メーカー別 繊維ニュース

特集 安心・安全の繊維(2)

2018年08月09日(Thu曜日) 午後4時2分

〈食の安全/ハサップ義務化で注目/異物混入防ぐ技術進化〉

 食品衛生法の改正で、全ての食品事業者に国際基準「HACCP(ハサップ)」に沿った衛生管理が義務付けられる。食品製造事業者の需要を踏まえ、食品白衣メーカーは異物混入を防ぎ、着る人が快適に働くことができるための質の高いウエア開発を進めている。

 食品白衣でトップシェアの住商モンブラン(大阪市中央区)は、従業員が快適に働くための製品開発に力を入れる。背中や袖の部分の縫い目をなくすことで、肩や腕の動きを妨げない「スムースフィット」が好調で、販路を広げている。

 今季はカット野菜や魚の加工場など温度が低い環境で働く人に向けたウエアを開発した。表地に気密性の高いツイル、裏地は保温効果が高い「ウォームトリコット」を採用し、冷えから体を守る。

 半導体や自動車塗装工場用ウエアで高い実績を持つガードナー(埼玉県加須市)も食品工場向けの白衣に注目する。6月中旬、東京で開かれた食品工場向けの見本市「フーマジャパン」では、フードとジャンパー、パンツが一体になったウエアを出展した。着用後もウエアの劣化や洗濯回数を確認できるICタグも提案し、アフターサービスにも力を入れている。

 サンペックスイスト(東京都中央区)は信州大学と産学連携で製品開発を進めている。

〈高視認/業界団体、普及へ本腰/規格策定、学生に講義も〉

 高視認性安全服の普及へ業界団体や検査機関が奮闘している。事業者向けの勉強会や一般向け規格の制定のほか、専門学校とともに繊維業界の未来を担う学生に実技指導も行っている。

 一般社団法人日本高視認性安全服研究所(JAVISA、服部勝治所長)は、2020年の東京五輪にボランティアや警備員ら運営スタッフに高視認性安全服の着用を提案する。

 メーカー側がユーザーに製品を提案しやすいように、定期的に勉強会も開催している。5月に東京都内で開かれた講習会では約100人が、複数ある高視認性の規格の違いについて学んだ。

 規格にも広がりが出てきている。児童向けの高視認性安全服の規格を制定する、日本交通安全教育普及協会(JATRAS)は8月5日に、新たに子供用の帽子の規格を制定した。高視認性安全服のJIS規格(JIS T8127)や保安用品協会が制定する一般向け規格など、子供から大人まで多くの人に普及させる狙いがある。

 若い世代に理解を促す取り組みも始まった。ニッセンケン品質評価センター(ニッセンケン)は、文化服装学院とコラボし、学生が子供用の高視認性安全服を制作する取り組みを進める。2年目の今年はファッション工科基礎科の1年生330人が参加。学生が企画、デザイン、縫製全てを担当し今秋には優秀作品を発表する。

〈難燃・防炎/民泊新法でニーズ高まる/難燃防護服の新JIS規格も〉

 消防庁によると、2017年の総出火件数は、3万9198件で、13分に1件の火災が発生していることになる。火災種別で見ると、建物火災が2万1280件と最も多く、中でも建物火災の死者に占める住宅火災の死者の割合は、86・3%で、出火件数の割合53・3%と比較して非常に高くなっている。

 総出火件数は15年に4万件を割り17年には3万6773件に減ったが、昨年は4万件近くまで再び増加。今年は猛暑で火災が発生しやすい状況にある。海外ではあるが、100人以上の死者を出したギリシャの首都アテネ近郊の山林火災は記憶に新しい。

 今年6月15日には、「住宅宿泊事業法」(民泊新法)が施行。民泊の規制が緩和されたものの、「防炎」マークが付いたカーテンやラグの設置など、防災設備の基準を満たす必要がある。20年の東京五輪に向けてますます海外からの観光客が増える中、難燃、防炎素材へのニーズがますます高まりそうだ。

 労災についても難燃、防炎に対する認識が強まりつつある。今年4月にJIS規格としてT8128(溶接及び関連作業用防護服)とT8129(熱及び火炎に対する防護服)など、難燃防護服に対応した規格が発行された。

 ワークウエアメーカーの旭蝶繊維(広島県府中市)が規格に適合した難燃防護服を早くも商品化。実際に近くの鉄工所にサンプルを提供し、着用者からの意見をくみ取りながら開発を進めてきたと言う。

 職業によってユニフォームが細分化していく中で、まだまだ難燃、防災に対応したユニフォームは少ない。労災を減らしていくために、これからも難燃、防炎素材が果たす役割は大きい。

〈熱中症対策/需要急増のEFウエア/猛暑で爆発的に販売拡大〉

 7月24日の消防庁の発表によると、7月16~22日に熱中症で救急搬送された人は2万2647人で、前週9~15日の9956人の2倍以上となり、一気に急増した。昨年の同時期の7169人と比べても3倍以上で、7月全体で見ても例年よりも熱中症による救急搬送者数が圧倒的に多くなっている。

 梅雨明け後、気温の上昇とともに、電動ファン(EF)付きウエアが売れ始めた。ワークマンは、7月(29日まで)のEFウエアの販売点数が前年同期比3・3倍の11万2千点を記録した。4月からの累計は、15万2千点に上る。7月の売上高は前年同月比20%になる見込みで、EFウエアの売り上げが大きく貢献した。

 メーカーには受注が殺到している。特に7月14~16日の3連休明けの17日には、各社で「朝から注文の電話が鳴りやまなかった」「繁忙期の10月並みに電話が鳴った」との声が聞かれ、販売代理店からの追加発注の対応に追われた。

 EFウエアがけん引し、7月単月の売上高が前年同月比を上回るメーカーも続出。月別の売上高は例年、単価の高い防寒商品が売れる10月や11月が最も多くなるケースが多いが、備後のあるメーカーは「7月にこれだけ出荷したことがない」と話し、7月としては過去最高となる売り上げ達成を見込む。

 7月末にはEFウエアが全般的に品薄になってきたことから、販売代理店が「残っている商品があれば欲しい」と、品番やカラーに関係なく発注するケースも増えていると言う。メーカー各社では来年に向けてもEFウエアの新商品の開発や、ファン、バッテリーなどのデバイスの進化に取り組む。

 熱中症対策ではEFウエアだけでなく、素材メーカーからも涼感や接触冷感といった素材の開発が進んでいる。猛暑を通り越し、酷暑とも言えるこの暑さを乗り切るためにも、繊維の力がますます必要となってくる。