮流も商機とするため、マテリアルリサイクルやケミカルリサイクル、低温可染などさまざまな特性の素材を外部調達の活用も含めて提案し、スポーツ分野での存在感を高めることを目指す。

〈白地でも急速発熱実現/機能でアスレからカジュアルまで/ユニチカトレーディング〉

 ユニチカトレーディングは調温機能素材をスポーツ分野に積極投入する。19秋冬では太陽光熱変換・急速発熱素材「速ポカ」を新たに開発した。

 同社は機能素材でアスレチックだけでなくアスレジャーやスポーティーカジュアル分野への生地販売に力を入れている。例えば非フッ素系撥水(はっすい)加工生地「タクティーム」などの評価が高まってきた。今後、原糸をケミカルリサイクルポリエステル糸に置き換える構想もあるなど、サステイナビリティー(持続可能性)に焦点を当てた提案が加速する。

 調温機能素材の開発と提案にも力を入れる。19秋冬向けでは新たに太陽光熱変換発熱素材として「速ポカ」を開発した。機能性セラミックをポリエステルに練り込むことで太陽光照射後に急速な温度上昇を可能にする。さらに温度上昇しにくい白地でも太陽光照射1分間で3℃以上の温度上昇を実現している。このためファッション性の面でも汎用性が高い。

 アパレルの海外調達拡大に対応するために海外生産基盤の拡充にも取り組む。その一環としてタクティームや高密度織物をインドネシアなどで生産することも検討する。

〈YKK/引手の揺れを軽減/運動時に邪魔にならない〉

 スポーツをしているとき、ファスナーの引手が左右にぶらつくのが気になることがある。この運動時の引手の揺れを軽減したのが、YKKが昨年7月から販売している「コンシール」ファスナー専用ステイダウン引手。

 「コンシール」ファスナーとは、ファスナーを閉じたときにエレメントが表面に出ないタイプ。デザイン面でファスナーが目立ちにくく、婦人のスカートなどで採用されていた。このファスナーはスポーツやアウトドア分野でも需要が高まっている。ポケット部での利用も多いという。しかし、動きが激しくなると、引手の揺れが気になるという声が出てきた。

 このため、スライダーと引手との接触部分に適度な抵抗をつけることでぶらつき軽減機能を付加した。引手をスライダー胴体部の柱の間にはさみ、力を加えて加締(かし)め、組み立てる。この工程で、適度な抵抗を付けることにより引手のぶらつきを軽減した。サイズは№3のコンシールで、6色カラー。引手には微細突起を持つタイプもそろえる。