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シリーズ事業戦略/シキボウ/上席執行役員 繊維部門長 加藤 守 氏/機能素材多角的に提案/海外の販路開拓に本腰

2018年10月12日(Fri曜日) 午前11時38分

 シキボウは2020年度を最終年度とする中期経営計画の中で、機能素材の需要を深掘りする。「科学と繊維の融合」をテーマに新素材開発に力を入れるとともに、これまでの用途にとらわれず、多角的な提案を始める。独自の開発糸を強みに、海外での売り上げ拡大にも力を入れる。海外製造拠点の相互の情報交換を活発にし、相乗効果を発揮することで現地の内販の受注量増加や海外のアパレルへの販路開拓を狙う。

  ――2018年4~9月期の繊維事業の業績見通しを。

 売上高は前年に比べわずかに上回っていますが営業利益は大幅減となる見通しです。第1四半期の落ち込みを第2四半期で取り戻す計画でしたが、各分野での商況の厳しさが影響しました。

 さまざまなコストが上がり利益を圧迫しています。織布、ニット、染色加工場であるシキボウ江南は染色、加工薬剤の価格上昇、さらに原油や天然ガスの燃料費増の負担が増しました。自助努力ではカバーしきれなくなっていますので、顧客にも値上げをお願いせざるを得ない状況です。

  ――原糸販売事業の商況について。

 原糸販売事業は昨年の上半期と比較すると、国内で製造する差別化糸を海外生産に切り替えることによりかなり収益の改善が進みました。富山工場の規模は生産量も最小限まで減らし損失をできるだけ抑える生産体制にしました。それでも上半期は赤字を予想しています。原因は国内市場で沈滞ムードが続いていることに加え海外市場に向けた糸販売が計画通りに伸びていないためです。

  ――中東の民族衣装向け生地輸出の近況を。

 市況の悪さが続き、苦戦しています。昨年8月ごろ、既に売れ行きは悪化していましたが、当時は契約残がありましたので数値では表れていませんでした。今上半期はそれもなくなり受注減がはっきりと実績に出ています。売り上げ、利益ともに去年の同期と比べると大きな差があります。

 当社にとって最も大きいマーケットはドバイです。生地問屋への販売が主力でそこから現地で売られたり、再輸出されたりしています。その多くは掛け売りで、入金が滞っているケースもあり、回復にはまだ時間がかかりそうです。カタールに関しては既に回復の兆しが見られます。

 今、売る時期としては逆境ですが、これを開発の好機と捉え新素材開発に力を入れます。現地では色のトレンドに加え、風合いにも流行があります。今はかなりソフトな風合いが好まれているので、シキボウ独特の柔らかさを表現した商材開発を進めています。

  ――寝装とユニフォーム分野は。

 寝装分野も苦戦しました。稼ぎ頭となるのが羽毛布団の側ですが、羽毛原料の高騰を受けて、布団メーカーなどが小売価格を抑えるために、低価格の側地を求めるようになりました。結果的に売価、利益ともに低い商材への切り替えが進み寝装分野の業績の低迷につながりました。

 ユニフォーム分野は堅調です。カタログ備蓄メーカー向けも底堅い動きが続いていますし、特に今期は店頭での電動ファン付き(EF)ウエアの販売が非常に好調です。これに伴い当社でもEFウエア向け素材の動きが活発でした。企業別注も新規の契約も増え、悪くない状況です。17年からニット地やポロシャツ、Tシャツなどのニット製品の販売を強化してきましたが、この分野も織物との相乗効果が出てきました。

  ――下半期以降の方針を。

 今期から2020年度を最終年度とする3カ年経営計画がスタートしました。その中で繊維部門の戦略としては「科学と繊維の融合」がテーマとなります。繊維が持つ機能を追求し、分野や国内外を問わず幅広く拡販するとともに、糸の設計、織り・編みの構造、そして後加工のそれぞれの技術を科学の力で融合させて、ニーズに合った革新的な素材を開発します。

 機能素材の開発・拡販はこれまで当社でターゲットを絞って開発、販売してきましたが、これからは従来の分野、用途にとらわれず一つ一つの機能素材を分野の垣根を超えて必要されるところに、改良したりアレンジしたりして、柔軟に提案します。

 ユニフォームで求められてきた機能が最近ではスポーツやカジュアルでも求められるようになるなど、機能素材を提案する市場の線引きがなくなりつつあるためです。ユニフォーム素材として開発した吸水速乾性のある2層構造糸「ツーエース」を既に、リネン用タオルやシーツといったこれまでとは異なる用途に提案し始めています。

  ――海外市場への販売戦略をお聞かせください。

 原糸販売で海外の販路開拓を進めます。これまで当社の海外販売は日系のアパレル・SPAとの取り組みが多く、最終製品は日本で売られますので結局、日本の市場動向に大きく売れ行きが左右されている側面がありました。今期の海外販売が伸びない要因も国内の売れ行きの悪さが原因です。

 そこで海外の企業への販路開拓を狙って、当社の海外拠点の現地内販に力を入れます。そのためにベトナムの協力工場、インドネシアのメルテックス、グループの新内外綿子会社の繊維商社J.P.ボスコ、これら3拠点の製造・販売における連携を強めます。

 それぞれで製造する糸、商材に強みがありますので、お互いの方針や販売状況の報告会を定期的に開き相乗効果を得る戦略です。適材適所の供給体制を構築し、海外顧客からの受注の取り込みを進めます。